世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ブルガリアにおける業務(「継続」と「自立化」)

ソフィア大学
吉金 秀基

ブルガリアに赴任して、あと3か月ほどで1年になります。私自身、初めての日本語専門家(以下、専門家)としての派遣なので、わからないことも多く、ここまで順調に進んできたとは言い難いですが、派遣先であるソフィア大学の先生方や他の機関の先生方、また現地におられる大使館の方々をはじめ邦人の皆様のおかげでなんとか業務を続けています。今回はそのような私の業務と今後の課題について、「継続」と「自立化」いう点に注目し報告したいと思います。

業務について

ブルガリアにおける専門家としての業務は大きく二つに分けられると思います。一つはソフィア大学での業務、もう一つはブルガリア全体の日本語教育のための業務です。

第19回日本語弁論大会(小泉大使、先生方、学生と)の写真
第19回日本語弁論大会(小泉大使、先生方、学生と)

まず、ソフィア大学内の業務は、普段の授業に加え、先生方との授業やカリキュラムに関する相談、学生との日本語・日本文化に関する相談、各機関との連絡、弁論大会のための指導などがあります。授業に関してはティームティーチングで他の先生方と協力し進めており、それ以外の業務についても先生方と共同で取り組んでいます。これらを進めるうえで、先生方や学生との人間関係がとても大切だと思うのですが、実はこの点で私は非常に楽をさせていただいています。というのも、前任の専門家と日本語指導助手の方がソフィア大学の先生方や学生たちと作り上げてきたいい雰囲気や人間関係が今も続いているからです。特に、先に挙げた弁論大会の指導では、先生方が主体的且つ積極的に取り組んでくださったので、非常に良い協力関係ができていました。さらに言えば、この業務に関しては、私自身は日本語面でのサポートをしているにすぎなかったと思います。ですが、それは自立化という点でいいことだったと思います。このような良い環境・状況が続いていくこと、あるいはそれを続けていくことが今の一つの大きな目的だと思っています。

この国における専門家のもう一つの仕事は、ブルガリア全体の日本語教育のために様々な活動を提案し、実行することです。具体的には、各機関を訪問したり、教師のための勉強会をしたり、あるいは他国との連携を図り様々な事業を進めたりすることが主な活動になるのですが、残念ながらもうすぐ1年になる現時点でもまだ十分な成果を残せていないのが現状です。しかし、こちらも昨年から継続して進めている業務が一つあります。それは、昨年度さくら中核事業の助成を受けて実施された「バルカン半島日本語サマーキャンプ」です。今、まさに今年度の実施に向けて準備を進めているところなのですが、昨年同様バルカン諸国の大学から先生方と学生さんたちに参加していただき、日本語の学習の機会だけでなく各国との交流の場としたいと思っています。そして、この業務でも大切なのは先生方との協力関係だと思います。特に私自身は初めての参加なのでわからないことも多く、助けていただく機会のほうが多い気もしていますが、それでもそれぞれが果たす役割をうまく分担し進めていければと思っています。

課題について

以上、現状とこれまでの活動について述べましたが、今後のブルガリアの日本語教育にとって大きな課題となっていることが二つ残っています。

東洋言語文化センターにて(JFBP岩永所長訪問の際、先生方と)の写真
東洋言語文化センターにて(JFBP岩永所長訪問の際、先生方と)

そのひとつは、ブルガリア全体の今後の日本語教育発展のためのネットワークづくりです。ブルガリア自体はそれほど大きい国とは言えないと思いますが、日本語教育を行っている機関はソフィアを除けば点在しており、横のつながりが強いものだとは言い難いです。加えて、現状、ブルガリアには全国的な規模の日本語教育の組織がないため、相互の情報交換や知識の共有は十分であるとは言えません。将来的な日本語教育の「自立化」という点でも、これら機関の交流を作っていくことは大きな課題であると考えられます。

もう一つはこの国における将来の日本語教育・研究をどうするか、それを先生方と一緒に考えることです。ブルガリアにおいて日本語教育が開始されてから長い時間が経ちますが、日本語を学ぶ動機や目的は時代と共に変わりつつあります。タイトルにも掲げた「継続」という点で、今後この国においてどのような形で日本語教育を続けていくかを、ソフィア大学の先生方や他の機関の先生方と考えていきたいと思います。

上記のように大きく二つにわけて述べてきましたが、どちらにも共通するのは最初に取り上げた「継続」と「自立化」という点だと思います。専門家の仕事は一定期間だけで行うものなのではっきりとした結果が出にくいものだと個人的に思いますが、これまでの業務を引き継ぎ、発展しつつ続けていき、さらにそれを各国の先生方が自発的に進めていただくことで、いい結果が生まれ、世界各地の日本語教育は続いていくものだと思います。私自身が知識や経験の面で専門家としてまだまだな部分があるとは思いますが、そのような流れをサポートすることはできると思っています。今後も引き続き、様々な方々と協力しつつ業務に取り組んで行きたいと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Sofia University "St. Kliment Ohridski"
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ソフィア「聖クリメント・オフリドスキ」大学日本学専攻はブルガリアにおける日本語教育の最高峰である。専門家は週6コマの授業を担当し、学習者の更なる成長を目指すとともに、ティームティーチングや勉強会により、ネイティブ教師の日本語力や教授力の向上を目指している。そのほかに、カリキュラム・教材に関する助言、日本語教育ネットワーク構築のための支援も行っている。
所在地 CIEK, 79 Todor Alexandrov Blvd, Sofia 1303, Bulgaria
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名、指導助手:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
古典及び現代言語学部、東アジア言語文化学科、日本学専攻
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   一般講座:1968年
専攻:1990年
国際交流基金からの派遣開始年 1981年
コース種別
専攻
現地教授スタッフ
常勤:6名(うち邦人0名) 非常勤:5名(うち邦人0名)
学生の履修状況
履修者の内訳   1年生から4年生まで各10名から15名程度
学習の主な動機 日本語や日本文化に対する好奇心、日本への留学
卒業後の主な進路 日本・ブルガリア両大使館、ブルガリア外務省、一般企業、進学
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N4~N1程度
日本への留学人数 6名程度

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