世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ベラルーシ国立大学における業務報告 2011

ベラルーシ国立大学
石橋 美香

 報告者にとって初めて訪れたヨーロッパの国がここベラルーシであった。ベラルーシについての情報はいまだに豊富に手に入れられるとは言えず、報告者も十分な情報を得られないまま派遣されることとなった。実際に訪れてみると、多くのレストランやカフェのメニューに寿司があり、スーパーでも醤油や海苔などを購入することができる。また、年に2回アニメフェスティバルも開催されており、遠く離れた日本を身近に感じることもできる。

 報告者はベラルーシ国立大学で週に6コマの授業を担当している。担当学年は、1年生から5年生までと様々な学年の授業を担当し、日本語専攻の学生だけではなく国際経済を主専攻とする学生の授業も担当した。この1年を通して特に感心させられたことが2点ある。まずは、学生たちの挨拶である。普段、大学内で会った時はもちろん、授業のあとにも「ありがとうございました」、「失礼します」など必ず一人ずつ挨拶をして教室を出て行く。その際、丁寧に頭を下げて挨拶をするのである。新入生でまだ日本語を習い始めたばかりの学生もたどたどしいながら挨拶をして出て行く姿は非常に微笑ましいものであった。そしてもう1点は、9月に開かれた弁論大会での学生の積極性である。今年度は本大学から過去最高となる8名の学生が参加したが、その半分は初級前半を終えたばかりの学生であった。発表内容も将来の夢や興味のあること、経験に基づくものなど様々なものがあり、質問者として参加した報告者も非常に楽しませてもらった。

 ベラルーシでは残念ながら日本留学の機会が限られており、本年度は早稲田大学への留学(1年間)と国際交流基金による大学生日本語学習者訪問研修(6週間)での各1名のみであった。また、在留邦人の少ないベラルーシ国内では、日本人と接する機会もほとんどないといっても過言ではない。本大学での日本人日本語教師も報告者ともう1名の計2名のみである。日系企業が1社もないため、卒業後に日本語を活かせる就職先もないのが現状である。このような環境下で日本語への学習意欲を持ち続けることは容易ではない。しかし授業中熱心にメモを取り、会話の際も既習項目を一生懸命使って発話しようとする学生たちの姿勢を日々目にすることができた。そのような学生たちの姿に励まされ、それを活力にした1年間でもあった。

 前期の授業の最終日、1年生の学生からカードをもらった。その中に「先生から日本を感じることができた」という一文が書かれていた。海外において日本人日本語教師の存在というものは学習者に大きな影響を与えるものであろう。日本人と接する機会の少ないベラルーシならなおさらである。この1年間を振り返ってみて、どれくらい学生たちに「日本を感じる」機会を設けることができただろうか。授業の一部を使って、折り紙を折ったり日本の緑茶の試飲をしたりなどはしたものの、とても十分であったとは言えず反省している。

 来年度は何か日本語関係のイベントを実施しようとの提案も同僚からあり、報告者もぜひ学生たちが日本を感じ、日本語により興味を持ってもらえる機会を持てるよう尽力したいと考えている。

1年生、自分で折った折り鶴と一緒にの写真
1年生、自分で折った折り鶴と一緒に

2年生、今学期最後の授業にての写真
"2年生、今学期最後の授業にて

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Belarusian State University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
本大学の日本語・日本研究コースは、国際関係学部の中に設置されている。国際関係学部は、ベラルーシの政治や外交の場面で活躍できる人材の輩出を目指している。そのため、当コースでも、日本の政治や経済、外交問題についても造詣が深い知日家を育成し、ベラルーシと日本との国家レベルでの交流を担う人材を輩出することを目指している。専門家は週に6時間の授業を担当するとともに、他教師へのアドバイスなどを行う。
所在地 St.Akademicheskaya,25/404,Minsk,220072,Belarus
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
国際関係学部東洋学講座
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   2002年から
国際交流基金からの派遣開始年 2002年
コース種別
専攻
現地教授スタッフ
常勤4名(うち邦人1名)
学生の履修状況
履修者の内訳   各学年10名程度、3年生のみ14名
学習の主な動機 「日本への憧れ」「難解な言語への興味」「日系企業への就職希望」
卒業後の主な進路 官公庁、国営・民間企業、留学など
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N1~N2受験可能な程度
日本への留学人数 各学年2~4名

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