世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ハンガリーの日本語教育アドバイザー(2003)

国際交流基金ブダペスト日本文化センター
日本語教育アドバイザー
齊藤眞美

ブダペスト日本文化センターの受付の写真
ブダペスト日本文化センターの受付

 ブダペスト日本文化センターは、国内だけではなく周辺諸国も対象に含む広域事務所として位置づけられています。この守備範囲の広さとは裏腹に、事務所自体は国際交流基金海外事務所の中で最も小さく、日本人スタッフは所長と日本語教育アドバイザーのみ、プラス現地スタッフ3名、計5名の事務所です。この、小さいながらも常にフル回転状態で奮闘しているブダペスト日本文化センターから、日本語教育に関する主たる業務をご紹介します。

教師会支援:正念場を向かえつつあるハンガリーにおける日本語教育

 ハンガリー日本語教師会(MJOT)は、2001年2月に中東欧地域における第1号の教師会として設立されました。そして翌2002年9月には、ヨーロッパ日本語教師会との共催で、「第7回ヨーロッパ日本語教育シンポジウム」を開催するという大仕事を成し遂げました。

MJOT主催 日本語教育セミナーの様子の写真
MJOT主催 日本語教育セミナーの様子

 その後も月に1度のセミナー開催、年に2度の講演会開催(ブダペスト日本文化センターとの共催)、語彙集(*)の改訂と、着実な活動を続けてきています。また、2003年11月に開催予定の第11回スピーチコンテストには、今回から主催者として運営にあたるなど、ハンガリーの日本語教育においてはもはや押しも押されもせぬ存在となりつつあります。。

 こうしたMJOTの活動に対し、アドバイザーはこれまで講演会での講師を務めたり、活動に対する助言を行ったりといった支援を行ってきましたが、今後は一層支援・協力を強化していくことが必要となります。というのは、2004年5月のハンガリーのEU加盟が近づく中、ハンガリーの言語教育政策の関心はEU諸国の言語に向き、日本語を含む非EU諸国の言語に対する逆風が既に吹きはじめつつあるからです。こうした中、いかにして日本語教育の立場を堅持し、継続・発展させていけるかは、MJOTが総力を挙げて取り組むべき課題となり、当然その活動をサポートしていくことはアドバイザーの重要な役割になります。

* 語彙集:初級日本語・ハンガリー語語彙集。高校の卒業試験に持ち込める日本語の語彙集が必要であるという認識に基づき、MJOTの分科会「高校卒業試験を考える会」の活動の中から誕生したもの。約2200語を収録。試用版(2002年4月完成)を改訂した今回第1版(2003年1月完成)。

機関訪問:現場に始まり現場に帰す

 教師会のような組織に対する支援の他に、個々の機関を訪問し、授業を見学したり面談を行ったりして、各機関の事情や問題点等現場の生の声を聞くことも、大切な業務の一つです。通常先生方が他の機関を訪問したり、授業を見学したりできる機会というのは、時間的にも距離的にも限られています。アドバイザーが訪問の結果得た情報やいくつかの機関に共通する問題点等を吸い上げ、関心のある先生方と一緒に改善策に取り組み、再び各現場へ結果を還元していくというサイクルを形成することは、現場に根ざした着実な支援活動の基本となります。

 現在、中等教育(日本の高校に相当)のカリキュラムの見直し・改善に向けた活動を始めたところです。これは、これまで行った機関訪問の結果、カリキュラムが形式的にはあっても機能していない、あるいは独自に計画は立てているもののこれでよいのかどうか不安を感じていながらも手つかずの状態が続いているといったケースが少なからず見られたことを受けて出てきた活動です。まずは有志の先生方が現状のカリキュラムを持ち寄り、情報を共有することから出発しています。今後は、問題点を話し合い、改善作業に入っていきます。その際、アドバイザーはそもそもカリキュラムとはどのようなものでどのような意味があるかといった意義付け、そしてハンガリーの中等教育においてはどのような可能性及び制限があるかといった情報の提供を行い、改善作業を支援していく考えです。

ネットワーク形成:貴重な資源を結びつける

 これまで行ったいくつかの周辺国・機関への訪問を通じ、中東欧地域では大変優秀な先生方が活躍されているということを改めて実感しています。日本語教育しかり、日本研究しかりです。ただしこうした先生方の教授及び研究活動が十分行えるような、教材や専門書等の物的リソースは残念ながら整っているとは言えません。引き続き教材及び図書寄贈等の支援の必要性を感じます。

 また人的交流も、特に中東欧地域間の日本語教育関係者間となるとまだ「極めて希」であると言わざるを得ません。豊富な資源が残念ながらまだ点在しているような状況に映ります。これらの点を何とか結びつける機会は提供できないものか。こうした発想を基に、この夏、第1回「中東欧日本語教育研修会」をブダペスト日本文化センターで開催する予定です。これは、中東欧諸国の日本語教師の方々をブダペスト日本文化センターにお招きし、当地域における日本語教育関係者間のネットワーク形成及び日本語教育の質的向上を目指して行うものです。この研修会は、国際交流基金中東欧派遣日本語教育専門家(チェコ、ブルガリア、ポーランド、ルーマニア、ハンガリー)が中心となって企画・実施に当たり、こうした活動を通じて専門家間のネットワーク強化も図れることが期待されます。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
 ブダペスト日本文化センターは、ハンガリーだけではなく周辺の中東欧地域も活動範囲とする広域事務所として位置づけられている。アドバイザーのハンガリー国内での主な業務には、日本語教育機関の調査・情報収集及びその公開、日本語教育機関訪問や授業見学と教師へのフィードバック、教師会の支援、日本及び日本語教育関連の講演や現場教師を対象とした研修会の開催等がある。国外においては定期的に周辺国(旧ユーゴスラビア諸国等)に出張し、教員指導や情報収集・提供を行っている。以上の活動を通じ、ハンガリー国内及び周辺地域間のネットワーク形成を目指している。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation Budapest Office
ハ.所在地 Horvat u. 14-24, 1027 Budapest II, Hungary
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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