世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ベトナムに日本語教育の新たな拠点!

ヴィエトナム日本人材協力センター(ハノイ)
柴原智代

はじめに

VJCC-Hanoiの建物の写真
VJCC-Hanoiの建物

 Vietnam-Japan Human Resources Cooperation Center-Hanoi(ベトナム日本人材協力センターハノイ校、以下VJCC-Hanoi)は、国際協力事業団(JICA)の事業の一環として、2002年3月にベトナム側協力機関である貿易大学キャンパス内に設立された。ビジネス・日本語・交流事業の3部門を通して、日本とベトナム双方を結び付け、双方をプロモーションする機関を目指している。(写真1)これまで当地では、日本に関する情報の窓口として、在越日本大使館や青年海外協力隊隊員が主要な役割を果たしてきたが、今後はVJCC-Hanoiがこれに加わる。日本の書籍・雑誌をそろえた図書館があり、日本型ビジネスを学べるビジネスコース、異文化コミュニケーション・スキル獲得を目指す日本語コース、伝統から現代までさまざまな交流事業が実施される。

 当事業は、国際協力事業団(JICA)が主体であるが、国際交流基金は日本語コース担当の専門家の派遣を通じて協力している。筆者はVJCC-Hanoi日本語コース担当者として、2001年9月にハノイに赴任した。

ベトナム(ハノイ市)の日本語教育の概要とVJCC-Hanoiの役割

 東南アジア諸国の日本語教育が1960年代に始まっているのに比べれば、ベトナムの日本語教育の歴史は浅い。ベトナム全土の日本語教育機関数約40校*1 のうち2校を除いて1990年代に始まったばかりである。現在は大都市における大学・民間日本語学校が中心で、地方大学での日本語講座創設の動きが少し見られる。初等・中等段階での日本語教育は行われていない。しかし、近年学習者数の増加及びレベルの向上が著しい。

 日本語教育支援というのは現地主義、すなわち「現地の教師が国家の教育政策の中で日本語教育を計画・実施・評価し、日本側はそれを支援する」というのが原則だと筆者は考えている。従って、VJCC-Hanoiは当地の教師や学習者からのニーズが高い二つの活動に絞って展開する。一つは教師の専門性向上のための環境整備、もう一つは高度な日本語人材のための指導法を試行錯誤する実験教室・モデル授業の提供である。2002年度は以下のような計画である。

(a)教師の専門性向上のための環境整備:
  • 常設の日本語教授法コース(現職者研修・教師養成、初級及び中上級指導法)
  • 半日の日本語教師セミナー(年2回)
  • ベトナム人/邦人を含めた教師ネットワークの形成(セミナー開催やNewsletterにより、情報交換・交流・勉学・研究の場を提供する)
  • コンサルティング(要望に応じて各機関のコースデザインについて助言)
(b)各実験教室・モデル授業:
  • task-based中級I→中級II→上級、ビジネス日本語クラスの開講

専門家の実際の活動

現職者研修(教授法コースの授業風景)の写真
現職者研修(教授法コースの授業風景)

筆者は、毎週土曜日の午前と午後、日本語教授法コースの講師として教師養成コース(日本語教師志望者)と現職者研修コース(現職日本語教師)を担当している。教師養成コースは日本語教師不足の声に応えて開講した。現在19名の社会人や学生が学んでいる。教師経験がないので、ビデオや体験学習を通して実践的に学んでもらっている。一方現職者コースは、ベトナムの教育全体が暗記中心・知識伝達型の教授法からの脱却を図ろうとしている影響もあり、方法論改善・自己研修への関心が極めて高い(写真2)。現職者研修では、社会言語学などの研究成果も織り交ぜ、研究も実践もできる日本語教師の育成を目指している。どちらのコースでも、ベトナム人講師の強みを生かした、現地にあった教授法授業を心がけている。難しいがやりがいもある。

 一般学習者向けには、中級I(20名×2クラス、月~木の17:45~19:45)の授業を開講し、ベトナム人非常勤講師とteam teachingで実施している。日本語能力試験3級合格以上の学習者を対象にトピックシラバス・Task-basedの授業を行っている。「自分・家族」というトピックでは、一つのクラスは「相手に関心を示しながら初対面の相手とコミュニケーションをとる」ということを目標に活動を行った。(写真3)もう一つのクラスでは、現代日本の親子関係を象徴するものを読んだり聞いたりしてから、グループで手紙(子供が親あてに、親から子供へ、将来の自分の子供へなど)を書いて、VJCC-Hanoi内に掲示した。受講生のほとんどは現役大学生であり、大学の授業は中級以降読解力重視なのでVJCC-Hanoiの活動中心の授業に積極的に参加している。筆者はベトナム人非常勤講師の教案指導、一般日本人をクラスに参加させインタビューする等の活動のコーディネート、授業中のサポート(グループ活動をベトナム人非常勤講師と手分けしてフィードバックする、ディベートの審査員など)を担当している。

 今後は観光業・日本研究などspecial purpose Japaneseのコースや年少者日本語クラスの開講などを検討中である。(1928字)

*1 2002年現在ハノイでは日本語教育を実施している機関が12(大学6・民間6)、ホーチミン市は26(大学6・民間20)。大学付属日本語センターは民間とみなした。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
 ベトナムでは国際協力事業団が市場経済化支援のために作った「ヴィエトナム日本人材協力センター」(通称日本センター)の日本語教育分野の協力を行うために、2001年より専門家を派遣している。日本センターはベトナムにおける日本語教育の自立化を促進すべく、(a)教師の専門性向上のための環境整備、(b)各現場に適した高度な日本語人材のための指導法を試行錯誤する実験教室・モデル授業を提供している。専門家は日本語コースでの日本語教授、セミナーの開催、カリキュラム・教材作成に対する助言、コンサルティング、現地教師の育成を行う。
ロ.派遣先機関名称 ヴィエトナム日本人材協力センター・ハノイ市校
Vietnam-Japan Human Resources Cooperation Center-Hanoi
ハ.所在地 Foreign Trade University Lang Thuong,Dong Da,Hanoi,Vietnam
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
ヴィエトナム日本人材協力センター・ハノイ市校 日本語コース
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2002年5月1日
(2)専門家・青年教師派遣開始年 2001年9月1日
(ロ)コース種別
一般講座(ビジネス等、計4)、教師研修(教師養成等、計4)
(ハ)現地教授スタッフ
常勤2名(うち邦人1名)、非常勤2名(うち邦人0名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   中級レベルIの場合
定員40名(学生38、社会人2)
(2) 学習の主な動機 教授能力、運用能力の向上
(3) 卒業後の主な進路 日系企業就職を希望するものが多い
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験1、2級、
ACTFL OPI中級中-上級レベル
(5) 日本への留学人数 実績なし

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