世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)日本語でもっと話せるようになりたい学生達の願い叶えます

ベラルーシ国立大学
小野崎亮

ベラルーシ国立大学では

ベラルーシ国立大学国際関係学部東洋語学科では日本語コースが開かれています。現在5年生5人と2年生の9人の学生が主専攻として日本語を勉強しています。また大学院生1名もここに在籍し、未来の研究者となるべく頑張っています。日本語学習者数は少ないですが、そのおかげできめ細かい指導が可能です。日本語の他には中国語、韓国語、アラビア語、トルコ語などを学ぶ学生が多数在籍しています。その他、経済学科の1年生のために副専攻のクラスもスタートしています。

学生達のニーズと専門家の役割

日本語コースでは学生達の「早く日本語が話せるようになりたい」「日本に留学したい」というニーズを叶えるべく、昨年からカリキュラムを見直しています。古い授業、教え方から脱却しようと教師達も努力を怠りません。専門家は日本語の指導と、このようなカリキュラムの作成、教材の選定作業、現地教師達のサポート等にも協力をします。

授業で大切なこと

主専攻のクラスでは日本語初級教材として『げんき』を使用しています。四技能はこの教科書で学ぶことが可能です。しかし、会話力を伸ばすためには、もっと学びの経験が必要です。そこで会話の授業では『まるごと 日本のことばと文化』(以下、『まるごと』)を利用しています。『まるごと』は耳からのインプット情報が重視されていますから、授業では聞くことがとても大切な作業となります。登場人物が多様でそれぞれ異なる声の表情があります。日本と遠く離れたベラルーシでは生きた日本語に触れるチャンスはなかなかありませんから、その声の表情を聞き取ることで本当の意味を考えることができます。おかげで学生達は表出された言葉に深い意味があることを敏感に学んでいます。

さて、この2年で所謂初級の指導が終わりました。基本語彙・文型が理解でき、試験でいい成績を収めればそれで良しということではありません。学んだことを使って何ができるのか「Can-Do」が重視されます。年2回実施される期末試験で学生達はテーマに沿った発表を行います。言いたいことが言えないもどかしさはあるでしょう。でもこの2年で自分の言いたいことは何としても伝えるんだというガッツが身についたと思います。注:副専攻のクラスは授業時間が少ないため(週2回)『まるごと』だけを利用しています。

試験を受けている学生達の画像
学年があがると試験はどんどん難しくなります。みんな緊張しています。

教師達の願い

コミュニケーションを怖がらないことと諦めないこと。教師がこのクラスに指導を始めるにあたって目標としていたことは達成できたと思います。その意味で、私たち教師は大満足なのですが、不満も少し。それは学生達が大学生活に慣れて自由な時間を楽しむことは大いに結構なことなのですが、2年生になって怠けるのも上手になったことが挙げられます。これはやっかいな問題です。将来後悔しないように遊びも勉強もしっかり頑張ってほしい、今という時間は永遠ではないのだから。教師もつい欲張りな願いごとをしてしまいます。

無事に2年生が終わり、学生達が日本語コース長の先生を囲んだ記念写真
無事に2年生が終わりました。日本語コース長の先生を囲んで記念写真。

日本語教育のリーダーとしての役割

ベラルーシ国立大学は国際交流基金さくらネットワークのメンバーの一員です。ベラルーシの日本語教育の重要拠点としての責任を果たすべく「リソースセンター開設」の計画がスタートしました。国際交流基金からの支援書籍を一般に公開し、特に日本語学習、日本語教育に関する情報を広く発信できるよう努力します。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Belarusian State University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ベラルーシ国立大学は将来を担う実力をもった人材輩出を目指している。国際関係学部に設置されている日本語・日本研究コースにおいては、日本の政治や経済、外交問題についても造詣が深い知日研究者を育成し、ベラルーシと日本の国家レベルでの交流を担う人材を輩出することを目標としている。日本語専門家は日本語の授業の他、大学院の講義を担当するとともに、教員の教授力ならびに日本語力向上のために支援を行う。
所在地 Leningradskaya St.20, Minsk, 220050, Belarus
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
国際関係学部東洋学講座
日本語講座の概要
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