世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 発展し続けるホーチミン市にて、ますます輝く日本語学習者と教員とともに。

ベトナム日本人材協力センター(ホーチミン)
平田 好

2003年ホーチミン市日本語スピーチコンテストの写真1
2003年ホーチミン市日本語スピーチコンテストの写真2
2003年ホーチミン市日本語スピーチコンテスト

 ベトナムには、北のハノイと南のホーチミン市という2大都市がある。約30年前までは、別の国のそれぞれの首都であった。地理的には約1700キロ離れていて、気候も大きく違う。共通言語はベトナム語であるが、北部方言と南部方言では語彙も発音も異なる点が多い。首都はハノイであるが、ホーチミン市は首都以上の人口を抱え、経済活動がより活発である。日系企業数も在留邦人数も日本人観光客数もホーチミン市のほうが圧倒的に多い。日本語学習者数も、ホーチミン市では1万2千名を超えている。日本語を教育する機関は大学だけでない。民間の日本語学校が多数あり、日本語教育はビジネスとしても成立している。
 そのような環境のなかで、ベトナム日本人材協力センター・ホーチミン市(以下、VJCC-HCMC)は無事、開所2年を迎えた。2002年5月の開所直後より、一般学習者向け中上級クラス、会社員向け日本事情セミナー、日本語教師向け研修などを開講してきた。また、ニューズレター「日本語通信」の企画発行、日本語スピーチコンテストの開催、日本語教師勉強会を通じての日本語教師ネットワーク形成も事業の一環である。つまり、大学や日本語学校における日本語教育を補完すると同時に、ホーチミン市全体の日本語教育基盤の向上を狙っている。
 講座運営という点からは、VJCC-HCMCの日本語教育専門家は経営管理者であり、企画開発担当であり、受講生を集める営業パーソンであり、講師やスタッフを発掘・採用・育成する人事マネジャーでもある。もちろん、VJCC-HCMCにおける唯一の常勤講師として授業を担当している。加えて、非常勤講師への事前教案指導、授業見学を通しての指導も行っている。そして、市内に40校近くある日本語教育機関へのサポート、ネットワーク形成も大きな仕事である。その点からは、ホーチミン市における日本語教育ファシリテーターと言えよう。一般的にファシリテーターとは会議進行役の意味であるが、ここでは少し拡大解釈する。すなわち、さまざまな立場の日本語教員から成るチームの力をひきだし、仕事の成果が最大になるように、中立的立場から支援する役割である。
 日本語教育ファシリテーターとしての仕事のひとつである「ホーチミン市日本語スピーチコンテスト」を紹介しよう。本大会は、1995年、日本語教員有志の呼びかけにより開始された。第1回大会は、日本語学校5校と大学1校によって組織され、12名が出場した。それから、回を重ねるとともに、ホーチミン市の日本語教育は質も量も発展し続け、大会の規模も大きくなってきた。VJCC-HCMCは、2002年より大会事務局を担当している。2003年の第9回大会にあたっては、19機関(大学6校、日本語学校12校、VJCC-HCMC)によって実行委員会が組織された。応募者数は86名と過去最多となり、予選審査に参加した日本語教員数も第1次、第2次のべ49名と過去最多となった。VJCC-HCMCは事務局として、各教育機関に準備活動への参加を呼びかけ、各作業部会(審査、進行、アトラクション等)における検討事項を示し、開催に向けての合意形成を促し、指揮をとっていく。もちろん、日本語学習者への応募促進、申込受付を行うのも事務局である。総領事館、日本商工会、日本婦人会などへの協力依頼、予選および本選の会場準備、広報、プログラム作成など、準備活動は多岐にわたる。開催当日の受付、司会、会場整理、審査集計、荘苣i行などのスタッフは全員、日本語教員である。日本語学習者が晴れの舞台に立つために、教員たちが黒子を務めている。そして、その黒子を支えて活かすのも日本語教育ファシリテーターの仕事と言えよう。
 現在、日本語スピーチコンテスト実行委員会は、市内の各日本語教育機関の連携を深める装置として、ますます活性化してきている。スピーチコンテストの準備に集まった教員有志による勉強会が発足した。まずは、作文・スピーチ教育に関する勉強会として実践報告と意見交換から始めたが、今後、日本語教育全般に関する勉強会を定期的に行い、発表・報告をまとめた冊子も発行していく予定である。
 このようなプロセスを作っていく業務をしていると、各校の日本語教員からさまざまな相談が持ち込まれる。授業に関する質問はもちろんのこと、講師が不足しているので紹介してほしい、学生の実習先を紹介してほしい、修士論文の調査手法について教えてほしい、日本料理の作り方指南、果ては国際結婚の相談までやってくる。これもすべて日本語教育専門家の仕事である。
 VJCC-HCMCの講座運営に加えて、ホーチミン市全体の日本語教育を見据えながら遂行する仕事は、10年後、20年後に、さらに大きな実りが結ばれると信じている。そう思えるのも、日々精進している日本語学習者、日本語教員がいるからである。ホーチミン市のひとびとに感謝しつつ・・・。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
国際協力機構(JICA)の市場経済化移行国支援プロジェクト「日本センター」のひとつである。ビジネスコース、日本語コース、交流事業を3本柱としている。国際交流基金は、当センターの日本語教育分野への協力を行うため、2001年より専門家を派遣している。専門家は日本語コースでの教授、セミナーの開催、カリキュラム・教材作成に関する助言、コンサルティング、現地教師の育成を行う。
ロ.派遣先機関名称 ベトナム日本人材協力センター・ホーチミン市
Vietnam-Japan Human Resources Cooperation Center-Ho Chi Minh City
ハ.所在地 15 Road D5,Ward 25, Van Thanh Bac, Binh Thanh Dist., HCMC,Vietnam
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
学科名称
ベトナム日本人材協力センター・ホーチミン市 日本語コース
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2002年
(2)専門家・青年教師派遣開始年 2001年
(ロ)コース種別
一般学習者向け中級クラス、能力試験対策クラス、教師研修等
(ハ)現地教授スタッフ
常勤1名(うち邦人1名=派遣専門家)、非常勤7名(うち邦人2名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   社会人(日系企業勤務等)80%、大学生20%
(2) 学習の主な動機 業務上必要、日系企業への就職希望
(3) 卒業後の主な進路
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
(5) 日本への留学人数

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