世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)中等教育の現場の様子(ハノイ)

国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
栗原幸則・石橋美香・古閑紘子

ベトナムでは現在、約5,500人の子供たちが中学校、高校で日本語を学んでいます。中学校20校、高校12校の合計32校で35人のベトナム人の教師(国際交流基金ベトナム日本文化交流センターが2012年に行った調査結果より)が一週間に45分の授業を3回程度教えています。私たちはこれらのベトナム人日本語教師に対する支援を行っています。今回は、学校や授業、先生の様子の紹介と各地域へ出張した際に行う研修、各地の先生方を一同に集めた全国研修について紹介します。

現場の様子

机と椅子の一体型学習机の写真
机と椅子の一体型学習机

北はハノイから南はホーチミンの5つの町で日本語が学習されています。ハノイをはじめ町中で日本人を見かけることは、ほとんどありません。そして町に本屋はありますが、日本の本が簡単に手に入る環境はありません。日本の情報が少ないこの5つの地域に年に数回出向き、日本に関する新情報提供や教え方のヒント、日本語力向上のための活動を行っています。日本では教師は公務員であり、教師以外の仕事を行う人はいませんが、この国の公務員(教師)は薄給のため、通訳や翻訳などの仕事をし、家計を支えているのが現状です。

授業は太鼓の音一つ「ドン」で始まり、「ドン」で終わります。地域によっては、子供の数が多いため、午前、午後で生徒が入れ替わる学校も珍しくありません。クラスを見まわして気づくのは、未だに黒板が多いこと、暑さのためか天井が高いことが挙げられます。そして、机と椅子が一体型の学習机になっていて目を引きます。これだと授業中に椅子を引くことができないので音が出なくて静かです。一クラス当たりの生徒数ですが、30-40人は当たり前です。そのため、クラスコントロールは容易ではありません。しかも日本のように学習環境はよくありません。暑いために天井で回っているファンが教師の声をかき消していたり、窓が開いているために他のクラスの声が聞こえてきたりするのです。生徒は暑さに耐えつつ、教室にぎゅうぎゅうに詰め込まれているかのようです。

教師研修の様子

各地域で行われる研修の様子の写真
各地域で行われる研修の様子

地域ごとに行っている支援は、教師の授業視察・助言および研修の実施です。授業視察で見受けられるのは、生徒が眠くなるような授業をしてしまうことです。教師が黒板の側から動かなかったり、同じ活動を長く続けたり、生徒に適当な刺激を与えない場合によく見受けられます。このような際には「メリハリをつけましょう」「グループ活動を取り入れ活性化しましょう」などと助言しています。一方研修では新たな活動アイデアを提示したり、ベトナム人教師から経験やアイデアを紹介してもらったりしています。写真は、ベトナム人教師が文化紹介の授業アイデアを紹介しているところです。このように実際に目の前で授業の進め方を体験することで、参加している教師に文化紹介の授業が実践できるよう環境作りを図っています。

全国研修

年に一度、全国の中学・高校のベトナム人日本語教師を対象に行われている全国研修では、地域が離れているために普段会うことのできない先生方の親睦・交流およびベトナム人教師が積極的に経験や教授アイデアを発信できる場を設けています。今後日本語学習者の増加が予想されるため、ベトナム人日本語教師には、自立化を促し、地域全体の日本語教育を主導・牽引していってもらいたいと考えています。

ティームティーチング、地域研修、全国研修等を行い個々の教師の自立化へ向けて、今日も一日我々派遣者は事務所から教師のところへ足を運んでいます。

中等教育機関の学習者対象の文化系講座

「福笑い」体験の様子の写真
「福笑い」体験の様子

ベトナム日本文化交流センターでは2か月に1度の割合で文化系講座を実施しており、2013年度よりハノイの中等教育機関で日本語を学ぶ生徒たちを対象とした文化系講座も実施しています。今のところ年に二度しか実施できていないため、受付初日に定員に達し更にキャンセル待ちも出るほどの人気ぶりです。今まで実施した講座は、「こどもの日で学ぶ日本語」と「お正月の遊びで学ぶ日本語」です。今回は「お正月の遊びで学ぶ日本語」について紹介します。

2013年12月末に実施された当講座は、ハノイ日本婦人会の方々のご協力を得ての実施となりました。前半は日本のお正月についてクイズ形式で学んだり、二人羽織を体験したりしました。後半はスタンプラリー形式で様々なお正月の遊びを体験してもらいました。だるま落とし、お手玉、羽根突き、福笑いと様々な遊びを通して、その日初対面で大人しかった生徒たちもだんだん打ち解けて仲良く遊ぶようになり、最後の遊び「ジャンボかるた」ではグループ対抗でみんな熱中していました。講座の最後にはお雑煮も提供し、初めて食べるおもちに興味津々の生徒もいて、おもちを頬張り「美味しい」と好評でした。こうした講座での体験が生徒たちの日本語学習へのモチベーション維持の一助となればと考えています。今後もこのような機会を設け、一回一回生徒たちの印象に残る講座を実施できるよう努力していきます。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation Center for Cultural Exchange in Vietnam
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
国際交流基金の海外拠点の一つで、日本語事業のほか、芸術文化、日本研究・知的交流の分野で文化交流事業を実施している。
日本語教育支援事業で特に力を入れているのが、日本とベトナム両政府が協力して進めている「中等学校日本語導入プロジェクト」で、中等日本語教師向け研修の実施、教科書制作、モデル中学・高校でのティームティーチング、巡回指導などを行っている。
さらに、高等教育機関や民間日本語学校に対する日本語教育支援も積極的に展開しており、その一環として現職教師対象の講座を開講している。
また一般人対象のJFスタンダード準拠日本語講座も開講している。
所在地 27 Quang Trung, Hoan Kiem, Hanoi, Vietnam
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名、専門家:4名、指導助手:5名
(うちホーチミン市:専門家2名・指導助手1名、フエ市:指導助手1名、ダナン市:指導助手1名派遣)
国際交流基金からの派遣開始年 2008年

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