世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)体験から学ぼう!

国際交流基金 ベトナム日本文化交流センター(ダナン)
黒田朋斎

自分の授業から学ぼう!【中等教育支援】

2017年度から中等教育機関教師対象の研修を全国研修を起点とする1年間のフォローアップ・プログラム(以下、研修プログラム)として組み立て直しました。この研修プログラムは中等教師が「学習者中心」の授業ができるようになることを目標にしています。ここで私たちの言う「学習者中心」とは、(1)生徒に伝えたい点を、教師が説明しないで生徒に気づかせるような方法を使っている、(2)生徒が積極的に参加するような楽しい活動が入っている、(3)生徒が思考力や創造力を使う創造的な活動が入っている、(4)生徒同士の協力が必要な活動が入っている、の4つです。研修プログラムに参加した教師は、全国研修を皮切りに研究授業を行い、そこで挑戦した活動を合同研修で報告します。それらを通して、「学習者中心」の授業ができることを目指します。私が担当する中部地域(ダナン、フエ)からは、6名の教師が参加しました。全国研修については、ハノイのレポート、合同研修についてはホーチミンのレポートにお任せし、本稿では公開研究授業(以下、研究授業)の様子をご紹介します。

生徒がダイナミックに活動している写真
研究授業では生徒がダイナミックに活動します

研究授業は、全国研修に参加した教師が授業の中に「学習者中心」の活動を取り入れること、そして授業の計画→実施→振り返り→修正までを自身の授業の中で実践することを目的に1学期と2学期に1回ずつ(注1)実施します。研究授業のスタートになるのは、授業の「計画」すなわち教案作成です。教師が教案を作成しますが、その教案に対して専門家が助言をします。それを受けて教師は教案をさらに修正します。そして、その教案で実際に授業をするのです。授業のときには、専門家は一緒に教室に入り見学します。この研究授業は専門家だけでなく、その他の現地教師も見学することができます。

ポイントはここからです。授業後、教師はまず一人でじっくりと自らの授業を振り返り、それから専門家とともに、動画で授業の流れや自分の授業中の振る舞い、生徒の様子などを見ていきます。この時、専門家もポイントになる教師の言動や生徒の様子を指摘します。教師は自分の実際の様子を動画で見たり、専門家からの指摘を受けたりすることによって、授業をしているときには見えなかった多くのことに気づきます。研究授業はこれで終わりではありません。1回目の振り返りで気づいた点を意識しながら次の研究授業に臨み、「振り返り」を「修正」に繋げるわけです。

研修での模擬授業ではなく、研究授業として実際の授業で「学習者中心」の授業を計画から振り返り・修正まで実践したことである教師は授業方法が変わり、ある教師は自分の授業を詳しく振り返ることができるようになりました。研究授業を2回実施して私たち専門家もそういった変化を目の当たりにでき、やりがいを感じています。この研修プログラムに参加したフエの2名の先生たちについて、フエの近藤専門家が近くで支援を続けてきた視点から書いていますので、そちらもぜひご覧ください。

読書から学ぼう!【ダナン地域支援】

2017年度に入ってからダナン執務室で絵本などの日本語の本(注2)や、ベトナム語に翻訳された日本人作家の小説などを読む「ダナンにほんごどくしょの会」を2か月に1度開催しています。これまで4回開催しましたが、毎回中学生や高校生を中心に10人から20人の参加者がいます。

それぞれのスタイルで本を読む参加者たちの写真
それぞれのスタイルで本を読む参加者たち

この読書会では、参加者それぞれが興味を持った本を手に取って読んでいきます。一人でじっくり読む人もいれば、友だちと話しながら読む人もいたり、読み方はさまざまです。本を読むという体験を通せば普段の勉強とは違う新鮮な気持ちで日本語や日本事情を学べるのでしょうか、参加者たちはみな読書に没頭しています。ありがたいことに、回を重ねるに連れて参加者も多様になってきました。リピーターや最近ではかわいい小さい子どもも参加してくれています。これからも多くの人が参加してくれることを期待しています。

(注1)ベトナムの中等教育機関は2学期制。
(注2)日本語書籍は、おもに神奈川大学「本の架け橋プロジェクト」に寄贈していただいた。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation Center for Cultural Exchange in Vietnam
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
国際交流基金の海外拠点の一つで、日本語事業のほか、芸術文化、日本研究・知的交流の分野で文化交流事業を実施している。
ベトナム政府が推進する「2008-2020年期国家教育システムにおける外国語教育・学習プロジェクト」に日本政府も協力しており、当センターは初中等日本語教育のカリキュラム・教科書作成、教師研修等を行っている。
また、専門家派遣地を中心に中等日本語教師向け研修、巡回指導等を行っている。
さらに、高等教育機関や民間日本語学校に対する日本語教育支援も展開しており、セミナー開催等行っている。
ハノイ、ホーチミンで一般人対象のJFスタンダード準拠日本語講座も開講し、『まるごと』ベトナム語版出版準備も進めている。
所在地 27 Quang Trung, Hoan Kiem, Hanoi, Vietnam
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名、専門家:6名、指導助手:1名
(うちホーチミン市:専門家2名、フエ市:専門家1名、ダナン市:専門家1名派遣)
国際交流基金からの派遣開始年 2008年
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