世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ベトナム日本文化交流センターより はじめての便り

国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
稲見由紀子  伊藤愛子

1.センター オープン

日本語を学ぶ中学生とセンタースタッフ(「子供の日」のイベント)の写真
日本語を学ぶ中学生とセンタースタッフ(「子供の日」のイベント)

 2008年4月、「国際交流基金ベトナム日本文化交流センター」がオープンしました。場所は、外国公館や省庁が立ち並ぶハノイ中心部の一角です。
  私たち「中等教育における日本語教育試行プロジェクト(以下 プロジェクト)」を支援する4人の日本語教師(*1)は、それぞれの配属先からセンターへと所属が変わりました。気持ちも新たに業務に励んでいます。

2.私たちの仕事

a. 教科書制作
  現在、高校2年生用の教科書『にほんご11』(*2)を制作中です。執筆委員6名のうち、ベトナム人委員4名は、本業の大学教師としての仕事が忙しく、教科書制作のために割ける時間は限られています。それでもみな「学習しやすい教科書を生徒たちに届けたい」との一念で頑張っています。私たち日本人専門家も、生徒がより自然な日本語が学べるよう、試行錯誤を繰り返しながら、教科書制作に取り組んでいます。

b. 教師研修の実施
  私たちが講師を務める中等教育教師のための研修は2つあります。一つは、教育訓練省との共催で年に1回開催する「全国研修」です。全国の教師が一堂に会し、5日間の集中研修を受けます。全国研修では、教科書に対する理解を深めることを目標に、教科書分析、文法、教授法などの講義を行います。
  もう一つの研修は、「フォローアップ研修」です。より具体的に教室活動を考えるための研修で、年に2回、ハノイ、中部(フエかダナン)、ホーチミン(以下 HCM)、の3か所で開きます。期間は2~3日、参加人数3~6名の小規模な研修なので、地域や学校の実情、教師のニーズに合わせて実施できるのが特徴と言えるでしょう。
  研修に参加する教師たちは、着実に力をつけてきています。最近では、みなで話し合う中で、参加者自らが問題点や留意点に気づき、その対処法を考える、ということができるようになってきました。経験の長い参加者からは鋭い指摘や創意あふれるアイデアが次々と出てきて、脱帽することもしばしばです。後進の指導にもあたることのできる人材が育っていることに、大きな喜びを感じます。

c. 中部地方巡回指導
  年に7~8回、専門家の常駐しないフエとダナンのモデル校4校に赴いて、授業観察をしたり、授業のお手伝いをしたりしています。授業の後には、担当教師と「振り返り」の時間をもちますが、その時の専門家からのちょっとした質問やヒントをきっかけに、その後の授業は必ずレベルアップします。彼らの理解力と創造力には、驚かされます。
  授業が変わると、生徒の目がきらきらと輝きだします。それを受けて教師の表情も生き生きしてきます。「成功体験」の積み重ねで教師が成長しているのを目の当たりにして、感動することもしばしばです。

ティームティーチング(ハノイのモデル校にて)の写真
ティームティーチング(ハノイのモデル校にて)

d. ティーム・ティーチングの実施
  専門家の常駐するハノイとHCMのモデル校では、教師と専門家が共に教室に入り、協力して授業を行っています。授業は基本的に担当教師が中心となって行い、私たちは、教案作成、授業実施、授業の振り返りの各段階で、必要に応じて助言したり、手伝ったりしています。

3.ニュース

a. JENESYS Programmeによる中学生・高校生の訪日研修
  3月から7月半ばにかけて、プロジェクトで日本語を学ぶ中高生約100名が4つのグループに分かれて訪日し、グループごとに異なる地方都市を訪れて、日本の中高生と交流したり、ホームステイを体験したりします。生徒たちは何を感じ、何を学んで帰ってくるのでしょうか。話を聞くのがとても楽しみです。

b. JENESYS Programmeによる日本人教師の派遣
  9月からの新年度には、「JENESYS若手日本語教師派遣プログラム」により、5名の日本人教師がベトナムに派遣されます。その内4名は、各地域の中学校に入り、ベトナム人教師とペアで授業を担当したり、日本文化紹介を行ったりすることになっています。
  今まで日本人教師のいなかったフエとダナンにとっては、朗報と言えるでしょう。

4.さいごに

 前任者たちが課題としてあげていた「教師不足の解消」「教師の待遇の改善」は、プロジェクトが6年目に入ろうとしている現在も、解決の兆しは見えません。
  嬉々として日本語を勉強してくれている生徒たち。その生徒たちの学習環境を守るためには、教師が安心して教育に打ち込める状況を作ることが何よりも重要です。そのために、私たちも現地関係者と力を合わせ、引き続き努力していきたいと思います。

  1. (*1) 内1名(ジュニア専門家)は、ホーチミン市レクイドン中学に派遣されている。
  2. (*2) ベトナムの学制:小学校5年(1~5年生)/中学校4年(6~9年生)/高校3年(10~12年生)
派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ベトナムにおける国際交流基金の拠点として設置された。日本語教育事業を中心としながら、諸々の文化交流事業を実施する。小ホールでは、定期的に日本文化紹介を目的とする展示をする。また、資料室およびセミナー室も備えている。
ロ.派遣先機関名称 国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
The Japan Foundation Center for Cultural Exchange in Viet Nam
ハ.所在地 27 Quang Trung, Hoan Kiem, Hanoi, Viet Nam
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名 ジュニア専門家:2名 日本語教育指導助手:1名
(ジュニア専門家1名は、HCMレクイドン中学に派遣)        
ホ.アドバイザー派遣開始年 2008年

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