世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 毎日を大切に ―北部タイ中等日本語教育支援―

国際交流基金バンコク日本文化センター(北部地域中等教育機関)
高塚直子

 タイのチェンマイに北部タイ中等教育機関の日本語専門家として派遣されて2年目を迎えました。今までの1年を振り返り、特に私が深く関わってきたいくつかのトピックについてここでお話したいと思います。

1.私が見た北部タイ中等日本語教育機関の教師ネットワーク

ランプーン県で行われた日本語キャンプ 「あたま かた ひざ あし」 の写真
ランプーン県で行われた日本語キャンプ
「あたま かた ひざ あし」

 現在北部タイでは、約60校の学校が日本語を主専攻や選択科目として教えています。私の担当している北部タイ8県はそれぞれの学校が地理的に離れていますが、先生方はお互いによく協力し合って様々なイベントやコンテストを成功させてきています。年間を通して北部タイでは、地区ごとや北部タイ全体で行われる日本語コンテストや日本語キャンプなどがありますが、忙しい授業の合間に時間を作って先生方が集まってイベントの準備のための会議をしたり、日本語の教材や教え方などについて情報交換をしたりしています。また、イベントの前後には皆で集まっておいしい北タイ料理を囲みながら反省会(?!)や会議(!?)と称したカラオケパーティーもあります。私がこの一年で見た北部タイの先生方のネットワークを形容詞で表すなら、「明るくて」「熱心で」「楽しい」雰囲気のネットワークです。

2.北部タイ中等教育機関教師研修

チェンマイ県で行われた国際交流基金地方研修で参加証をもらって嬉しそうな先生方の写真
チェンマイ県で行われた国際交流基金地方研修で
参加証をもらって嬉しそうな先生方

 私の重要な任務の一つとして、北部タイ中等教育機関の先生方のための教師研修の実施があります。前年度までは、チェンマイでの教師研修が中心でしたが、今年度は地方支援を強化すべく、チェンマイ研修の頻度を減らして、私の担当地域の北部タイの県で1カ月に1回地方研修をするという方向に変えました。目標はこの1年で、担当の北部タイ8県全てで地方研修をすることです。チェンマイ研修では引き続き日本語力の維持を目指し、地方研修では日本語教授法についての情報交換や、日本文化体験、地方の先生方のネットワークの強化を目指していきます。

3.選択科目としての中等日本語教育―その現状と新しい教材開発―

 昨年度のこのレポートでは、全国のタイの中等教育機関500校において、国際人を育てるという趣旨から生まれた「World Class School カリキュラム」が導入されたという話をしたかと思います。外国語のプログラムでは、昨年度から理数系クラスの中学校1年生と高校1年生に選択科目として週2時間、英語以外の外国語の学習が必須になりました。

 派遣先のユパラ―ト高校では、中国語、日本語、フランス語から選ぶことができます。日本語を選んだ学生にどうして日本語を選んだのかと尋ねると、「ひらがなの文字がかわいいから」「日本語の音がおもしろいから」「日本の漫画やドラマが好きだから」「日本へ旅行してみたいから」などの答えが返ってきます。多感な時期の生徒の視野を広げるという意味では、とてもいい学習経験だと思います。

 しかし、選択科目の日本語を教える現場の先生方の声はどうでしょうか。実際、北部タイの中等教育機関で教える先生方から聞かれた声は、「カリキュラムの構成が現場の教師に任されているので、何を教えたらいいのかわからない。」「どうやって選択科目のカリキュラムを作ったらいいのかわからない。」「週に2時間しか教えないので、学校行事が入ったりして授業がつぶれると、生徒は前に勉強したことを忘れてしまっている。」「学校行事やイベントが多すぎて日本語の授業の時間がなかなか取れない。」などでした。

 このような選択科目を教える先生方の悩みを解決しようとして、国際交流基金バンコク日本文化センターから今年の3月に出版された教科書があります。『こはるといっしょにひらがなわぁ~い』という教科書です。私は次に出版予定の『こはるといっしょに日本語わぁ~い』の文化事情編の執筆に携わっています。この教科書は、従来の日本語主専攻のための積み上げ式の教科書とは異なり、先生や生徒の興味があるところから始められるモジュール式の教科書になっています。また、教師用の解説書や生徒のためのワークシート、授業ですぐに使うことができるパワーポイントのスライドも付いており、毎日忙しい先生方があまり準備をしなくても授業ができるようになっています。

 先日、チェンマイで行われた国際交流基金の地方研修では、2011年の3月に出版された『こはるといっしょにひらがなわぁ~い』の紹介とその教材の特別無料配布がありました。北部タイの日本語教育機関から約80名の先生方の参加があり、新しい教材に対する関心の高さを感じました。

 「こはる」を通して、少しでも多くの生徒が日本語や日本文化を学ぶことは楽しいと感じてもらえたら嬉しいです。

4.タイのみなさんへ日々の感謝をこめて

 私がこうして毎日タイで元気に仕事ができるのは、日々サポートしてくださるタイのみなさんのおかげです。タイに派遣されたご縁を大切に、毎日を大切に日々の業務に取り組んでいきたいと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Bangkok
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
主な配属校であるユパラート・ウィッタヤライ校(Yupparaj Wittayalai School)は、チェンマイ県の伝統ある有名校で、タイ北部における中等教育日本語センターとしての役割が期待されている学校である。日本語コースは今年度で8年目で、日本語専門家派遣も8年目に入る。日本語専門家はタイ人日本語教員のための教師研修会運営や学校訪問、巡回指導、教員間のネットワーク形成支援といた地域全体に対する支援と、派遣機関に対する日本語教育全般における支援を行う。
所在地 238 Praplokkloa Rd,. T.Sripoon, A.Muang, CHIANGMAI 50200
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
第二外国語グループ
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   2004年
国際交流基金からの派遣開始年 2004年
コース種別
専攻:高校1,2,3年
選択必修:高校1,2年
現地教授スタッフ
常勤4名(うち邦人1名)
学生の履修状況
履修者の内訳   専攻:約120名
選択必修:約280名
学習の主な動機 ひらがな、日本語の音、日本の芸能人やアニメ、マンガなど
卒業後の主な進路 大学進学
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
初級終了を予定
日本への留学人数 1名

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