世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ベラルーシ国立大学における業務報告 2012

ベラルーシ国立大学
石橋 美香

 日本から遠く離れたここベラルーシで日本語が学べる高等教育機関は2ヶ所のみである。その内の1校がベラルーシ国立大学(以下、BSU)である。BSUでは日本語専攻の学生と副専攻の学生合わせて約40名が日本語を学んでおり、報告者が今年度担当したクラスは2年生~5年生の4クラスであった。  

ユーラシアフォーラム

書道のワークショップにての写真
書道のワークショップにて
「日本人が好きです」と書いた学生も

 シンポジウムおよび日本文化紹介のため、日本ユーラシア協会の方々がベラルーシを訪問された。尺八や和太鼓の生演奏もあり、日本文化紹介のワークショップでは、茶道・折り紙・書道に触れる機会も設けられた。またBSUにて交流会が開かれ、そこで学生たちが日本語の歌を歌ったり、ベラルーシ語と日本語での詩の朗読などを行った。グループディスカッションではお互いに自己紹介をしたり日本やベラルーシについて話したりと日頃学んだ日本語を使える絶好の機会となった。ベラルーシではなかなか日本人や日本文化に触れ合う機会がないため、学生たちにとっては非常に貴重な経験となったようである。

ベラルーシ日本語弁論大会

 2011年9月、毎年恒例の日本語弁論大会が開かれた。今回は過去最高の出場者数だった前回をさらに上回る計18名の学生が出場し、BSUからは2年生~5年生までの15名が出場した。学生たちが積極的に参加してくれるのは嬉しいことではあるが、出場者のスピーチ指導ができるのがネイティブの日本語教師と報告者の2名のみのため、各出場者に割ける時間が十分ではないのが現在の課題でもある。出場者とはスピーチ原稿の直しから関わることになり、その後スピーチ指導をしながら練習を重ねて本番当日を迎える。短期間ながらも日々上達していき、当日ステージで緊張しながらも一生懸命にスピーチしている姿を目にすると心を打たれるものがあり、教師としてのやりがいを感じる瞬間でもある。

日本語を学ぶ理由は?

 ある日学生に「みなさんは、どうして日本語を勉強しているんですか。」と質問してみた。おそらく大半が「日本へ留学したいから」と答えるだろうと予想していたが、そう答える学生は意外にとても少なかった。学生からあがった返答は「日本語は世界の言葉の中で一番面白いから」、「美しい言語だから」、「日本語で大好きなアニメが見られるようになるのが夢だから」、「日本語と日本の文化を勉強するにつれて、もっと関心が高まったから」、「自分のため」などであった。残念ながらBSUから日本へ留学できるチャンスはごくわずかである。学生たち全員に日本へ行ってもらいたいという気持ちは山々だが、その可能性は非常に低いのが現状である。そのため日本語学習の理由に上記のような様々な理由があげられ正直安心した。学生たちの日本語学習へのモチベーションが維持でき、より一層日本や日本語を好きになってもらえるよう日々心がけていきたい。

日本食にチャレンジ!!

白いおにぎりに納豆をのせてパクリの写真
白いおにぎりに納豆をのせてパクリ

 ベラルーシでは寿司がとても人気がある。寿司バーや寿司の宅配はもちろん普通のカフェでも寿司が注文できるほど身近なものとなっている。そのため寿司酢や海苔などはスーパーで簡単に手に入る。しかし、日本食は寿司だけではない。色々な日本の食べ物を知ってもらいたいと思い、日本へ帰国した際に梅干しと納豆を買ってきた。梅干しと納豆は日本人でも苦手な人がいるものだが、はたしてベラルーシの学生の反応はどのようなものか。どちらも初めて目にする学生もいれば日本のドラマで見たという学生もいたが、みんなとても興味津津な様子。特に納豆をかきまぜ糸を引いた状態を見せた際には、歓声(悲鳴?)をあげる者もいた。実際に食べてもらうと予想外に反応が良く、30名近くの学生が試食したが苦手だと言ったのはたったの一人。納豆に関してはまた食べたいと言う学生もいたほどであった。

 専門家が派遣されてから今年で10年目を迎えるが、一番の課題は教師の人材不足である。学習者数は少しずつ増えているものの、教師の採用枠がないため一部の教師の負担が増える形で成り立っている状況である。ベラルーシの日本語教育発展のためにも新たな日本語教師の育成が必須である。

 2年間のベラルーシでの任務をもうすぐ終えようとしている。この2年間を振り返ってみると報告者が学生に教えたことよりも学生から学んだことが非常に多かったように思う。学生たちの努力する姿や笑顔に何度も救われたものである。彼らの支えがあっての任務遂行であった。在留邦人が30名程度と少なく日系企業が1社もないベラルーシではあるが、今後も優秀な日本語学習者が育っていき、彼らの活躍の場が少しでも増えることを心より願う。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Belarusian State University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
本大学の日本語・日本研究コースは、国際関係学部の中に設置されている。国際関係学部は、ベラルーシの政治や外交の場面で活躍できる人材の輩出を目指している。そのため、当コースでも、日本の政治や経済、外交問題についても造詣が深い知日家を育成し、ベラルーシと日本との国家レベルでの交流を担う人材を輩出することを目指している。専門家は週に6コマの授業を担当するとともに、他教師へのアドバイスなどを行う。
所在地 St.Akademicheskaya, 25/404,Minsk,220072,Belarus
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
国際関係学部東洋学講座
日本語講座の所属学部、
学科名称
沿革
講座(業務)開始年   2002年から
国際交流基金からの派遣開始年 2002年
コース種別
専攻
現地教授スタッフ
常勤4名(うち邦人1名)
学生の履修状況
履修者の内訳   各学年10名程度、4年生のみ14名
学習の主な動機 「日本への憧れ」「難解な言語への興味」「日系企業への就職希望」
卒業後の主な進路 官公庁、国営・民間企業、留学など
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N1~N2受験可能な程度
日本への留学人数 年に4~5名

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