世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)いきいきベトナム成長中!

国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
栗原幸則・石橋美香・古閑紘子

2016年より初等日本語教育開始予定

ベトナムで中等日本語教育が始められて12年となりますが、それとは別に新たに政府が定める外国語能力基準に合わせた外国語プロジェクトが現在進められています。そのプロジェクトのうちの1つが2016年の新学期に導入される予定で、開始されれば小学3年生から日本語が学ばれることになります。私たちはカリキュラム、教科書を作成しており、今後は教師研修への支援も行っていきます。現在は、ベトナム、日本双方からの教科書作成メンバーが定期的に集まり、検討を重ねています。また小学3年生を対象とした実験授業も行い、よりよい教科書作りの参考にしています。

小学3年生から高校まで続く10年間のプロジェクトですが、教師が笑顔をたたえつつ小学生が楽しく学ぶことができるような授業を目指して、ベトナム側の教科書作成メンバーを支えていきたいと思います。

ベトナムの日本語パートナーズ始まる

インドネシアやタイ、フィリピン、マレーシアなどのASEAN諸国では日本語パートナーズ(以下、NP)派遣事業が始まっていますが、ベトナムでも2014年12月よりNP派遣事業が開始されました。これは一般公募で選ばれた20歳から69歳までの日本人が日本語の授業補助や日本文化紹介を行い、中高生や現地の人と交流することを目的とした国際交流基金が行う派遣事業です。現在ベトナムには10名のNPが派遣されています。ハノイのNP2名はこれまでにお好み焼き作り、書道、お正月紹介などを通して現地の生徒と交流を図っています。お正月紹介の際、日本とベトナムの正月の違いに気付いた生徒たちは、みないきいきとした表情で授業を受けていました。また緊張しながらも一生懸命生徒たちに伝えようとするNPの表情も輝いていました。今後2020年まで続くNP派遣事業をより効果的に実施しNPと現地の関係者双方に資するようなプログラムに成長させていきたいと思います。

生徒のモチベーション維持のためにできること

教室用語「聞いてください」の練習風景写真
教室用語「聞いてください」の練習風景

中学校で新入生を迎えた第1回目の授業で必ず生徒に「なぜ日本語を勉強したいのか」と質問するようにしています。すると「日本が好きだから」「アニメ・まんがが好きだから」「日本に行きたいから」など予想していた答えもあれば、中には「日本人と結婚したいから」と答えた生徒もいました。ただ、はじめはやる気満々だった生徒でも日本語の文字の多さや難しさにやる気が薄れてしまうこともあり、モチベーションを維持することは簡単ではありません。中学生は自分で日本語クラスを選んだ生徒もいれば、家族の勧めで日本語クラスに入った生徒も少なくありません。

生徒の日本語上達を目指すのはもちろんですが、まずは日本に興味を持ってもらう、日本語学習の面白さを感じてもらうことが大切だと考えています。そのために1クラス50人前後と大人数ですが、カタカナで名前が書ける、日本語で「ありがとう」が言えるなど、どんな小さな褒めポイントも見逃さないよう心がけています。また限られた時間ではありますが、歌の紹介や文化紹介も授業に取り入れています。特に好評だったのは動作付きで歌う『鬼のパンツ』と「おにぎり・巻き寿司作り」です。日本語の得意・不得意関係なく、どのクラスでも笑顔でいきいきと楽しそうにしている姿を見ることができ、こちらも嬉しくなりました。また昨年12月からNPが教室に来たことによって、年齢も性別も異なる日本人と交流できる機会が増え、生徒のモチベーション維持につながっています。

今後もベトナム人日本語教師と協力して生徒のモチベーション維持に尽力し、ベトナムの中等教育を盛り上げていきます!!

日本語・日本文化を発信中!ハノイJF講座

ハノイJF講座 中級コース開講式の様子
ハノイJF講座 中級コース開講式

ハノイJF講座には、『まるごと―日本のことばと文化―』(以下、『まるごと』)を使った日本語講座と、年に4~5回様々なテーマで開かれる日本文化体験講座(以下、文化講座)があります。

2012年に入門レベルから始まった日本語講座は、現在どのクラスも中級コースに進んでいます。主に大学生以上の学生や社会人が中心のクラスですが、皆さんとても明るく元気で、日本語学習に対する姿勢も積極的です。『まるごと』についても、「トピックの内容がおもしろい!」「日本についてもっとわかるようになった!」「会話力が向上した!」など、ポジティブなコメントが多く寄せられており、クラス内で日本語を話す受講生の顔はみんないきいきとしています。

また、ハノイJF講座では、2014年度中に「こどもの日」「夏祭り」「和菓子作り」「茶道」をテーマにした文化講座を行い、中学生から社会人まで、多くの方に参加していただいています。どの講座も受講者募集を始めて1日~2日で定員が埋まってしまうぐらいの人気ぶりで、ベトナムでの日本文化への関心の高さが窺えます。この文化講座は、日本の文化を知ることだけでなく、その過程でテーマに関連する日本語も学べるというところが魅力の一つです。また、日本文化・日本語を学ぶことを通して、ベトナムの皆さんに自分自身や自分の文化についても振り返ってもらい、自文化/他文化両方の理解を深めるということも文化講座のねらいの一つとしています。今後もベトナムの皆さんの期待に応えられるような講座を提供していきたいと思います!

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation Center for Cultural Exchange in Vietnam
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
国際交流基金の海外拠点の一つで、日本語事業のほか、芸術文化、日本研究・知的交流の分野で文化交流事業を実施している。
日本語教育支援事業で特に力を入れているのが、日本とベトナム両政府が協力して進めている「中等学校日本語導入プロジェクト」で、中等日本語教師向け研修の実施、教科書制作、モデル中学・高校でのティームティーチング、巡回指導などを行っている。
さらに、高等教育機関や民間日本語学校に対する日本語教育支援も積極的に展開しており、その一環として現職教師対象の講座を開講している。
また一般人対象のJFスタンダード準拠日本語講座も開講している。
所在地 27 Quang Trung, Hoan Kiem, Hanoi, Vietnam
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名、専門家:5名、指導助手:5名
(うちホーチミン市:専門家2名・指導助手1名、フエ市:専門家1名・指導助手1名、ダナン市:指導助手1名派遣)
国際交流基金からの派遣開始年 2008年
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