世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ベラルーシの日本語教育 ―教師会活動とベラルーシ国立大学の日本語授業―

ベラルーシ国立大学
星野 智子

4月30日4年生授業「実践スピーチ」の写真
4月30日4年生授業「実践スピーチ」

ベラルーシ国立大学(以下、BSUとする)に日本語日本研究コースが新設されたのは2002年秋。同年、NIS日本語教育専門家(現ジュニア専門家)派遣が始まった。

2003年にはベラルーシ日本語教師会が発足し、国際交流基金(以下、JFとする)の助成を得て国内弁論大会も開催された。しかし、大会運営は一朝一夕にはうまくいかず、2004年度の弁論大会は出場者の大半が参加申込日までに必要書類を揃えることはなく、大会当日は丸暗記した原稿をただただ読み上げるばかりだった。

何事もやるからにはいいものを作りたい。[とりあえずやればいい]ではなく[やってよかった]と思えるものに変えたい。そう思って臨んだ2005年度の弁論大会は、小さいながらも確実な変化があった。全員ではないにしろ、多くの出場者が何度も推敲を重ねた原稿を期限までに提出し、その後大会までの時間を練習に費やしてくれた。一部の学生の間では、事前準備や当日の大会運営においてボランティアで事務作業の手伝いを申し出てくれる者まで現れた。内容や運営面では改善すべき点は依然として多いものの、今後恒例行事として定着し、年を重ねる毎にさらにいい大会になることが期待できる。

そして今年度は、新たに日本語教育巡回セミナーを開催した。モスクワよりJF日本語教育アドバイザーをお招きし講義いただいた後、発表希望のあった各教育機関の方々からの活動報告も行った。より高い教養や日本語力を身につけんとする現地教員の方々はみな熱心に聞き入り、セミナーは参加者全員から好評を得たと言ってよい。

豊かな教養や知識を求めて研究に励むのは、教授陣ばかりではない。BSUの学生たちも同様である。ベラルーシでは、多くの近隣諸国同様、日本留学を目指す学生とそうではない学生との間には大きなレベル差がある。また、教室を出ると日本語使用の場がほとんどなく、卒業後も日本語生かした仕事に就ける可能性が極めて低い。そのため、いつの日か役に立つかもしれない日本語の学習動機を保つのは容易ではないことが想像できる。しかし、学生たちに現在の日本語学習目的を聞くと、「一度始めたことを途中でやめたくない」「まだまだ知りたいことがたくさんある」「将来、日本とベラルーシの外交関係を強める仕事がしたい」など肯定的な意見が多い。

3月29日3年生スピーチ発表会の写真
3月29日3年生スピーチ発表会

そんな学生たちとの授業は、彼らの持つ既存の知識を発信する力を持たせるという点に重点を置いた。レポートを書く場合には、表記や文法だけでなく事実と意見の書き分けについて指導し、発表を行う場合は、自らテーマを選定し追求することを求めた。そして、学生たちは着実に「できること」を増やしていった。BSUでは、3年続いた日本語日本研究コースへの新入生受入が今年度は教師不足や財政難などを背景に見送られたことをはじめ、教材の活用法やコースデザイン等においても見直すべき点は多い。しかし、担当授業を充実させることで、現在在籍中の学生たちの日本語運用能力は確実に向上している。今後、優秀な専門家を世に送り出すことができるだろう。

このように、ベラルーシにおける日本語教師会の活動は最初の一歩を踏み出したばかりであり、具体的活動を軌道に乗せるのはこれからだと言える。また、BSUの日本語日本研究コースは。発展途上ながらも整備が進められ、日本語教育の基礎が出来上がろうとしている。試行錯誤を繰り返したベラルーシでの取り組みは、多くの時間と労力を費やしたが、将来この地の日本語教育の発展へとつながる基礎作りに成果を残せたと信じている。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
専門家は週に10時間の授業を担当するとともに、シラバス開発や、他教師へのアドバイスなどを行う。本大学では、日本語・日本研究コースは、国際関係学部の中にある。国際関係学部は、ベラルーシの政治や外交の場面で活躍できる人材の輩出を目指している。そのため、当コースでも、日本の政治や経済、外交問題についても造詣が深い知日家を育成し、ベラルーシと日本との国家レベルでの交流を担う人材を輩出することを目指している。
ロ.派遣先機関名称 ベラルーシ国立大学
Belarusian State University
ハ.所在地 St.Akademicheskaya, 25/404, Minsk, 220072, Belarus
ニ.国際交流基金派遣者数 ジュニア専門家1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
国際関係学部地域言語研究科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2002年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2002年
(ロ)コース種別
専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤2名 非常勤1名(うち邦人1名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   主専攻で各学年10名程度
(2) 学習の主な動機 「日本への憧れ」「日系企業への就職希望」
(3) 卒業後の主な進路
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
(5) 日本への留学人数 各学年1,2名程度

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