世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ミンスク国立言語大学での活動 2013

ミンスク国立言語大学
山口 覚

ベラルーシへの専門家派遣は2002年9月に始まりました。ベラルーシの専門家はほかの国とは違って2大学を兼務する派遣形態になっています。2年毎の交代で私は6人目の派遣者です。派遣開始以来、現地の日本語学習環境の整備が徐々に進み、現在では、まだまだ十分ではないと感じるものの、大学の現行のカリキュラムをまかなうのに必要な辞書や教科書が書棚にならんでいます。

大学の正面玄関の写真
大学の正面玄関

ミンスク言語大学はベラルーシ唯一の外国語大学で、日本語専攻コースは通訳学部にあります。卒業生は言語を専門とした仕事に就くことを目指しています。専門家はここで週に4コマの授業を担当することになっています。大学からは、ネイティブスピーカーならではの授業、特に会話面での支援に専門家への期待が寄せられています。

ミンスク言語大学では5年に1度、日本語専攻の新入生の募集があります。本年度はその募集の年にあたります。また本年度から2年生の副専攻のクラスがスタートしました。

新たに日本語の勉強を始めた学生たちの日本への興味・知識の対象は様々です。寿司は自分で作ることもあるが天ぷらは知らない。北野武は好きだが黒澤明は見たことがない。日本のアニメには詳しいが音楽はロシアやアメリカのものばかり・・・。学生が日本文化と接する機会というと、市内のすしレストラン以外ではインターネットでSNSを通じてということが主のようです。それだけに教室での直接交流の機会は貴重です。教室では文化紹介をできるだけ取り入れるよう心がけています。日本人の立ち居振る舞いなどからも国民性の違いなどを感受して欲しいと願っています。

雛祭りイベント

ひなまつり 初めての着物に喜ぶ学生たちの写真
ひなまつり 初めての着物に喜ぶ学生たち

2013年3月に現地の友好会館と在ベラルーシ日本大使館の共催で雛祭りの文化イベントが行われました。友好会館はミンスク言語大学の真向かいということもあってか、多数の学生の参加が得られました。準備段階から積極的な練習の姿勢とチームワークに感心させられました。絵が上手、画像ソフトの操作にくわしい、踊りが出来る、楽器が演奏できるなど、学生たちはなかなかの芸達者ぞろいです。それぞれがもともと持っている技能とスクリーンに流したインターネット映像とのコラボレーションが素晴らしく、見事なまとまりを見せていました。学生たちは日本の着物を着ることに大変はしゃいでいて、和洋折衷のエレガントな見栄えを見せていました。コスプレイベントなどの構想が膨らみます。

日本人ゲスト授業

日本人留学生にゲストとして授業に参加していただきました。学生はまだ一年生ですから自在に質問できるだけの語彙と文型はないのですが、それでも果敢にインタビューを試みる姿には感動しました。ベラルーシでは日系企業は皆無。在留邦人も30人前後で、街で見かけることはまずありません。学生にとっては貴重な実体験になったはずです。これからもこのような交流の機会をできるだけ多く設けていきたいと改めて思いました。

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