世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ベラルーシ国立大学の日本語教育

ベラルーシ国立大学
菅井綾子

国際関係学部の教室の写真
国際関係学部の教室

 ベラルーシ国立大学(以下「BSU」と略す)国際関係学部東洋語講座には中国語をはじめ6言語のコースが設置されている。このうち日本語を専攻する学生は約40名おり、2007年6月に専攻科として初の卒業生が4名誕生した。

 現在、ベラルーシでは学んだ日本語が生かした進路を得ることは残念ながら難しい。現在のところ日本企業も展開しておらずベラルーシ外務省の日本語人材の要請も不定期のようである。

 首都ミンスクにおいて日本及び日本文化への関心は高まりつつあり、スポーツ振興の流れに乗り諸武道の人気も高いが、それ以外の日本語学習や文化交流となると教材・資料や教育機関・交流機会の不足から、未だ発展途上の段階である。

 しかし熱心な日本語学習者は確かに存在し、高度な日本語能力を有する人材もここ数年で増えつつある。国内で本格的に日本語を学べる機関は本学科およびミンスク国立言語大学の2機関のみであり、両大学の学生および教授陣は国内における日本語教育の主人公である。他にプライベートレッスン、独学、通信教育、NPO団体の日本語教室で小規模な学習がされており、日本語学習者や学習機会も少しずつ、しかし着実に増加しているのである。

 本講座の日本語担当講師はベラルーシ人講師3名、ロシア語の堪能な日本人講師1名、国際交流基金(以下「JF」と略す)日本語教育専門家(筆者)合計5名である。学生は1学年10名程度で、2007-2008年度は1.2.4.5年生が在籍する。本講座のカリキュラムでは週6-7コマ(1コマは80分)の日本語の授業が組まれており、各学年ほぼ毎日、日本語の授業を受ける学習環境である。

 1.2年次は「みんなの日本語」を使用し基礎的な力および漢字をしっかり身につけること、3.4年次には中級文法の学習および豊富な読解訓練を通して、語彙力や日本語によるコミュニケーション・文書/情報処理・翻訳・通訳能力を身につけること、5年次には日本語能力試験1級または2級に合格、および日本事情等の高度な知識をもって卒業論文を執筆、卒業後専門家として活躍するに足る人材に育つことを目標に、講師学生とも熱心に日本語及び専門科目に取り組んでいる。

 留学の機会は日本政府(文部科学省)奨学金日本語日本文化研修留学および交換留学協定による早稲田大学留学(ともに1年間)の二つがあり、合わせて毎年2名程度選抜される。また日本語学習者大学生訪日研修(JF関西国際センター)へも、本講座の学生が派遣される可能性が高い。つまり卒業時までに学年で必ず2-3名は1年間留学あるいは訪日経験を持つことができる。これが在学中の最大の目標となっている一方、学生は留学にとどまらずさらなる目標を持つべきであり、スタッフ一同任国における日本語学習者を取り巻く環境の改善及び卒業後の活躍の場の拡大を切に願っている。

 JFによる日本語教育専門家派遣は、本講座の専攻科としてのスタートとほぼ同時期に開始されたが、5年経ち学科の体裁が整った現在、教授陣が卒業時に学生に期待する能力水準および人材像も具体的になりつつある。スタッフの授業・業務役割分担も年を追って効率化している。

学科講師事務室の写真
学科講師事務室

 日本語教育専門家は、BSU現地スタッフと力を合わせ学科運営に携わり、担当授業のほか教材整備、学生指導及び自主学習環境の整備を行っている。また時間的場所的制約からこれまで活発ではなかった課外活動の再開を促し、日本語能力試験対策の自主勉強会を継続、書道教室もスタートした。現在関心のある学生が楽しく練習しており、今後参加者の増加が期待される。また興味ある学生はインターネットでかなりの情報を手に入れることができるが、一方マスコミで取り上げられる日本に関する情報は偏っており、一般に日本及びアジアに対する理解が進むのはこれからである。そこでBSU講師は手持ちの書籍、雑誌、CD、DVDを学生に頻繁に貸し出し、教室以外での日本語や日本文化・日本事情への接触も奨励している。どんな原書も視聴覚ソフトも喜んで借りて行く学生を見るにつけ、単に購読視聴機会の提供にとどまらず、これをきっかけとして学生が語学以外の関心領域を持ち、自主的に情報収集交換するようになるだろうと期待している。学生の知的好奇心が満たされるには、講師個人の努力のみによらず大学や公共図書館で日本およびアジアに関する書籍や資料が充実し気軽に利用できる環境が整う必要がありAこれを働きかける必要も感じている。

 物心情報外交と多方面で日本との距離が遠い任国の学習環境で、意欲ある学習者がそれぞれの目的を見つけ学習意欲を高く持ち続けるには、どんな情報や活動の提供が有効であろうか。また交流促進にむけてどんな提案をしていくべきであるか。模索と試行錯誤の日々である。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
専門家は週に10時間の授業を担当するとともに、シラバス開発や、他教師へのアドバイスなどを行う。本大学では、日本語・日本研究コースは、国際関係学部の中にある。国際関係学部は、ベラルーシの政治や外交の場面で活躍できる人材の輩出を目指している。そのため、当コースでも、日本の政治や経済、外交問題についても造詣が深い知日家を育成し、ベラルーシと日本との国家レベルでの交流を担う人材を輩出することを目指している。
ロ.派遣先機関名称 ベラルーシ国立大学
Belarusian State University
ハ.所在地 St.Akademicheskaya, 25/404, Minsk, 220072, Belarus
ニ.国際交流基金派遣者数 ジュニア専門家1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
国際関係学部地域言語研究科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2002年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2002年
(ロ)コース種別
専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤4名 (うち邦人1名。現地人講師1名は休職中)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   主専攻で各学年10名程度
(2) 学習の主な動機 「日本への憧れ」「難解な言語への興味」「日系企業への就職希望」
(3) 卒業後の主な進路 官公庁、民間企業
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級程度
(5) 日本への留学人数 各学年1,2名程度

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