世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ハノイで開講中、各地で進行中

国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
有馬 淳一・雄谷 マユミ・横山 直子

日本語講座開講中! 

 「先生、こんばんは!」毎週月曜日と木曜日の午後6時、ベトナム日本文化交流センターの教室に響き渡る声がJF講座「会話入門A1」授業開始の合図です。

 学業後に駆けつけた大学生や仕事帰りの社会人が、疲れた様子などなく、皆さわやかな顔を見せてくれます。喧噪が続くハノイの通りから一歩教室に入れば、そこは小さな“日本”が待っているのです。

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説明を聞く時は真剣です

 2012年3月1日、JFスタンダード準拠教材を使った日本語講座がここハノイでも始まりました。この講座はコミュニケーション活動を中心にしたもので文字に頼らない学習方法が特徴です。一方、これまでのベトナムの語学教育はというと、暗記方式と文法積み上げ方式。もちろん学習者は書いて覚えるやり方に慣れています。果たして新しいやり方がベトナムの人たちに受け入れられるのでしょうか・・・。不安と期待の中、いよいよ広報開始です。しかし、蓋を開けてみると、1週間で20名を超す申し込みがあり、締め切りまでには109名まで数字が跳ね上がる結果となりました。今回は教室の都合上20名に絞りましたが、コミュニケーション能力を必要とする潜在的日本語学習者がまだまだいることに気づかされました。

 こうしてスタートしたクラスは、社会人11名、大学生9名の真面目ながらもちょっとユーモラスな人たちばかりです。ベトナムでは日系企業への求職や転職のために日本語を学ぶ人が多くなっていますが、この講座の受講生は仕事で使うからというよりも、身近にいる日本人とコミュニケーションを図りたいと希望する人が多いようです。また、日本に対する憧れや文化的興味を持つ人も少なくなく、皆初めから積極的に活動に取り組んでいます。そのため、会話発表ではよく爆笑の渦が巻き起こります。「授業が楽しい」「たくさん話せてうれしい」「クラスの雰囲気がいい」とコメントし、毎回志気が下がらないのには感心します。そしてこの中から最終試験に合格した受講生だけが次のコースに進む事になります。

 日本語講座では、日本人講師と常勤のベトナム人講師が授業に当たっています。教科書も初めてならば、JFスタンダードを使用したやり方も初めてなので、第1回の講座は二人とも授業に入るティームティーチング制をとりました。ティームティーチングの良さは、なんといっても双方の得意分野を活かし、足りない部分を補える点にあるでしょう。ベトナム人講師にはベトナム語を効果的に使用しながら、学生へのきめ細やかな対応や現地事情を取り入れた授業などをしてもらっています。

 日本語講座は今のところ受講生に好評です。授業の進め方を理解し、自己評価シートにも嫌がらずに記入してくれています。ポートフォリオ(PF)に対しても抵抗がなく、教室に入るとまず自分のPFを持って席に着き中身をチェックする習慣が身に付きました。この間は、日本のカステラを教室で試食した際、さっそく「日本文化体験記録シート」を取り出して書き入れていました。こうやって日本体験が1つずつ増えていき最終的に日本理解につながってくれることが私たちの願いです。

 日本語講座はまだまだ始まったばかり。多くの受講生を育てるとともに、この講座が広くベトナムの日本語教育にも受け入れられるよう、一歩ずつ進めていければと思っています。

中等日本語教育プロジェクト進行中!

 2003年に日本語がベトナムの中学校で課外授業として開始されてからもうすぐ丸9年、そして2005年に正式科目として導入されてから丸7年になります。最初は1名だった中等教育担当の派遣専門家ですが、今では日本語指導助手も含めると、ハノイだけで4名が活動しています。その中で派遣専門家はティームティーチングでベトナム人教師と一緒に授業に入り、生徒に教えることもあれば、教師研修を実施し、ベトナム人教師に教えることもあります。派遣専門家が駐在しない中部には、直接出向き、巡回指導や教師研修を実施しています。そこでのヒアリングを通して、ベトナム全土の中等日本語教育事情を把握するのも、私たちの仕事です。

「卒業式+終業式」で歌う高校生の写真
「卒業式+終業式」で歌う高校生

 2012年6月。ベトナム全土で高校卒業試験が実施されます。これは高校3年終了時に実施される試験で、それに合格できなければ生徒は高校を卒業できません。そしてその卒業試験合格が大学入学試験の受験資格にもなっています。今の高校3年生は中等プロジェクトの中で、卒業試験の外国語科目を「日本語」で初めて受験する生徒です。第一期生で前例がないということもあり、不安を感じている生徒もいますが、生徒と教師が一体となって受験対策に取り組んでいます。

 卒業後も日本語の勉強を続ける生徒もいれば、日本語とは全く異なる分野に進む生徒もいます。若さとエネルギーいっぱいの高校3年生。大きな大きな夢に向かって羽ばたいていってほしいと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation Center for Cultural Exchange in Vietnam
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
 国際交流基金の海外拠点の一つで、日本語事業のほか、芸術文化、日本研究・知的交流の分野で文化交流事業を実施している。
 日本語教育支援事業で特に力を入れているのが、日本とベトナム両政府が協力して進めている「中等学校日本語教育試行プロジェクト」で、中等日本語教師向け研修の実施、教科書制作、モデル中学・高校でのティームティーチング、巡回指導などをおこなっている。
 さらに、高等教育機関や民間日本語学校に対する日本語教育支援も積極的に展開しており、その一環として現職教師対象の講座を開講している。
 また2012年3月より一般人対象のJFスタンダード準拠日本語講座も開始した。
所在地 27 Quang Trung, Hoan Kiem, Hanoi, Vietnam
国際交流基金からの派遣者数 日本語上級専門家:1名 日本語専門家:3名 日本語指導助手:3名
(うち日本語専門家1名と日本語指導助手1名は、ホーチミン市に派遣)
国際交流基金からの派遣開始年 2008年

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