世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)第40回を迎えたチェコ日本語弁論大会

カレル大学
栗原幸子

世界の多くの国と同様に、チェコでも毎年日本語弁論大会が開かれています。チェコの日本語弁論大会は、チェコスロバキア時代の1977年に始まり、2016年には第40回を迎えました。第40回というのは、教師会会員の調査によると、日本で1960年から開催されている「外国人のための日本語弁論大会」を除くと、世界の日本語弁論大会の中で最も歴史の長い日本語弁論大会の一つであるといえるようです。

チェコ日本語弁論大会は、在チェコ日本大使館、チェコ日本人会、チェコ日本友好協会、日本センター・ブルノ、チェコ日本語教師会の五者共催となっていますが、それ以外にも様々な方々の支援をいただいています。チェコ国内の様々な企業に協賛を受けていますし、今年は、プラハ市・京都市の姉妹都市提携20周年記念にあたることから、京都市にご協力いただき、優勝者には京都市内でのホームステイの機会が与えられることになりました。また当日の運営には、チェコ在住のボランティアの方々にもご協力をいただいています。

過去の大会を振り返って

弁論大会の準備・運営は、日本語専門家も一メンバーとして、その活動に関わっているチェコ日本語教師会が中心となっています。昨年のこちらのリポートでも書いていますが、第40回の記念大会を迎えるにあたり、教師会では弁論大会に何か特別な企画を組み入れたいと考えていました。教師会の月例会で話し合いを重ねた結果、長い歴史を振り返り、1989年のビロード革命以前の弁論大会の入賞者をゲストとして迎え、お話を伺うことになりました。

この特別企画として、1981年(第5回大会)の優勝者であるイヴァナ・イロトコヴァーさん、1988年(第12回大会)の優勝者であるイレナ・ホラーコヴァーさんに、弁論大会にいらしていただくことができました。お二人は、当時の国立プラハ言語学校で日本語を学んでいたクラスメートです。インタビュー形式でお話を伺ったのですが、大会の賞状、優勝賞品であった辞書を見せていただきながら、それぞれのスピーチのテーマや、弁論大会で優勝し、当時大変貴重品であった辞書を優勝賞品としてもらってうれしかったこと、弁論大会に出場したことがきっかけで日本人の友人と知り合ったというエピソードなどをお話しいただきました。お二人とも、ご専門は化学ですが、現在も日本とのつながりを持ち続け、イヴァナさんは今も日本語の学習を続けていらっしゃいますし、イレナさんも日本人のお友達との交流を続けているそうです。

イロトコヴァーさんとホラーコヴァーさんの画像
イロトコヴァーさんとホラーコヴァーさん

次に、ご自身も弁論大会での入賞経験がある、カレル大学哲学部のヤン・シーコラ日本研究科長から、日本研究の世界に入られたきっかけや、当時の日本語学習事情に関してお話しいただきました。大学での専攻を選ぶにあたり、当時すでにチェコ語に翻訳されていた「枕草子」や「徒然草」などの日本文学作品を読んで、日本・日本人に対する知的好奇心をかきたてられたことからこの世界に入っていったこと、プラハ言語学校での魅力的な授業の思い出、また当時の日本語学習と現在の状況との違いについてなど、大変興味深いお話を伺うことができました。この特別企画は、観客の方々からも大変好評で、これからも続けてほしいという声がありました。

当時の日本語学習事情について話すシーコラ日本研究科長の画像
当時の日本語学習事情について話すシーコラ日本研究科長

多様化する学習者

第40回大会では、初級、中級、上級の部合わせて19名の参加者がスピーチを行いました。社会の変化とともに、日本語教育、日本語学習の環境も変わってきていますし、学習者も多様化しています。現在では、学習機関に所属したり、個人教授につくこともなく、インターネットなどを利用して、自分自身で日本語を学んでいる独習者の数も増えています。今回、弁論大会上級の部と、作文コンテストの中上級の部の優勝者であるカミラ・ホラーコヴァーさんも独習者です。また、継承語として日本語を学ぶ学習者や、生涯学習として日本語を学ぶシニアの学習者もいます。

長い歴史を持つチェコ日本語弁論大会ですが、教師会では、伝統にこりかたまることなく、毎年弁論大会後に振り返りを行い、よりよい弁論大会のあり方を求めて、話し合いを続けています。日本語弁論大会が、これからもチェコで日本語を学ぶ学習者の意欲向上につながるものとなるよう努力を続けていきます。

(チェコ日本語弁論大会の様子は、チェコ日本語教師会のサイトからもご覧いただけます。)

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Charles University in Prague
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
チェコにおいて日本語・日本研究専攻の学科を持つ3大学のうちの一つであり、同国の日本研究・日本語教育の中心的な役割を担っている。日本研究の専門家の育成を目指し、日本語だけでなく日本の社会・経済・歴史・文学・思想史等について幅広い知識を身につけるための教育が行われている。日本語専門家は、日本語教授、カリキュラム・教材作成への助言を行うほか、日本語教師会勉強会の主催、他の教育機関の日本語教師への協力・助言、日本語弁論大会等日本語教育関連行事への協力、また日本語教育関係者のネットワーク作りを業務とする。
所在地 Nám. Jana Palacha 2, 116 38 Praha 1, Czech Republic
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
カレル大学哲学部東アジア研究所日本学専攻(通称 日本研究学科)
日本語講座の概要
沿革
  講座(業務)開始年 1947年
  国際交流基金からの派遣開始年 1991年
 
コース種別
  専攻
 
現地教授スタッフ
  常勤5名(うち邦人0名)、非常勤
学生の履修状況
  履修者の内訳 学士: 各学年15~20名程度
修士: 20名程度
  学習の主な動機 日本語、文学・歴史・日本社会など日本文化への関心、留学・就職のため
  卒業後の主な進路 日系企業就職、通訳・翻訳、研究留学、日本語教師など
  卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N2からN1程度
  日本への留学人数 短期も含め10名弱

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