世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ベトナム南部の中心地・ホーチミン市の日本語教育を推進するために

ヴィエトナム日本人材協力センター(ホーチミン)
平田 好

ヴィエトナム日本人材協力センター・ホーチミン市校建物の写真
ヴィエトナム日本人材協力センター・
ホーチミン市校建物

 2002年5月に、ヴィエトナム日本人材協力センター・ホーチミン市校(Vietnam-Japan Human Resources Cooperation Center-Ho Chi Minh City、以下VJCCHCMC)が開所してから1年余りが経った。
 当センターは、国際協力事業団(JICA)による市場経済移行国に対する人材育成支援策の一環であり、ビジネスコース、日本語コース、相互交流事業を柱としている。ベトナムでは、相手国実施機関が貿易大学であり、ハノイ、ホーチミン市それぞれにセンターが建設され、日本人専門家チーム(リーダー、コーディネーター、ビジネスコース専門家、日本語教育専門家)が派遣されている。筆者は、ホーチミン市校の日本語コース担当として、2001年11月に赴任した。
 赴任直後は、ホーチミン市及び近郊にある日本語教育機関の実態調査を行い、VJCCHCMCにおける日本語コース事業を企画した。この調査を通して、当地の日本語教育における課題は、1)中級以上の日本語運用力育成、2)高等教育機関における日本語教育基盤の整備、3)豊富な日本語教材、参考書が閲覧できるリソースセンターの開設、4)教師間ネットワークの形成、であることが明らかとなった。
 その後、この課題に向かって、VJCCHCMC日本語コースの内容を検討し、センター開所直後より、一般学習者向けの中級クラス、日本語能力試験1級対策クラス等を開講している。ホーチミン市では、第一外国語として日本語講座を開講している高等教育機関6校のほかに、一般学習者向けの教育機関(大学付属外国語センター、共産党青年団外国語学校、民間日本語学校等)が20校余りある。しかしながら、中級以上の日本語運用力を養成する講座を継続的に開いている機関は数えるほどである。したがって、VJCC-HCMC日本語コースには、日系企業社員など、実際に使える中級日本語を身につけたい学習者が参加している。課題解決型学習を通じて、高い日本語運用力を養成することを目的としているため、教室内だけではなく、料理実習、日本人学校見学、外部でのインタビュー活動なども組み合わせた授業を行っている。また、講師は、ホーチミン市内高等教育機関教員から厳しい資格条件に適合した優秀な者を選定している。VJCC-HCMCでの授業実践を通して、教材研究を行っている。さらに自らの課題を発見し解決するなかで日本語教育に関する専門性を向上させていくことを考えて、専門家は講師陣への助言・指導を行っている。そして、これらのことから、VJCC-HCMCでの教育活動が当地の高等教育機関に広く還元されるものと期待している。

日本語コース授業風景の写真
日本語コース授業風景

 また、2002年10月7日には、VJCC-HCMC図書館が開館の運びとなった。ホーチミン市全体の日本語教育のためのリソースセンターとして活用されるように、日本語教育用教材、教師用参考書、日本研究のための参考文献を調達・整備した。現在、約2000点の図書、約500点のビデオ、音声テープ、CD-ROMを所蔵している。日本語の新聞、雑誌も最新版を閲覧できる。また、留学情報コーナーには、日本の大学案内などの資料をそろえている。ベトナム人の教師、学生のみならず、在住日本人にも利用される施設となっている。
 上記の活動に加えて、日本語スピーチコンテストの事務局機能もVJCC-HCMC日本語コースが担っている。市内日本語教育機関の教員有志が1995年より運営してきた恒例行事を引き継ぎ、2002年11月には、第8回ホーチミン市日本語スピーチコンテストが開催された。第1次、第2次審査を通過した出場者16名が発表を行い、アトラクションとして日本の歌や踊りも披露された。今後も、各日本語教育機関ならびに各日本語教師と連携をとり、さらに充実したイベントにしていく予定である。
 また、VJCC日本語コースのニューズレター「日本語通信」を年3回、企画発行している。日本語教師や学習者が寄稿し、ハノイとホーチミン市のVJCCが交代で編集し、ベトナム国内の日本語教育機関を通じて配布している。日本と日本語に関心がある人のために、情報の交換・共有・発信の場を提供している。
 ホーチミン市の日本語教育が本格化してから10年ほどしか経っていない。しかし、これからの10年で、当地の日本語教育は大きな発展を遂げることは間違いない。現在に至るまで、ベトナム人教師、民間ボランティア日本人教師が培ってきた日本語教育を引き続きいっそう向上させるために、今後もホーチミン市全体の日本語教育を見据えて、関係各方面と連携をとりつつ、さまざまな活動をしていく所存である。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
国際協力事業団が市場経済化支援のために設立した「ヴィエトナム日本人材協力センター」(通称日本センター)の日本語教育分野の協力を国際交流基金が行うため、2001年より専門家を派遣している。専門家は日本語コースでの日本語教授、セミナーの開催、カリキュラム・教材作成に関する助言、コンサルティング、現地教師の育成を行う。
ロ.派遣先機関名称 ヴィエトナム日本人材協力センター・ホーチミン市校
VIETNAM-JAPAN HUMAN RESOURCES COOPERATION CENTER (VJCC-HCMC)
ハ.所在地 15 Road D5, Ward 25, Van Thanh Bac, Binh Thanh Dist. HCMC, Vietnam
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
ヴィエトナム日本人材協力センター・ホーチミン市校 日本語コース
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2002年5月10日
(2)専門家・青年教師派遣開始年 2001年
(ロ)コース種別
一般学習者向け中級クラス、能力試験対策クラス等
(ハ)現地教授スタッフ
非常勤講師7名(うち邦人2名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   社会人約80%、大学生約20%
(2) 学習の主な動機 仕事上必要、日系企業への就職希望
(3) 卒業後の主な進路
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
(5) 日本への留学人数

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