世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) チェコにおける専門家の活動について(2002)

カレル大学
近藤正憲

 カレル大学は中欧最古の大学の一つで、学生たちもまじめでよく勉強します。日本学科で勉強している学生の多くは日本に文化的な憧れを持ってこの学科で勉強することを選んだ人たちです。話を聞いてみると「合気道を始めてから日本に興味を持った。」とか、「高校生の時、書道を習っていた。」という文化的な興味関心が日本語学習の動機になっていることに驚かされます。

 大学が日本語教育専門家に期待している役割は、当然のことながら大学教師としての役割だと思います。つまり学生に対する指導(毎日の授業とその評価)と進級や卒業における評価です。ひとたび授業をあてがわれたら、その評価や単位の認定は責任を持って自分ひとりでしなくてはいけません。それだけでも、とても重い責任を負っているということができます。

パソコンで情報を検索する学生の写真
パソコンで情報を検索する学生

 しかし、私は大学が期待している以外にも基金専門家がこの国でするべき仕事はあるような気がします。それは一言で言って、「日本を知ってもらうこと」だと思います。チェコにおける日本語教育は殆どが大学で行われていて、中等学校で行われているところは少なく、学習者も数人しかいないとの事です。大学以外では国立の言語学校、民間の語学学校が一般人向けの教育を施していますが、こちらも教育機関の数も学習者の数も少ないです。ですから日本語教育が広く一般に普及しているとは言えません。また日本についての情報もそれほど多くはありません。ですから日本語をはじめ、様々な日本文化を多くのチェコ人に知ってもらうことはとても大切なことだと思うのです。

 これまで私は大学での業務のほかに二つのことをしてきました。ひとつはチェコの日本人会や、チェコ日本友好協会、在チェコ日本大使館に働きかけて、在外公館にある日本映画の上映会をしてもらったことです。これは定期的な上映会活動として位置づけられ、今後も続く予定です。また学生のなかで興味を持つ人に、この企画の実務を手伝ってもらっています。

 もう一つは日本語教師の勉強会を昨年末から月一回のペースで行っています。この目的は日本語教師に勉強の機会を持ってもらうことと、新しい教師の候補者を学習者の中から発掘することです。

 チェコのみならず旧東欧諸国では知識人の給与が非常に低く抑えられており、医師と教師はその最たるものなのです。若者の間では医療や教育の分野の大学はあまり人気がありませんし、この分野に進んだ能力のある人たちさえも、機会を捉えては外国で仕事をしようとする傾向があります。これでは次世代を育てる教育者が国内で育ちません。日本語教師の仕事に金銭的な魅力を持たせることは現状では非常に難しいです。しかし、自分にとっての勉強になると考えてもらえば、教師の仕事も少しは魅力的に思えるのではないかと思います。そして自分が学んで人に教えることに魅力を感じる人たちに未来の日本語教育を担ってほしいと思っています。

 この勉強会には今のところまだ毎回2~3名しか集まりませんが、今後人数が少しずつでも増えていくよう努力したいと思います。

 私は学生たちの学ぶ心に火をつける人でありたいです。私の取り組みのどれかが彼らの向学心の発火点になればとてもうれしいです。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
カレル大学は、1348年に創設された中央ヨーロッパ最古の大学である。日本語学科は1948年に開設され、1987年にコメンスキー大学、1993年にパラツキー大学、1994年にマサリク大学、1998年に西ボヘミヤ大学経済学科大学院で日本語の授業が始まるまではチェコで日本語学科を有する唯一の大学だった。同大学は現在も優秀な日本研究者を輩出し、毎年100~150名程度の入学希望者がいる人気学科でもあり、チェコでの日本研究に対しての貢献は大きく、日本語教育の中心的役割を果たしている研究・教育機関である。専門家は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。
ロ.派遣先機関名称 カレル大学
Charles University
ハ.所在地 Celetna 20, 110 00, Praha 1, Czech Republic
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
カレル大学哲学部東洋学研究所日本学専攻
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   専攻:1948年
(2)専門家・青年教師派遣開始年 1991年
(ロ)コース種別
専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤4名(うち邦人0名)、非常勤3名(うち邦人2名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   各学年14名程度
(2) 学習の主な動機 日本への興味
(3) 卒業後の主な進路 人によって様々、美術館や博物館、また通訳、翻訳、ガイドなど
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
常用漢字が全部理解でき、日本人の書いた手紙を読解可能
(5) 日本への留学人数 各学年1~3名

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