世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ベトナムの大学と日本の大学間協定の実現へ ―一人でも多く、ベトナム人学生を日本の大学へ―

ベトナム日本人材協力センター(ハノイ)
雄谷 進

 ベトナム日本人材協力センター(以下、「VJCCハノイ」と略す)はベトナムの市場経済化に必要とされる人材の育成、日越間の相互理解及び友好関係の促進を目的として2002年に設立され、ハノイとホーチミンにセンターがあります。VJCCハノイは北部ハノイ、ハイフォンから中部フエ・ダナンまでをカバーしています。2006年2月の国際交流基金による海外日本語教育機関調査では、ベトナムの日本語学習者は2003年度の調査に比べて65%増加し、約3万人でした。学習者が大幅に増えた理由として、大学での日本語学科や日本語学部の設立、中等教育でのモデル校導入(*1)があります。また日系企業進出による日本語のできる人材の需要の高まりもあるでしょう。その日系企業の多くが採用条件として日本語能力試験2級合格を課しています。そのため日本語能力試験対策コースはVJCCだけでなく各大学や民間学校でも人気コースです。今回VJCCハノイの日本語能力試験選抜試験には約360名(昨年は200名)の学生、社会人の応募があり、2クラス開講予定を4クラスに増やしました。日系企業も日本語教育に関心を示し始めており、従業員への日本語教育も年々盛んになっています。それが日本語能力試験受験者数の増加につネがっています。(2007年12月はハノイが約5000名、ベトナム全土で13000名近くが受験)日系企業進出が盛んなので今後も日本語学習と日本語能力試験受験への熱い思いが続くと思います。

 今が旬の国「ベトナム」で日本語教育に従事できる幸せを感じています。ただその反面、多方面からいろいろな要望が寄せられており、どこまで対応するか、どのように対応するかが課題になります。

 VJCCハノイでは2007年度日本語コースを31(2006年度は19)開講しました。中級会話、ビジネス日本語、日本語能力試験対策が中心です。そのほか20台のインターネット接続可能なコンピュータを利用したクラスを現在開講中です。

大学生対象セミナー国家大学・人文社会科学大学にての写真
大学生対象セミナー
国家大学・人文社会科学大学にて

 その他ベトナムの日本語教師への支援として、日本語教授法や日本語教育セミナーも実施しています。最近日本語学習者の増加を見込み、将来の職業として「日本語教師」を考えるベトナム人が増えています。その影響で日本語教授法を開講すると定員20名がすぐにうまります。この教授法は出席率がよく、現在は順番待ちの状況です。そして今年6月と7月にはダナン外国語大学とフエ外国語大学で集中日本語教授法を開講予定です。また昨年から始めた新しい試みは、大学で日本語を学ぶ学生対象セミナーです。「日本語をもっと勉強したいが、教材がない」は世界共通の課題です。しかし現在はインターネット環境も整備され、このベトナムもインターネット利用の環境が整いつつあります。この時代の流れを踏まえ、学生に無料で良質の素材を紹介し、実際に触れてもらうセミナーです。これまで北部から中部で日本語授業を行っているすべての大学で実施し、約1400名の学生にセミナーを行いました。

 最後に今後の課題です。まず昨年VJCCに導入されたJICA-NETの有効活用です。今年3月に東京外国語大学のシンポジウムを受信しましたが、今後はもっと受信できればと思います。次に、中級レベルを担当できるベトナム人教師の育成です。初級については少し人材が育ってきましたが、中級となるとまだ人材不足です。中級の教授法をしっかり身につけた人材を一人でも多く育成できればと思います。

修士課程 指導者養成プログラム説明会の写真
修士課程 指導者養成プログラム説明会

 現在ベトナムの日本語学習者数は増加していますが、課題は大学で日本語を勉強しても日本留学のチャンスが非常に少ない点です。もちろん文部科学省の国費留学制度はありますが、人数が限られています。ベトナムは他の国より遅れて日本語教育が本格化したこともあり、日本との大学間協定は大きな目標であり、課題です。この2月に国際交流基金の修士説明会を行なったところ、25名もの人が集まりました。1年で修士が取れるこのプログラムは、ここベトナムでも知名度が年々高くなってきています。

 このようにベトナムは日本語教育の右肩上がりが続いています。ベトナムに関心のある方にはぜひとも飛び込んできてほしいと思います。一方、ベトナム政府は大学の先生方に対して修士号・博士号取得の指示を出しています。今後日本へ学位取得のための留学が増えていくでしょう。しかしベトナムで修士取得となると現在は日本研究で1校のみです。今年秋には日本語教育で修士がとれる大学院がスタート予定で、来年ももう1校計画されています。今後この大学院へのサポートが日本語教育の質向上にとって大きな鍵を握ります。この大学院への日本側の協力と支援が得られればと思います。ぜひ日本の大学側に日本語教育の新興国・ベトナムに目を向けていただきたいと思います。

  1. (*1) ベトナムは中等教育段階における外国語科目として日本語の導入を検討しており、その試行教育を実施するモデル校が指定され、日本語教育が行われている。

文責:雄谷 進

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ベトナム日本人材協力センター(通称VJCC)は、ビジネス・日本語・交流事業の3部門を通して、日本とベトナムの人脈を形成する場として期待されています。またこのセンターには図書館があり、日本語教育関連教材が豊富にそろい、日本語学習者だけでなく、日本語教師にとって大切なソースセンターとなっています。
国際交流基金日本語教育専門家は「日本語コース」を担当し、(a)教師の育成・専門性向上、(b)中上級レベルの一般講座(c)コース設計・運営・評価のほか、日本語教授法、日本語教育セミナーの開催やコンサルティングを行っています。
ロ.派遣先機関名称 ベトナム日本人材協力センター(ハノイ)
ハ.所在地 C/O Foreign Trade University,91 Chua Lang
Dong Da,Hanoi,Vietnam
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名  日本語教育指導助手:1名
ホ.アドバイザー派遣開始年 2001年9月

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