世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ベラルーシにおける日本語教育

ミンスク国立言語大学
菅井綾子

 ベラルーシに派遣されている国際交流基金のジュニア専門家(以下、専門家)の主な業務は、兼任2大学(ミンスク国立言語大学・ベラルーシ国立大学)でネイティブ講師として合計9コマ(1コマ80分)の授業を行うことである。概要は昨年度に述べたが、今回は派遣中の2年間に取り組んだ周辺業務と今後の展望について紹介したい。

日本文化に親しむ活動

墨絵あり写真あり(書道作品展)の写真
墨絵あり写真あり(書道作品展)
大鳥居や富士山も(廊下展示)の写真
大鳥居や富士山も(廊下展示)

 課外活動として週一回、希望者を対象に書道教室を試みた。2007年9月からはミンスク国立言語大学(以下、MSLU)の新入生が意欲を見せ、10ヵ月後には作品展を催すほど熱心に取り組んだ。この課外活動により2大学の交流も図れ、学生も授業以外で日本文化に触れる楽しさを知ったようである。またMSLUでは2008年4月に週替わりで各言語学科による廊下展示が行なわれたが、日本語科担当の週には、学生は教師の助力なしに質量共にかなりの展示物を作り上げた。この統率力・行動力をもってすれば、現在在籍の30名は5年間の学生生活の間に自主的に課外活動を組織運営し、後輩にも引き継がれるよい伝統を充分残せるだろう。
  また、依頼があり市内の外国人補修校において一度、児童を対象に折り紙講習を行った。手伝いとして日本語科大学生にも参加を呼びかけたが悪天候の日曜日に10数名が集まり、関心の高さが伺えた。学生は折り紙も児童との交流も楽しんだようである。
  専門家はできる範囲で以上のような文化体験の提供を続け、日本に対する一般の認識および学生の意欲の向上に努めたい。

国費留学等の成果を還元

 国費および交換により2大学の学生には年間3,4名、日本への長・短期留学の機会が与えられる。また最近は私費で日本へ長・短期留学する学生も出始めた。留学の成果と利益が周辺に還元されるべく、専門家は留学報告会を提案、ベラルーシ国立大学(以下、BSU)では2007年冬に初めて実施した。日本の生活を体験者から直接聞くことは後輩の学習意欲向上のよい機会であり、今後留学を目指す者にとっては情報交換の機会となり有意義であった。また、ベラルーシ弁論大会の司会は近年、長期留学の帰国学生や5年生が務めるようになり、後輩はここでも先輩の姿に刺激を受けている。いずれは報告会を学生主体の行事とするなど、今後発展の余地がある。

民間日本語教育機関の支援

 NPO「東洋文化協会 葉隠」の日本語教室からは今夏、3年コースの修了生が初めて誕生する。専門家は年に1、2回授業見学、毎年夏に行われる修了試験の問題作成への助言、会話試験の面接官などの支援を行ってきた。「葉隠」は講師学生とも本業の傍ら夜間に週3回学習に取り組み、弁論大会で好成績を収める者も出て、頼もしい限りである。またMSLUの一般向け公開講座も開設から1年経ち軌道にのってきた。大学外の日本語教育機関の動向も把握し、要望に応じて教授法の助言など、全体に目を配っていきたい。

ベラルーシ日本語教師会

 国内に存在する日本語教師は首都の大学・民間講座・個人教授を合わせて10名程度で、国の全体を専門家が把握できる規模である。大学教師雇用事情からほぼ全員が副業を持ち多忙を極めるため、ベラルーシ日本語教師会も近年の活動は弁論大会運営関連のみであった。毎年これに発揮される少人数ならではのチームワークはさすがのものである。

 ところで2008年5月には、2年ぶりに教授法勉強会を行なった。専門家が講師を務めたが、参加7名は初級の教え方について意見を交換し、有意義な時間であった。ロシア語が不十分な専門家にとって、現地教師の教室活動を知ることはティームティーチングを行う上で大変重要である。また現地講師の教授法研修に対する要望も改めて感じた。今後も講師間の意見交換や授業見学を続け、教師会活動についても現地講師と共に歩んでいきたい。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
当大学は、ベラルーシ国内最大の外国語専門大学であり、日本語専攻コースは通訳学部に設置されている。通訳学部では、プロの通訳・翻訳家の育成をを目指しているが、現段階では、ベラルーシ国内における日本語需要は、低いと言わざるをえない。そのため、日本語コースの学生募集は、5年に1度である。専門家は、日本語母語話者として2コマ×2クラス計4コマの日本語会話の授業を担当している。
ロ.派遣先機関名称 ミンスク国立言語大学
Minsk State Linguistic University
ハ.所在地 St Zakharova 21, Minsk , 220034
ニ.国際交流基金派遣者数 ジュニア専門家1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
通訳学部ドイツ語学科東洋語講座
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1993年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2002年
(ロ)コース種別
専攻
(ハ)現地教授スタッフ 常勤1名、非常勤1名
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   主専攻2年生30名
(2) 学習の主な動機 「日本への憧れ」「日系企業への就職」
(3) 卒業後の主な進路 不定期な翻訳・通訳業務 官公庁 民間企業
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力検定1級受験可能な程度
(5) 日本への留学人数 2名程度

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