世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 無事1歳を迎えたヴィエトナム日本人材協力センター

ヴィエトナム日本人材協力センター(ハノイ)
柴原智代

開所1年の成果と今後の方向性

 ヴィエトナム日本人材協力センター(ハノイ、以下VJCC-HN)は今年2003年3月で無事1年経った。この1年で教授法セミナー参加者合計324名、教授法コース及び一般講座修了者は276人、報告者の指導を受ける非常勤講師は12名となる。
 詳細は次の通り:

開所1年の成果についての詳細
教師向けの活動 のべ参加者
1.日本語教授法セミナー(6回開催) 324人
2.現職日本語教師への教授法コース(初級・中上級指導法) 18人
3.教師志望者への教授法コース(初級指導法) 19人
4.日本語教育の論文輪読 勉強会(13回開催) 64人
5.On the Job Trainingでの教師育成(=報告者がsupervisorとしてVJCC-HNの非常勤講師に対して教案指導・授業見学を行う) 12名育成中
一般講座 のべ参加者
6.Task basedの総合会話 中級1・中級2・上級 122人
7.日本語能力試験対策クラス 2,3級 74人
8.子ども日本語クラス(べトナム人6~12歳) 32人
9.ビジネス日本語(社会人、2級合格相当を対象) 11人

教授法セミナー:group work
教授法セミナー:group workの写真

中級会話:地域興しdebate
中級会話:地域興しdebateの写真

子供クラス:語彙さがし
子供クラス:語彙さがしの写真

 海外の大学では、決められた教科書を教師が一方的に講義していく授業が多く、報告者が要求する「学習者のニーズやレディネスに合わせて授業を組み立て、学習者自身が主体的に学ぶよう各活動を設計する」授業の実現に各講師は苦労している。受講生は、ハノイに合ったタスク型の会話授業を評価する一方、力不足の教師に対しては厳しい評価も見られる。教師育成と受講生確保が課題であるが、なんとかスタートは切れた。
 VJCC-HNの特徴の一つは、現地人が「マネージャー」として加わっている点にある。派遣専門家が育成する対象ではなく、対等の関係なのである。この点は自立化・現地化達成の好条件である。2003年5月にようやくベトナム側の日本語コース常勤マネージャー(貿易大学の日本語科教員)が着任し、その結果ベトナム側がコーディネートするコース(能力試験1~3級フルライン、ベトナム企業から受注したカスタマイズの初級講座)も可能となった。現在派遣専門家が担っている役割(教師育成、中上級一般講座)も、今後はベトナム側が徐々に代替していくだろう。

VJCC-HN派遣専門家の業務

 VJCC-HNに派遣された専門家は、「日本語コースマネージャー」としての成果を求められる。マネージャーには「企画力、営業力、経営力、説得力、教師育成能力、研究論文指導能力、人脈作りの能力、体力」の8つが必要だと痛感する。マネージャーは、他機関と差別化した魅力ある講座を設計し、広報や営業廻りをしてお客さん(受講生)を集めなければならない。VJCC-HNは独立採算を目指すので、1時間1~2.5万ドン(0.8~2ドル)と高めの受講料を設定し、採算がとれる数の受講生を集め、その中からVJCC-HNの利益を確保し、非常勤講師への謝金を支払う。謝金は収入の35%が目標である。というわけで、エクセルを使った収支のシミュレーションも大切な仕事となる。また、コース実施計画の承認や予算獲得のためには、周囲に対して説得力ある説明や文章能力が不可欠である。
 優秀な非常勤講師を見つけることは至難の業なので、現在はやる気のある若手のベトナム人大学教員を非常勤講師として採用し、報告者が教案指導・授業見学を行って指導している。2時間の授業のために倍以上の時間をかけることもある。また、ハノイには日本語を学ぶ大学はあっても日本語教育を学ぶ場はないので、教師志望を対象にした教師育成も必要である。さらに、現在ハノイの若手日本語教師(大学教員)は自らの専門領域を持とうと修士号を目指しており、それら大学教員への研究指導も期待されている。というわけで、教師育成能力、研究論文指導能力はVJCC-HN内外で重要である。
 そして、情報収集にもそして情報伝達にも人脈作りの能力は欠かせない。日本語教育関係者だけでなく、ハノイ在住の日系企業や在住婦人にも協力を得るべく、あらゆるところに出かけていくフットワークのよさも大切である。最後に、朝8時30分から夜9時まで、月曜日から土曜日までの長時間労働に耐える体力が必要だ。報告者の1年8ヶ月の自己採点は、ちょっと甘めで75点というところだろうか。
 「学習者に教える」だけでは専門家とは呼ばれない時代である。求められる能力は高く、広く、深くなっていく。荷の重い仕事にチャレンジすることで専門性も向上していく(と信じている)。日々是鍛錬修行也(と言い聞かせている)。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ヴィエトナム日本人材協力センター(通称日本センター)は、ビジネス・日本語・交流事業の3部門を通して、日本とベトナム双方を結び付け、双方をプロモーションする機関を目指している。市場経済化支援のために国際協力事業団(JICA)が設立した。当センターの日本語教育分野の協力を行うために、2001年より専門家を派遣している。当センターは(a)教師の育成・専門性向上、(b)中上級レベルの一般講座を運営している。専門家はコース設計・運営・評価のほか、日本語教授セミナーの開催やコンサルティングを行う。
ロ.派遣先機関名称 ヴィエトナム日本人材協力センター(ハノイ市)
Vietnam-Japan Human Resources Cooperation Center-Hanoi
ハ.所在地 Foreign Trade University Lang Thuong,Dong Da,Hanoi,Vietnam
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
ヴィエトナム日本人材協力センター(ハノイ市校)日本語コース
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2.02/5/1
(2)専門家・青年教師派遣開始年 2.01/9/1
(ロ)コース種別
一般講座(ビジネス等、計7)、教師研修(教師養成等、計2)
(ハ)現地教授スタッフ
常勤3名(うち邦人1名=派遣専門家)、非常勤12名(うち邦人2名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   9.%大学生(2~4年生)、10%社会人(日系企業勤務等)
(2) 学習の主な動機 日系企業への就職希望、口頭能力の向上
(3) 卒業後の主な進路 日系企業就職、日本語教育機関に就職
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験1~2級相当、ACTFL OPI上級
(5) 日本への留学人数 なし

ページトップへ戻る