世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 上昇気流に乗る ベトナムの日本語教育 一人一人の先生と学習者を大切に

ベトナム日本人材協力センター(通称:VJCC-ハノイ)
雄谷 進 おおや すすむ

 ここベトナム日本人材協力センター(以下、「VJCC-ハノイ」と略す)はベトナムの市場経済化に必要とされる人材の育成、日越間の相互理解及び友好関係の促進を目的として2002年に設立されました。ベトナムにはハノイとホーチミンの2箇所にセンターがあり、ここVJCC-ハノイはハノイ、ハイフォンのある北部からフエ、ダナンのある中部までをカバーしています。

 2006年の国際交流基金による海外日本語教育機関調査では、日本語学習者は2003年度の調査に比べて増加傾向にあることがわかりました。学習者が増えている理由としては、大学での日本語学科や日本語学部の設立、中等教育でのモデル校の導入、さらに日系企業進出による日本語のできる人材の需要の高まりといった点があげられると思います。そのためベトナムでは今後も日本語学習への熱い思いが続くと思われます。

 まさに今が旬の国ベトナムで日本語教育に従事できる幸せを感じています。ただ、その反面、多方面からいろいろな要望が寄せられており、どこまで対応するか、どのように対応するかが今後の課題になります。

 VJCC-ハノイでは昨年日本語コースを19開講しました。ハノイは民間の日本語学校も数多くあるため、VJCC-ハノイでは中級以上のクラスを開講しています。特に会話能力の向上を目指す中級会話コースと日本語能力試験対策コースが中心となりますが、そのほか総合日本語コース、ビジネス日本語コースも開講しています。

 昨今ベトナム進出が増えている日系企業では、その採用条件として日本語能力試験2級合格を課すところが多く、そのため日本語能力試験対策コースはここVJCC-ハノイだけでなく、大学や民間学校でも人気の高いコースとなっています。今回VJCC-ハノイの日本語能力試験選抜試験には約200名もの学生、社会人の応募があり、2クラス開講の予定を3クラスに増やしました。増え続ける受講希望者に対して、インターネット上で学べる無料のサイトの紹介も行っています。

インターネット利用コースにての写真
インターネット利用コースにて

 さらにVJCC-ハノイには20台のインターネット接続可能なコンピューターがあります。これを利用し、インターネット上の無料サイトを活用したクラスを実験的に開講しました。海外での日本語教育の現状を見ると、「教師・教材はないが日本語を学びたい」という声がかなりあります。この声に対応するべく、ベトナムで試験的にインターネットコースを開講しました。

 その他にもベトナム人の日本語教師に対する支援として、日本語教授法クラスや日本語教育セミナーを実施しています。最近では、日本語学習者の増加を見越して、将来の職業として「日本語教師」を考える各大学の3・4年生が日本語教授法コースについて問い合わせてくることが多くなりました。今後、これらの学生を対象とした日本語教授法コースを開講していきたいと思っています。

 さらにベトナムでの日本語教育はハノイばかりでなく地方(ハイフォン、フエ、ダナン)でも広がりを見せています。現在毎年12月にハノイとホーチミンで実施されている日本語能力試験を他の地方都市でも実施することができれば、地方の日本語学習者への動機づけになると考えています。

初級・日本語教授法クラスにての写真
初級・日本語教授法クラスにて

 最後に今後の課題ですが、まず最近VJCC-ハノイに導入されたテレビ会議システムの有効活用を考えています。次に、中級コースを担当できるベトナム人教師の育成です。そのためにも初級日本語教授法をしっかり身につけた人材を一人でも多く育成できればと思います。また、大学の先生方に対しては、将来の学位取得に向けた更なる日本語のレベルアップと論文作成力向上のためのコースを開講したいと思います。

 今ベトナムでは、日本語教育に関心を持つ日本人の皆さんにとって活躍の場が広がっています。また、日本語学習熱が高まっていることに加えて、安全で食事もおいしいベトナムは日本語教育の経験を積むにはとてもよいところだと思います。日本の大学または大学院で日本語を専門に学んでも実習する場がないとお悩みの方は、ぜひ一度VJCC-ハノイへお越しください。ベトナムにおける日本語学習の熱気を感じていただけることと思います。開かれたVJCC-ハノイ, 頼られるVJCC-ハノイを目指し、これからもベトナムの日本語教育に少しでも役に立てるよう努力を重ねたいと思います。

文責:雄谷 進

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ベトナム日本人材協力センター(通称VJCC)は、ビジネス・日本語・交流事業の3部門を通して、日本とベトナムの人脈を形成する場として期待されています。またこのセンターには図書館があり、日本語教育関連教材が豊富にそろい、日本語学習者だけでなく、日本語教師にとって大切なリソースセンターとなっています。国際交流基金日本語教育専門家は「日本語コース」を担当し、
(a)教師の育成・専門性向上、(b)中上級レベルの一般講座、(c)コース設計・運営・評価のほか、日本語教授法、日本語教育セミナーの開催やコンサルティングを行っています。
ロ.派遣先機関名称 ベトナム日本人材協力センター(ハノイ)
ハ.所在地 Foreign Trade University, 91Chua Lang
Dong Da, Hanoi, Vietnam
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名  日本語教育指導助手:1名

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