世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) チェコの日本語教育を支えるネットワーク

カレル大学
柴倉映子

 チェコの日本語教育に携わって3年目、ここでの仕事は、日本語の授業の実施、カリキュラム・教材に関する助言をはじめとする派遣先(カレル大学日本研究学科)における業務と、チェコの日本語教育全体に関するアドバイザーとしての役割の二つに大きく分けられますが、そのどちらも様々な人々との協力の中で進んでいます。今回は、チェコの日本語教育・日本語学習を取り巻くネットワークについて、日本語教育に携わる人たちのつながり、学習者とチェコ在住の日本の方々とのつながりといった二つの面からご紹介します。

チェコ日本語教師会の活動

教師会立ち上げ記念ワークショップの写真
教師会立ち上げ記念ワークショップ

 ここ数年、日本語教師たちが集まって毎月1回「日本語教育勉強会」(以下、「勉強会」とする)を開き、教材を共同で作成したり、授業のアイディアを紹介し合ったり、日本語弁論大会の相談をしたりしてきました。これらの活動を通して築き上げられてきた絆を基盤にして、2007年1月、「チェコ日本語教師会」(以下、「教師会」とする)が誕生しました。

 教師会では、これまで勉強会の他にも、メーリングリストを通じて情報交換・意見交換を行ったり、日本語能力試験模擬試験を実施したりしています。発足直後の2月には、東京国際大学の川村よし子先生にプラハにお越しいただき、教師会立ち上げ記念のワークショップを開きました。インターネットを活用した授業や漢字の教え方について貴重なお話を伺い、参加した教師たちにとって有意義な学びの場となりました。

 また、チェコでは毎年日本語弁論大会が行われていますが、大会の主催機関(日本大使館、日本人会、チェコ日本友好協会)が集まってつくる大会実行委員会に、今年から教師会も正式に加わりました。大会プログラムの検討や審査基準の整備のほか、周辺地域との連携の新たな取り組みも始まっています。その一つとして、今年は久しぶりに隣国スロバキアの大学からの招待参加の学生もスピーチを披露し、チェコで日本語を学ぶ人たちとの交流が実現しました。

 さらに、教師会では、有志のメンバーで教材作成グループをつくり、チェコの日本語学習者に役立つ教材の開発を進めています。現在は、学習機関に通わず独学で勉強する人にも使ってもらえるようなひらがな教材を手がけており、今秋の完成を目指して会合を重ね、作業を続けています。教材作成グループのメンバーだけでなく、絵が得意でイラストを描いてくれる人、ひらがなの手書きのお手本を書いてくれる書道の先生、チェコ語の説明部分を担当してくれるチェコ人教師、パソコン上の作業を手伝ってくれる人など、様々な人々がそれぞれの得意分野を生かして作成作業に加わってくださっています。

 数年前、数人の教師の小さな集まりからスタートした勉強会が、少しずつその輪を広げ、いよいよ教師会としての歩みを始めたことをたいへん嬉しく思っています。チェコの教師会は、実際に日本語を教えている教師だけでなく、日本語・日本語教育に興味のある方々に広く参加していただける組織となることを目指しています。誕生したばかりの“若い”教師会ですが、次はどんな取り組みが始まるか楽しみです。現地の方々がその輪の中心となって活躍する教師会を目標に、的確なサポートを続けていきたいと思っています。

学生とチェコに滞在する日本の人々との交流

お茶室訪問:日本の人たちとともに真剣な表情で説明を聞く学生たちの写真
お茶室訪問:日本の人たちとともに真剣な表情で説明を聞く学生たち

 カレル大学日本研究学科の日本語の授業でも、様々な組織・人々の協力を得て、今年多くの交流の機会が実現しました。2月には、2年生の学生がプラハ日本人学校の保護者有志の方々との交流会に参加させていただき、テーマごとにいくつかのグループに分かれ、たっぷりと日本語で話す時間を持ちました。休憩時間には、保護者の方々が下準備をしてくださった材料を用いて学生たちが巻き寿司作りに挑戦するコーナーが設けられ、楽しい交流行事となりました。続いて3月には、同じく2年生の学生がプラハにある茶道の教室を訪問し、お茶室で手作りの和菓子とお茶をいただく体験をしました。お抹茶は初めてという学生もおり、貴重な経験になったようです。4月には、昨年同様1年生のクラスで、プラハで書道を教えていらっしゃる先生をお招きし、「かなを美しく書く練習」と題して、ひらがなの書き方の指導をしていただきました。そして5月には、2年生のクラスで、学習したばかりの敬語の練習に、プラハ在住の日本人の方々がお手伝いに来てくださり、にぎやかな会話の場が繰り広げられました。

 また、チェコ日本人会のご厚意で、2年生の学生の作文を同会の会報に載せていただく機会を得ました。学生たちが<楽しいチェコ紹介>ということでそれぞれに工夫を凝らして書いた作文が4か月にわたって連載されました。授業の中の「練習」としてだけの作文ではなく、はっきりと読み手を想定して書き、できあがったものを大勢の方に読んでいただくことができるという点で、会報に掲載していただけたことはたいへん有難いことでした。

 このように、チェコの日本語教育は、それに携わる人たちのネットワークとチェコにいらっしゃる多くの方々のあたたかい眼差しに支えられています。この〈協力の輪〉に感謝し、〈人とのつながり〉を大切に、残りの任期の間、チェコの日本語教育の発展に力を尽くしたいと思います。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
チェコにおいて日本語・日本研究専攻の学科を有する2大学のうちのひとつであり、同国の日本研究・日本語教育の中心的な役割を担っている。日本研究の専門家の育成を目指し、日本語だけでなく日本の社会・経済・歴史・文学について幅広い知識を身につけるための教育が行われている。日本語教育専門家は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言を行う。同時に、他の教育機関の日本語教師への協力、日本語弁論大会等日本語関連行事への協力、日本語教育関係者のネットワーク作りも行う。
ロ.派遣先機関名称 カレル大学
Charles University, Prague
ハ.所在地 Celetná 20, 116 42, Praha 1, Czech Republic
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
カレル大学哲学部東アジア研究所日本学専攻(通称:日本研究学科)
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1947年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1991年
(ロ)コース種別
専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤4名(うち邦人0名) 非常勤1名(邦人)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   1年:25 2年:24 5年:14 留年:23 博士課程:9
(2) 学習の主な動機 日本の伝統文化や文学・歴史への関心、日本語に対する興味、日本のアニメへの関心など
(3) 卒業後の主な進路 通訳、翻訳、ガイド、日本語教師、日系企業に就職など
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級~1級程度
(5) 日本への留学人数 短期も含め現在9名

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