世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) チェコにおける専門家の活動について(2004)

カレル大学
近藤正憲

カレル大学本部の張り出した窓の写真
カレル大学本部の張り出した窓

 中世の街並みが残るプラハにあるカレル大学は中欧最古の大学の一つです。学生たちもまじめでよく勉強します。日本学科で勉強している学生の多くは日本に文化的な憧れを持ってこの学科で勉強することを選んだ人たちです。話を聞いてみると「合気道をはじめてから日本に興味を持った。」とか、「高校生の時、書道を習っていた。」という文化的な興味関心が日本語学習の動機になっていることに驚かされます。また最近では旧西側のヨーロッパ諸国と同様、日本の漫画やアニメーションフィルムに強い関心を持っている人もいます。チェコは2004年の5月にEUに正式加盟しました。ヨーロッパ域内の交流がさらに活発になればこのような傾向はますます強くなると思います。

 チェコに身を置いて感じることは、学習者のなかで経済的な利益を求めて日本語を学んでいる人がそれほど多くないということです。以前チェコの学習者に対するアンケートを取ってみて驚いたのが、現在日本語を勉強している人の80%近くが「文化的興味関心」や、「言語としての日本語」に興味を持もっていることを学習の理由に挙げたことです。これに対して「現在の仕事上必要」と答えた人はわずか8.9%、「(現在は関係ないが)将来の就職に有益だから」と答えた人も70%で、「文化的興味関心」を理由に挙げる人よりも低い割合にとどまっています。(以上は複数回答可です。)

 この結果をどのように見るべきなのでしょうか。多少の日本語能力では就職に結びつかないということも事実ですが、それ以上にチェコ人が持つ言語学習に対する価値観がこの結果に現れているように思われます。つまり彼らが日本語に求めているのは単にコミュニケーションできる能力なのではなく、知的好奇心を満足させる何かなのではないかと私は思うのです。経済的な必要性やメリットもないのに苦労して外国語を学ぶなど、日本人にはなかなか理解しにくいかもしれないのですが、チェコで日本語を教える場合、学習者の多くがこのような考え方を持っていることは知っておいたほうがいい事実だと思います。

日本語教師勉強会の参加者の写真
日本語教師勉強会の参加者

 チェコ人の学習者は、地道な努力を積み重ねることのできる人たちが多いと思います。今日本語を学んでいる学習者にはぜひ長く続けてほしいと思いますし、これから勉強したいと言う人たちが少しずつでも多くなってほしいと思います。そしてそのためには「日本人の魅力的な側面」を彼らに提示する努力をしつづける必要があるのではないでしょうか。

 さて、私は2001年の9月に着任し、大学の授業のほかに日本語教師対象の勉強会の実施、日本映画上映会の開催、スロヴァキアでの出張授業などを行ってきました。日本語教師勉強会に参加している先生たちの中から、最近この会を中心に日本語教師会を設立しようという動きが出てきました。今後の発展が楽しみです。

 私の任期も間もなく終わりますが、この国の人々にとって、日本語がいつまでも興味を引く言語でありつづけ、日本人がいつまでも魅力的な輝きのある人々でありつづけることを私は願ってやみません。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
カレル大学は、1348年に創設された中央ヨーロッパ最古の大学である。日本語学科は1948年に開設され、1987年にコメンスキー大学(現スロヴァキア)、1993年にパラツキー大学に日本学科ができるまでは、当国で日本語学科を有する唯一の大学だった。カレル大学は現在も優秀な日本研究者を輩出し、毎年100~150名程度の入学希望者がいる人気学科でもあり、チェコでの日本研究に対しての貢献は大きく、日本語教育の中心的役割を果たしている研究・教育機関である。専門家は日本語講座での日本語教授、単位認定を行う。求められればカリキュラム・教材作成に対する助言を行い、現地教師の育成を行う。
ロ.派遣先機関名称 カレル大学
Charles University
ハ.所在地 Celetna 20, 110 00, Praha 1, Czech Republic
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
カレル大学哲学部東洋学研究所日本学専攻
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1948年
(2)専門家・青年教師派遣開始年 1991年
(ロ)コース種別
専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤5名(うち邦人専門家1名)、非常勤2名(うち邦人2名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   2年18名、4年14名、5年15名、留年18名 博士課程8名
(2) 学習の主な動機 日本の伝統文化や文学・歴史に高い関心。1年生はアニメに関心も。
(3) 卒業後の主な進路 通訳、翻訳、ガイドのほか、日系企業や官庁に勤めるものもいる。
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級と1級の間ぐらい。
(5) 日本への留学人数 私費を含めて半数程度

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