世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) より良い授業を目指して:カレル大学日本研究学科での取り組み

カレル大学
柴倉映子

 チェコの日本語教育の現場に仲間入りしてまもなく2年になります。ここでの業務は、派遣先機関での日本語の授業、カリキュラム・教材作成に対するサポート、また、チェコ全体の日本語教育関係者のネットワーク作り、日本語関連行事への協力など多岐にわたります。その中で今回は、派遣先機関であるカレル大学での授業についてご紹介します。

 2005年10月、カレル大学哲学部東アジア研究所日本研究学科では、3年ぶりに新入生を受け入れました。大学の制度改革により3年間で学士号を取得する新システムに変更して初めての新入生です。20名を超える新1年生が入学し、毎日にぎやかに授業が行われています。

ティームティーチングの試み:三人の教師で力を合わせて

カレル大学日本研究学科1年の学生たちの写真
カレル大学日本研究学科1年の学生たち

 当学科では、日本研究の専門家の養成を目指し、1・2年生の段階でその後の日本研究に必要な基礎的な日本語力を身につけることが求められています。日本語のネイティブスピーカーである日本人教師は、日本語の運用能力を高めるための授業を担当しています。

 従来、日本語の初級の授業でも、それぞれの授業の担当教師が個別に教材を選びそれぞれの進度で授業を行っていましたが、3年学士制の新システムに移行したのを機に今年度から、1年生の初級の授業で新しい方法を試みています。文法説明担当のチェコ人教師、運用練習担当の日本人教師(筆者)、漢字練習担当の日本人教師の三者がティームを組み、一つの主教材を軸にして互いに連携して授業を組み立てていこうというものです。

 大学の授業時間数は決して多くはなく、日本語学習に割り当てられる時間数も限られています。学生たちの母語を用いて説明することができるチェコ人教師と日本語のネイティブスピーカーである日本人教師が力を合わせ、互いに利点を生かし且つ足りない部分を補い合うことで、より大きな効果が生まれることを期待しています。限られた時間数の中で学生たちの日本語学習が少しでも効率よく進むよう、三人の教師が絶えずきめ細かく連絡を取り合い、進度や内容を調整しながら進めています。

 新たに始めたこのティームティーチングも1年目の授業が終わる時期です。1年を振り返って反省点・改善点も見えてきました。2年目に向けて現地の先生方と率直な意見交換を重ね、より充実した進め方を摸索していきたいと思っています。

特別授業の企画:大学の外の方のお力をお借りして

できあがった作品を手に書道の先生と記念撮影の写真
できあがった作品を手に書道の先生と記念撮影

 学生たちは、日本語の学習と同時に日本の文化にも大きな関心を寄せています。先日は、プラハで書道を教えていらっしゃる書の専門家お二人にお越しいただき、「かなを美しく書く練習」の特別授業を開きました。

 一字一字をしっかり練習したあと、最後に古典文学の先生に教えていただいた和歌を和紙にかなで書きました。学生たちは皆、真剣な眼差しで一つ一つのかなを眺め、丁寧に鉛筆を動かしていました。通常の日本語の授業とは一味違った時間で、書の先生方とのやりとりを楽しむとともに、普段の日本語学習でなにげなく書いている文字をもう一度見つめ直すいい機会になったようです。

 これからも、様々な方々とのネットワークを生かして、「教室」と「教室の外」をつなぐ場をできるだけ多く盛り込んでいけたらと思います。

オプション授業の実施:学生たちのニーズを探りながら

 学生たちの中には日本に留学する人や将来日本語でレポートや論文を書く機会を持つ人もいます。そのような時に少しでも役に立てばと思い、「日本語でレポートを書く練習」の授業を続けています。これは本来のカリキュラムにはないオプションの授業で、在籍学年に関係なく希望者のみが参加するものですが、受講している学生たちは皆熱心に取り組んでいます。

 通常のカリキュラム内の授業の中で十分にできていない部分はないか、他に必要なことはどんなことか、その時その時の学生たちのニーズを探り柔軟に対応していくよう心がけています。

 秋からは、また新しい年度が始まります。現地の先生方・学生たちと共に、より魅力的な学科作りに貢献できるよう、精一杯取り組んでいきたいと思っています。より良い授業を目指して楽しい試行錯誤が続きます。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
チェコにおいて日本語・日本研究専攻の学科を有する2大学のうちのひとつであり、同国の日本研究・日本語教育の中心的な役割を担っている。日本研究の専門家の養成を目指し、日本語だけでなく日本の社会・経済・歴史・文学について幅広い知識を身につけるための教育が行われている。専門家は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言を行う。同時に、他の教育機関の日本語教師への協力、日本語弁論大会等日本語関連行事への協力、日本語教育関係者のネットワーク作りも行う。
ロ.派遣先機関名称 カレル大学
Charles University, Prague
ハ.所在地 Celetná 20, 116 42, Praha 1, Czech Republic
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
カレル大学哲学部東アジア研究所日本学専攻(通称:日本研究学科)
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1947年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1991年
(ロ)コース種別
専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤4名(うち邦人0名) 非常勤1名(邦人)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   1年:25名 4年:17名 留年:22名 博士課程:10名
(2) 学習の主な動機 日本の伝統文化や文学・歴史への関心、日本語に対する興味、日本のアニメへの関心など
(3) 卒業後の主な進路 通訳、翻訳、ガイド、日本語教師、日系企業に就職など
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級~1級程度
(5) 日本への留学人数 短期も含め現在11名

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