世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ミンスク国立言語大学での業務報告 2011

ミンスク国立言語大学
石橋 美香

 ミンスク国立言語大学では、新入生を5年に1度しか募集しないため、今年度は4年生の1学年のみであった。基本的にはその学生を2クラスに分けて授業を行っている。報告者は今年度、週に4コマの授業を担当した。担当科目は「会話」と「日本文学」であった。

現地教員の授業

 本大学の学生たちは通訳・翻訳家の育成を目指しているだけあり、現地教員の担当する通訳・翻訳の授業においては、学生たちはかなりの量の語彙がインプットされている。学生たちのノートを見せてもらうと、時事問題や医療、文化やスポーツなど様々な分野に関する語彙が書かれており、その量と内容には目を見張るものがある。前期は、日本人留学生にクラスゲストとして授業に参加してもらえる機会が定期的にあった。その際は、日露通訳者と露日通訳者を決め、残りの学生たちはインタビュアーとなり、クラスゲストを囲んでの「記者会見」を行った。現地教員によるサポートを受けつつ、より実際の現場に近い形で通訳体験ができる良い機会となった。

日本文学の授業

日本文学の発表での1枚の写真
日本文学の発表での1枚

 日本文学への関心の高い学生が多く、吉本ばななや村上春樹などの書籍を読んだことのある学生も少なくなかった。しかし日本文学の作品を扱う際、その当時の時代背景なども知っておかなければ作品を理解することが難しいと考えられたため、その時代の歴史や文化なども合わせて紹介した。まず、前期と後期の一部の授業で報告者が講義を行い、後期の残りの授業では学生たちに自身の興味のある作家と作品について発表してもらった。それぞれの発表の後には質疑応答の時間を設け、学生間で活発なやり取りが行われた。

今年度の授業目標

 日本語を学んでも日系企業もなく、在留邦人も日本人観光客も少ないベラルーシでは、将来日本語を生かす可能性が非常に低いため、4年生ともなると日本語への学習意欲の低下が見られる学生も多少見受けられた。そのような学生が少しでも意欲を持って授業に臨んでもらえるよう、より楽しいそして達成感のある授業を目指した。

作品集を手にする学生たちの写真
作品集を手にする学生たち

 また今年度、報告者が授業を行う上で目標としたのはより多くのアウトプットの機会を設けることであった。すでに現地教員の授業で多くのインプットの機会があるが、それを実際に使えるようになるにはアウトプットが必須であると考えたためである。そのため文学での発表だけではなく、俳句や詩、オリジナルのことわざの作成など様々な形でのアウトプットの機会を用意した。ただ、日本語でそれらを作成するのは難しいとの声もあった。特に、詩の作成に関しては頭を悩ませたようであったが、実際に提出された作品を見るとどれも個性があり、自身の感情や思いが豊かに表現されており、心に響く作品が多く見られた。

 このように学生たちの作成したものを1冊の作品集としてまとめ、今学期最後の授業の際に学生たちに手渡した。どの学生も楽しそうにページをめくり、他のクラスメートたちの作品も興味深そうに眺めていた。ぜひこの作品集によって学生各々で振り返りを行ってもらい、達成感を得て今後のモチベーション維持や日本語への自信に繋げてもらえればと思っている。

「モスクワ国際学生日本語弁論大会」

 今年度、本大学の学生が上記弁論大会に出場し、4位入賞を果たした。これは出場した学生本人はもちろんのこと、応援していたクラスメートたちにも非常に良い影響を与える結果となった。すでに半年も前から来年度のベラルーシ国内の弁論大会に出たいと意気込んでいる学生もいる。ぜひお互いに切磋琢磨し、積極的に日本語を生かしてもらいたいと願っている。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Minsk State Linguistic University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
日本語専攻コースは東洋語講座に設置されている。日本語コースの学生募集は、5年に1度で少数精鋭制となっており、主にプロの通訳・翻訳家の育成を目指している。専門家は、本大学において唯一の日本語母語話者の日本語教師であり、2クラス計4コマの授業を担当している。
所在地 St.Zakharova 21,Minsk,220034,Belarus
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
東洋語講座
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   1993年
国際交流基金からの派遣開始年 2002年
コース種別
専攻
現地教授スタッフ 常勤1名、非常勤1名
学生の履修状況
履修者の内訳   主専攻4年生25名
学習の主な動機 「日本への憧れ」「留学」「通訳・翻訳家希望」
卒業後の主な進路 不定期な翻訳・通訳業務、官公庁、民間企業
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N1受験可能な程度
日本への留学人数 2名程度

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