世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ブルガリアでは、こんな人たちが学び、こんな人たちが教えています。

ソフィア大学
畠山理恵

学習者

「日本語教育セミナー」講義のひとコマの写真
「日本語教育セミナー」講義のひとコマ

 ブルガリアでは現在五つの学習機関-ソフィア大学、ヴェリコ・タルノヴォ大学、スヴィシュトフ経済大学、ソフィア第十八高校、ソフィア大学夜間公開講座-で日本語コースが開講されている。学ぶ場によって、学習者は大学で専攻としている人・大学で副専攻としている人・言語を専門とする中等教育機関で主専攻としている人・仕事や研究に活用するためあるいは純粋な興味から学んでいる一般成人、と大別でき、その数は約250人となっている。(いずれかの学習機関に所属している者に限定。2003年2月当国日本大使館実施の調査より)。初等教育レベルではまだ実績がない。ここに述べた以外に、高校の課外活動として行っている日本語クラスで学ぶ人や、塾のようなところで学んでいる場合もあり、実質の学習者数は300人強と見込まれる。かつて「日本学のための日本語」をごく限られた人たちが学んでいた時代とは違って、確実に広がりがある。

 一般的に当地の人々の日本に対する関心は非常に高い。学習者の多くが、距離的にも文化的にも言語的にも自分の持っているものとはかけ離れていることに興味を覚え、学習を始める。就職その他の実利的な目的が動機となることは少ないようである。

教師

 前述したいずれの機関にも日本からの派遣教師が配属され、ブルガリア人教師とともに共同でコース運営にあたっている。邦人教師とブルガリア人教師の割合は現時点で4:5。ブルガリア人教師に焦点を当ててみると、専攻を持つ二つの大学のいずれかを卒業し、母校あるいは他校で教壇に立つ若い世代の台頭が著しい。国内に日本や日本語を学ぶ場がなく旧ソ連へ留学していた先達からの世代交代は徐々に進んでいる。

 明るいニュースは2002年秋に「ブルガリア日本語教師会」が設立され、機関を越えた教師たちのつながりが実現したこと。2003年9月には初めて「日本語教育セミナー」を開催し、日本から鎌田修・南山大学教授をお迎えし、教師たちが一堂に会して学び、実り多い3日間を過ごした。教師会発足にはうれしいおまけもあった。受け皿ができたことで国外からの注目が高まり、他国の組織と共同で活動する計画が着々と進められている。この6月には欧州日本語OPI研究会と共催のワークショップが、9月には近隣諸国の若手研究者を招聘しシンポジウムが開催されることとなっている。

所属機関・ソフィア大学内での業務

 学生が卒業時に「高度の知識をもった日本学専門家のたまご」となっているように、入念にコースデザインをし、それをもとに各学年の目標設定、教材選定など「授業のための舞台装置」を整え、ブルガリア人の先生方とともに日々の授業を運営していく。学生たちの動機付けは高く、特に新入生の第一回目の授業などきらきらした瞳にこちらが吸い込まれそうになるぐらい学ぶ意欲に満ち溢れていて感動的である。「あいうえお」から積み上げた人たちが、4年生時には学外からお迎えした邦人ゲストの前で堂々と自由研究の最終発表をするまでになる。学生たちは、入学前にいくつかの外国語学習を経て自分に合った学習のしかたを既に身につけており、ちょっとヒントを与えるだけで「打てば響く」逸材ぞろいである。

所属機関を超えた業務

ビジターセッションでブルガリア料理の作り方を実演する学生たちの写真
ビジターセッションでブルガリア料理の作り方を実演する学生たち

 国全体が関わる日本語教育関連の行事を関係者との連携により企画・運営していくこと、国内各機関の教師・学習者・関係者と可能な限り接点を持ち動向を読むこと、国内にある人と物のリソースを把握し日本語学習に有効なつながりを仕掛けること、などがある。

 このうちもっとも力を入れているのが人のネットワーク作りである。常日ごろからどこにどんな人たちがいるのか・どんなニーズがあるのか・どの集団とどの集団をつなげればよいのか、を読み、考え、動く。たとえば教師会設立には、地道に機関訪問をして各校の先生方と顔見知りになる→全機関の教師にあてて勉強会開催の可能性を訴え開催実現の際のニーズ調査をする→結果をまとめて基礎資料を作る→教師会としてセミナー開催に動くことを訴えて同意を得る→教師会が立ち上がる→「国内の教師が一丸となって学ぶ場を持とう。国外から先生をおよびして勉強会を開こう」と教師会として助成プログラムに申請する、という流れがあった。所属機関の垣根を越えて行ったり来たりできる立場を最大限に活用して、あちらこちらに散らばる「点」をつなげ、時期を見て大きな力にしていくお手伝いをするのは、非常に骨が折れるが、実を結んだときの喜びは言葉にできない。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ソフィア大学は、ブルガリア初の日本語教育機関として1968年に夜間講座としてスタートして以来、同国の日本語教育をリードしてきた。同大学の専門は日本学であり、言語にとどまらず、社会経済、文学、歴史、その他全ての日本を対象とした分野の研究を志向し、同国における日本学の最高峰として高度の知識をもった専門家の養成を目指している。日本語コースはその一環であり、日本学の専門家として情報の収集及び発信が可能となるような言語運用能力を養成することを最終目標としている。専門家は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。
ロ.派遣先機関名称 ソフィア大学
Sofia University
ハ.所在地 No.79 Todor Aleksandrov, Sofia, BULGARIA
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
ソフィア大学古典及び現代言語文学部東アジア言語文化学科日本セクション
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   講座:1968年
(2)専門家・青年教師派遣開始年 1981年
(ロ)コース種別
専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤6名(うち邦人1名)、非常勤3名(うち邦人0名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   1年14名,2年12名,3年12名,4年11名
(2) 学習の主な動機 日本への憧れ
(3) 卒業後の主な進路 母校に就職、日本大使館に就職、研究留学など
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級~1級程度
(5) 日本への留学人数 4名

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