世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ブルガリアの日本語教育の現場から(2005)

ブルガリア ソフィア大学
須賀 美紀

2年生ビジターセッション「ソフィア観光」の写真
2年生ビジターセッション「ソフィア観光」

 ブルガリアでは現在5つの学習機関(ソフィア大学、ヴェリコ・タルノヴォ大学、スヴィシュトフ経済大学、ソフィア第18高校、ソフィア大学夜間公開講座)で体系的に日本語教育が行われています。5つの機関を合わせた学習者数は約250人。1990年ブルガリア最初の公的な日本語教育機関としてソフィア大学に当時の日本学科が開設されてから15年、今では上記5つの学習機関の他にも、幾つかの大学や高等学校で課外活動として日本語や日本文化が教えられるようになりました。人々の日本への関心は高く、日本語学習者層や学習動機もますます多様化してきています。

 ブルガリアにおける日本語教育は、核となる部分は決して大きくはないものの、徐々にその質と専門性を高めてきています。1995年から「日本語弁論大会」が毎年開催されているのをはじめ、1999年には「日本語能力試験」が公式認定され、2003年には「ブルガリア日本語教師会」が非営利団体法人として正式に設立されました。

 日本語教育専門家の派遣先であるソフィア大学日本セクションは、当国最高の研究・教育機関として、開設以来常にこの国の日本研究、日本語教育をリードする立場にあります。ここでの専門家の業務は、(1)ソフィア大学日本セクションの日本語講座をブルガリア人日本語教師とともに専門性の高いものにすること、(2)ブルガリアの日本語教育全体の発展と国内および近隣諸国における日本語教育ネットワークの構築に寄与すること、の二つに大別されます。以下では、この二つの業務についてそれぞれ簡単にご紹介したいと思います。

ソフィア大学古典および現代言語文学部東アジア言語文化学科日本セクション

 私がソフィア大学の学生達と出会ってから、間もなく一年が経とうとしています。

 人生の最も果敢な時期を、日本語や日本学の追求に費やす決心をし、ソフィア大学の最難関とも言われる関門を潜り抜け、希望に胸を膨らませて入学してきた輝く原石たち。そんな若者達と彼らの貴重な時間を共に過ごしている。たとえ「外国人」であっても、単なる一語学教師として以上に、不甲斐ないなりにも、一教育者としての責任が私にもあるのではないか。そんな責任の重さを感じながら、学生との「真剣勝負」に臨み続けた一年でした。

 日本から遠く離れた地での日本語学習は、時には「孤独」です。限られた日本語環境においては、学生と教師という二者間に留まらず、同級生、先輩、後輩、卒業生、他機関の日本語学習者、ブルガリア在住の日本人、日本文化や日本語を介して関わる人々、日本から贈られた辞書や参考書、ブルガリアで入手可能な参考書、インターネット上の日本語学習サイトなど、あらゆる日本語リソースをうまく利用する技を学生自身が身につけていくことが必要です。ソフィア大学ではこの一年、このような日本語リソースを有効活用した活動として以下のようなことを推進してきました。

 「上級生による新1年生の激励」「新2年生による新1年生の日本語学習、大学生活バックアップ(チューター制度)」「日本人を招いたビジターセッション」「インターネット上の日本語学習サイト、辞書・翻訳ツールなど、使えるツールの情報共有」「日本留学・研修報告会」「上級生による弁論大会出場者の指導」「弁論大会に来ている日本人へのアンケート実施」「折り紙クラブ、映画クラブ、書道クラブ、有志による他の教育機関へのクラブの出張」「他大学日本語専攻学生との大学対抗サッカー・マッチ」「他機関・他大学主催日本文化祭見学」など。あくまでも学生の自主性を重んじつつ、時にはきっかけ作り、後押し、軌道修正しながら、様々な日本語リソースとの「橋渡し役」となり、それを現場に根付かせ、他の日本語教育機関にも提案していく。このような現場に深く入り込んだ活動は、大学という一教育機関に派遣されている専門家の業務の特徴であり、また醍醐味とも言えるでしょう。

日本語教育ネットワークの構築と新しい時代に向けた提案

「第一回ブルガリア日本語学・日本語教育シンポジウム」研究発表のひとコマの写真
「第一回ブルガリア日本語学・日本語教育シンポジウム」研究発表のひとコマ

 2003年7月、日本語教師および日本語教師を志すブルガリア人と日本人を繋ぐ組織として「ブルガリア日本語教師会」が設立されました。設立以来、教師会主催または他機関との共催で、「ブルガリア日本語教育セミナー(南山大学鎌田修教授を招聘2003年9月)」「ACTFL/OPIテスター資格取得ためのソフィア・ワークショップ(欧州日本語OPI研究会と共催2004年6月)」「教師の悩みを話し合う会(2004年6月)」「第一回ブルガリア日本語学・日本語教育シンポ ジウム(2004年9月)」などが開催されてきました。日本語教育専門家も教師会会員としてこれらの活動に全面的に協力しています。
また、2007年ブルガリアのEU加盟(目標)を前に、現在日本人教師の派遣等で日本から支援を受けている各日本語教育機関においても、いよいよ「自立化」が現実のものとなってきました。日本語教育専門家にもまた、これからの日本語教育のあり方の模索、それぞれの現場の事情に即した支援や提案が求められています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ソフィア大学は、ブルガリア初の日本語教育機関として1968年に夜間公開講座としてスタートして以来、同国の日本語教育をリードしてきた。同大学の専門は日本学であり、言語にとどまらず、社会経済、文学、歴史、その他全ての日本を対象とした分野の研究を志向し、同国における日本学の最高峰として高度な知識をもった専門家の養成を目指している。日本語講座はその一環であり、日本学の専門家として情報の収集及び発信が可能となるような言語運用能力を養成することを最終目標としている。専門家は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。
ロ.派遣先機関名称 ソフィア大学
Sofia University
ハ.所在地 No.79 Todor Aleksandrov, Sofia, BULGARIA
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
ソフィア大学古典及び現代言語文学部東アジア言語文化学科日本セクション
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   公開講座:1968年
大学の専攻:1990年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1981年
(ロ)コース種別
専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤6名(うち邦人1名)、非常勤3名(うち邦人0名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   各学年12名程度
(2) 学習の主な動機 日本語や日本文化に対する知的好奇心
(3) 卒業後の主な進路 日本語教育機関に就職、日本大使館・外務省アジア局に就職
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級~1級程度
(5) 日本への留学人数 10名程度

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