世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ミンスク国立言語大学での活動(2010)

ミンスク国立言語大学
渡辺 裕美

日本人留学生と一緒にの写真
日本人留学生と一緒に

 日本語専門家の業務というとアドバイザー型派遣と個別機関型派遣があり、報告者は後者の派遣でベラルーシに赴任しています。他の多くの国とは異なり2大学での業務を兼任する形での派遣です。ここベラルーシでの報告者の業務は、各大学での授業・先生方のサポート・弁論大会出場学生の指導・弁論大会運営・セミナー開催など様々です。今回はその中でミンスク国立言語大学(以下、言語大学)での業務について紹介しましょう。

 今年度報告者が担当していたのは音声・文法理論・会話の3科目でした。ここではその中の一つ発音の授業についてお話します。他大学の日本語科のカリキュラムをみた場合、通常、音声の授業だけで1コマを使うことは少ないのですが、ここミンスク国立言語大学の通訳学部日本語コースでは1学期間・週1コマの音声の授業が組み込まれているなど、発音の習得が重視されています。なぜなら通訳のスペシャリストになるためには聞きやすい自然な発音の習得も欠かせないからです。その授業中、報告者は、第一に、日本語の単音の発音・特殊拍「ー・ん・っ・ゃゅょ」の発音・アクセントとイントネーションの規則を確認しながら学生が自分自身の発音傾向に気付くこと、第二に、各自が日本語らしい発音を心がけられるようになることを目指して指導をしました。その結果、半年間の授業後学生からは自分が発音するときや日本語を聞くときにアクセントやイントネーションを意識するようになったという声が聞かれました。実際、程度に差はあるものの以前に比べ学生たちの発音の癖は少なくなってきています。

セミナーの様子の写真
セミナーの様子

 また報告者は、学生の日本語力を伸ばすためには、授業のみならず報告者以外の日本人と接する機会を設けることも重要と考え、その実現に努めました。なぜなら、旧ソ連圏の他国と比較してもベラルーシは在留邦人や日本人旅行者が少なく、生きた日本語に接する機会がほとんどないからです。結果、モスクワ国立大学の日本語専門家のセミナー、留学生との交流など報告者以外の日本人との交流機会を設けることができました。さらに本年度は駐ベラルーシ日本大使に講演していただくこともできました。こういった機会提供の成果として学生の学習意欲の向上を感じることができました。たとえば、講義後やセミナー後に「理解できて嬉しかったです!」と興奮気味に話してくれる学生の笑顔や満足そうな学生の様子に接する機会が多くなったり、また、学生が道端で出会った日本人旅行者の方を教室まで案内し、その日本人の方に飛び入りで授業に参加していただいたり、といったこともありました。こうした学生たちの様子を見ていると、私も喜びを感じこれからも学生達の日本語力向上のために、学生達が達成感を得られ驍謔、に頑張ろうと思うものです。このように学生の真剣さを感じながら共に前に進んでいけること、これはこの仕事の最も大きなやりがいだといえるでしょう。

 言語大学の教員は報告者と日本語コース長、もう一名の計3名です。私はこの6月で任期終了となりますが、2名の先生方と一緒に言語大学の日本語教育に携われたことを嬉しく思います。そして才気あふれる現3年生の成長した姿をいつか見られる日が楽しみです。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 ミンスク国立言語大学
Minsk State Linguistic University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
日本語専攻コースは通訳学部に設置されている。日本語コースの学生募集は、5年に1度で少数精鋭制となっており、プロの通訳・翻訳家の育成を目指している。専門家は、本年度は会話・音声・文法理論の授業を担当している。
所在地 St Zakharova 21, Minsk , 220034
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
通訳学部ドイツ語学科東洋語講座
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   1993年
国際交流基金からの派遣開始年 2002年
コース種別
専攻
現地教授スタッフ 常勤1名、非常勤1名
学生の履修状況
履修者の内訳   主専攻2年生27名
学習の主な動機 「日本への憧れ」「留学」「通訳・翻訳家希望」
卒業後の主な進路 不定期な翻訳・通訳業務 官公庁 民間企業
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力検定1級受験可能な程度
日本への留学人数 2名程度

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