世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ソフィア大学における日本語教育と日本語教育専門家(2009)

「聖クリメント・オフリドスキ」ソフィア大学
駒田聡

勤務先СИЕК正面の写真
勤務先СИЕК正面

 赴任してはや2年が経過しようとしている。簡単なまとめのつもりで現場からの報告としたい。

 ブルガリアでは年々日本語学習者数が増加しており2009年5月現在全12機関で約850名である。その中で専門家が所属するソフィア大学の日本語講座は1968年設置のブルガリアで最も歴史のあるものであり、「古典及び現代語学部東亜言語文化学科日本学専攻」(以下「日本学専攻」と略す)と拡大発展したのちも、日本学教育研究機関としてソフィア大学はブルガリアの日本研究・教育をリードする立場にある。2008年3月には「JFにほんごネットワーク」の拠点機関の一つになった。

 日本学専攻はブルガリアの最高学府であるソフィア大学でも最難関の定員15名の専攻であり、言語のみならず文学、民俗学、政治学、歴史学、経済学、社会学、文学等の幅広い日本研究科目が開講されている。まだ日本企業も在住日本人の数も少ないブルガリアでは日本に関わる経験をする機会が少なく、専門知識を活かした卒業後の進路を見つけることが学生・教師に共通の課題となっていることも事実だが、教師たちは、優秀で熱意に溢れた学生たちに応えるべく、与えられた環境・条件の下で最大限の努力を続けている。

 専門家としての私には、所属大学であるソフィア大学で週6コマを担当する大学教員としての通常の業務のほか、ブルガリア全体の日本研究・日本語教育に目配りをする役割が求められている。状況把握が進むにつれて後者の仕事も徐々に増えてきている。

 通常業務のほかに、教育・研究面で、私は現在ブルガリア日本語教師会と協力して、私も編者である『日本語文型辞典』(くろしお出版)を中心資料として用いながら日本語教育・文法の諸問題を研究する「日本語勉強会」を週1回、言語と関連領域を研究する「日本語研究会」(http://nihongo-kenkyuukai.blogspot.com/)、言語と思想との関連を研究する「日本思想史読書会」をそれぞれ月1回主催している。幸い質・量共に順調に発展してきたこれらの活動はブルガリアにおける日本研究のもう一つの拠点であるヴェリコ・タルノヴォ大学においても不定期開催している。また昨年立ち上げたオンラインの『ブルガリア語-日本語-ブルガリア語辞典』(http://jiten.eu/home)にはブルガリアにおける日本文学翻訳の第一人者バロヴァ・ドラ(Дора Барова)氏も参加を申し出てくださり編者の一人としてご活躍いただいている。

 ブルガリアに限らず、ほとんどの場合専門家は赴任地において仕事を進めるうちにその地を愛するようになる。優秀で熱心な学生や教師たちを同志として仕事をしているのだからそうならないほうがおかしい。私は任期終了後もここの仲間たちと共に学校法人を作ってブルガリアに残る予定にしている。

 上記のような恵まれた環境で仕事をするのだから、課題や困難はと問われてもそう呼べるだけのものは見出せない。あるのはみんなちっぽけな「問題」ばかりだ。強いて言えば、何よりも、専門家自身が彼らの熱意と実力に応えられるだけの人物であるか否か、幸いにしてもしそうなら、あり続けることができるかどうか、ということぐらいが問題になろう。

 「駒田先生は普通の日本人ではないんだよ。日本人がみんな駒田先生のような人たちだと思ってはいけないよ。」と同僚が、まだほとんど他の日本人に会ったことのない1年生たちに言わねばならぬ事態はご愛嬌としても、陳腐なことだが、専門家にできることは、赴任地での期待に応えるために、また日本の納税者への説明責任を果たすために、奇を衒うことなく、日々着実な努力を続けてゆくことぐらいである。

 任期中の業務に関する自己評価としては、重要な諸課題に関しては90/100、ちっぽけな諸課題に関しては20/100、総合評価としては50/100というところだろうか。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
「聖クリメント・オヒリドスキ」ソフィア大学日本学専攻はブルガリアにおいて日本語教育の最高峰である。専門家は週12時間の全4学年で授業を担当するとともに、学習者の更なる成長を目指し、上級者や若手の非常勤講師と一緒に日本語勉強会や日本語研究会を行う。専門家は、日本語講座の日本語教授のほかには、カリキュラム・教材の関する助言、日本語教育ネットワーク構築のための支援も行っている。
ロ.派遣先機関名称 「聖クリメント・オヒリドスキ」ソフィア大学
Sofia University "St. Kliment Ohridski"
ハ.所在地 CIEK, 79 Todor Alexandrov Blvd, Sofia 1303, Bulgaria
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家1名 指導助手1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
古典及び現代言語学部、東亜言語文化学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   一般公開講座:1968年から;
専攻:1990年から
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1981年
(ロ)コース種別
専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤:6名(うち邦人0名) 非常勤:4名(うち邦人0名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   1年生16名 2年生16名 3年生16名 4年生16名
(2) 学習の主な動機 日本語や日本文化に対する好奇心 留学希望
(3) 卒業後の主な進路 日本・ブルガリア両大使館、ブルガリア外務省、一般企業、教師
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2~1級程度
(5) 日本への留学人数 8名程度

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