世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) どの分野の人材を育てるか(2005)

ベトナム日本人材協力センター・ホーチミン市校
鈴木 衣今子

ベトナム日本人材協力センター・ホーチミン市校外観の写真
ベトナム日本人材協力センター・ホーチミン市校外観
教師研修風景の写真
教師研修風景

 「東洋の真珠」と言われたサイゴンの街は、ホーチミンシティと名前を変え、30年が経ちました。現在も社会主義国のベトナムですが、経済面では市場経済に移行中です。このような国々の人材育成をサポートしようというのが、JICA日本センタープロジェクトです。

 ホーチミン市は、ハノイに比べ、自由経済が発展しています。北よりも豊かな土壌と商売っ気のある人々の多いホーチミンには、日本からも多くの企業が進出しており、それがここの日本語熱に一役買っています。市内には外国語センターの看板があちこちに見られ、夕方になると、学業や仕事を終えた人々がどっと押し寄せてきます。

 ベトナム日本人材センターでは、「ビジネス」「日本語」「文化交流」が活動の三本柱です。一般の日本語コースももちろん開講されていますが、ホーチミンで当センターだけのユニークなものは教師研修です。日本語テキスト『みんなの日本語』を取り上げた研修には、ホーチミンから車で5時間、フェリーでメコン河の支流を渡ったところにあるカントー市からも15名以上がバスを借り上げてやってきます。これまで教科書と辞書とノートのにらめっこで勉強して日本語を学んできた人に、勉強している立場からは自分の授業がどう見えるかという観点をもってもらうために、講師二人はいつも工夫の連続です。前半は、外国語を教えるということ全般に言えることを日本語の場合にあてはめて講義、後半は『みんなの日本語』のテキストを使って、各課のポイントやベトナム人学習者のまちがいやすい点、クラス活動などを具体的に解説します。経験の浅い先生方や教師志望の学生さんたちの熱い、そして厳しい視線を一身に浴び、3時間の研修が終わった後は心地よい疲れに包まれます。そして、本日の反省をして、また次回へ。毎月1回最終土曜日の研修を10ヶ月に渡って行ない、無事終了した後は、優秀な成績を収めた方々5人を選び、半年の実習コースへ突入。ここで、教案を立てる作業から実際の授業、反省、改善を繰り返し、ついに教師研修実習終了証を手に入れます。このような流れで、一人でも多くの優秀な教師をベトナム日本語教育界に輩出したいというのが、この研修を担当している私共の願いです。

 他にも、日系企業での即戦力となる人材育成のための「ビジネス日本語」「ビジネス文書」のコースもニーズの高いコースです。また、英語版ウインドウズは使えるが日本語版はまだという方のための「PASOKON」コースも人気があります。

 また、ベトナム企業ビジネス人材を育成するビジネス部門や、ベトナムと日本の文化交流活動を行なう交流部門との連携のあり方もまだまだ模索中。この3本柱が互いに強力につながってこそ、ベトナムにおける当センターの役割が果たせるのだと思います。ホーチミンで、どの分野の人材を育てるか。このビジョンを底辺に据えて、このベトナム日本人材協力センター事業が進められています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
市場経済移行国の人材育成をめざすJICA(国際協力機構)の日本センタープロジェクトの1センター。ベトナム南部における日本語教育モデル校となると同時に、教師研修も行ないホーチミン市に優良日本語教師を輩出する役割も果たす。また、日本語教師ネットワークの事務局機能も重要な任務。通常は、一般日本語コースの運営のほかに、ビジネス日本語コース・ビジネス文書・パソコンコースを行ない、日系企業での即戦力となる人材育成をサポート。教師研修は通年で行ない、研修を終えた受講者には実習コースを準備。他に、付属図書館はリソースセンター機能を併せ持つ。
ロ.派遣先機関名称 ベトナム日本人材協力センター・ホーチミン市校
VIETNAM-JAPAN HUMAN RESOURCES COOPERATION CENTER(VJCC-HCMC)
ハ.所在地 15, D5 Road, Van Thanh Bac, Ward 25, Binh Thanh Dist.,Ho Chi Minh City, VIETNAM
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家1名(現在2代目、計2名)

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