世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) チェコの地方における日本語教育 ―日本センター・ブルノでの授業と日本語能力試験模擬試験―

カレル大学
三上 京子

 チェコには現在約800余名の日本語学習者がいて、大学や民間の語学学校、一部の中等教育機関などで日本語を学んでいます。日本語学習者や機関の多くは首都プラハやその近郊に集中していますが、ここ数年チェコ各地でも日本語への興味・関心がますます高まってきており、地方での日本語教育もさらに充実してきました。

日本センター・ブルノでの授業

 チェコ第2の地方都市であるブルノでは、2008年10月にマサリク大学に日本学科が設立され、これで日本語・日本学を専攻できる高等教育機関は、プラハのカレル大学、オロモウツのパラツキー大学とあわせて3か所になりました。また、民間の日本語教育機関として、プラハのチェコ・日本友好協会の日本語クラス(1998年開講)に次ぐ規模を誇るのが、日本センター・ブルノの日本語クラスです。

 日本センター・ブルノ(以下、日本センター)は、南モラビア県、ブルノ市、在モラヴィア日系企業各社、チェコインベスト(チェコ投資庁)の協賛による運営のもと、2007年秋に設立されました。今年で2年目に入り、昨年10月から始まった新学期には、80名以上が日本語クラスを受講しています。また、日本語の授業以外に書道の授業も行っており、日本語クラスとあわせると100名近い受講生がいるとのことです。日本語クラスの受講生は、以前は高校生・大学生が多かったそうですが、この2,3年は日系企業に入社して間もない社会人の参加も多くみられるようになりました。

日本センター・ブルノでの授業の写真
日本センター・ブルノでの授業

 最初の写真は日本センターでの授業の様子で、手前にいるのが日本センター所長の平山氏です。この日の授業は、カタカナのタ行とそれを使ったカタカナ語の導入でした。ひらがなやカタカナ学習のための教材は、平山氏が作成したオリジナルのテキストを使用しています。日本語クラスは、この写真のように少人数のグループでの授業がほとんどで、非常に丁寧できめ細かい指導がされています。また、日本センターでは、「イラスト・コンクール」や「習字コンテスト」、日本語学習者のための「作文コンテスト」、「日本留学体験記発表会」など、多くの日本語・日本関係のイベントを開催しており、ブルノ周辺のモラビア地方における日本語・日本文化発信の中心として今後もその活躍が大いに期待されます。

日本語能力試験模擬試験

 ブルノではまた、毎年秋に「日本語能力試験模擬試験」(以下、模擬試験)を行っています。チェコではまだ「日本語能力試験」(以下、本試験)が実施されておらず、本試験の受験希望者はブダペスト、ベルリンなどに行かなければなりません。そのため学習者からは、ぜひチェコでも本試験を実施してほしいという要望が毎年出されます。そこで、本試験をより多くの学習者に知ってもらうこと、アンケートにより学習者の受験に対する希望や動向を知ること、本試験実施に向けてチェコ日本語教師会(以下、教師会)のネットワークを強化すること、また12月の本試験の前に学習者が自分の実力をはかれるようにすること、などの目的で模擬試験を実施しています。

日本語能力試験模擬試験 会場風景の写真
日本語能力試験模擬試験 会場風景

 2番目の写真は3級の試験会場風景で、教壇に立って説明しているのはオロモウツ・パラツキー大学の渡邉専任講師です。会場は、ブルノにあるマサリク大学の教室を借りています。模擬試験を首都のプラハではなくブルノで行うのにはいくつかの理由があります。模擬試験実施の事務局となる日本センター・ブルノがあること、多くの日本語専攻の学生を擁するパラツキー大学があるオロモウツから近距離であること、将来的に本試験を実施する際、ブルノから距離的に近い隣国のスロバキアやオーストリアからの受験者が見込めること等です。

 模擬試験は、第1回目の2005年には4級から1級まで合計28名が受験しました。その後、毎年受験者数が増え続け、2008年11月には71名が受験しました。模擬試験は、日本センター・ブルノが中心となり、教師会会員や在チェコ日本大使館広報文化センターの協力も得て実施しています。模擬試験実施のための準備、ポスター作製、申込み受付や当日の監督、試験の採点などのノウハウも回を重ねるごとに蓄積されてきており、教師会では、2010年度からの本試験実施をめざしたいと考えています。

 チェコの地方都市としては、ブルノ、オロモウツのほかに、オストラヴァにあるオストラヴァ大学哲学部エキゾチック言語コースで選択科目として日本語の授業が行われています。またオパヴァのギムナジウムでは、一般の人にも公開されている日本語クラスがあり、高校生と社会人が机を並べて日本語を学習しています。

 日本語教育専門家にとって、派遣先機関のカレル大学で授業を担当するだけでなく、このような地方での日本語教育の現場に出向き、施設や授業見学、先生方との懇談、また教材や教授法についてのアドバイスなど、様々な形での支援をしていくことも大切な仕事です。これからも、チェコの地方における日本語教育機関、日本語学習者を支援し、チェコ全体の日本語教育のさらなる発展を期したいと思います。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
チェコにおいて日本語・日本研究専攻の学科をもつ3大学のうちの一つであり、同国の日本研究・日本語教育の中心的な役割を担っている。日本研究の専門家の育成を目指し、日本語だけでなく日本の社会・経済・歴史・文学・思想史等について幅広い知識を身につけるための教育が行われている。日本語教育専門家は日本語教授、カリキュラム・教材作成への助言を行うほか、日本語教師会勉強会の開催、他の教育機関の日本語教師への協力・助言、日本語弁論大会等日本語関連行事への協力、また日本語教育関係者のネットワーク作りを業務とする。
ロ.派遣先機関名称 カレル大学
Charles University in Prgue
ハ.所在地 Nam. Jana palach 2, Praha 1, 116 38 Czech Republic
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
カレル大学哲学部東アジア研究所日本学専攻(通称:日本研究学科)
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1947年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1991年
(ロ)コース種別
専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤4名(うち邦人0名)、非常勤3名(うち邦人0名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   学士課程:56名、修士課程:6名
(2) 学習の主な動機 日本語、日本の伝統文化や文学・歴史への関心、留学・就職のため
(3) 卒業後の主な進路 日系企業就職、通訳・翻訳、ガイド、日本語教師など
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級~1級程度
(5) 日本への留学人数 短期も含め7名程度

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