世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ハンガリーの日本語教育アドバイザー(2005)

国際交流基金ブダペスト日本文化センター
齊藤眞美

 国際交流基金ブダペスト日本文化センター(以下JFBPと略す)は、国内だけではなく周辺諸国も対象に含む広域事務所として位置づけられています。このため、日本語教育アドバイザーの活動も、ハンガリー国内はもとより周辺の国々にも及びます。以下、この1年に行った主な活動を、広域アドバイザーとしての仕事、ハンガリー国内の仕事に分けてご紹介します。

広域アドバイザー:地域のネットワーク構築を目指して

広域アドバイザーの活動範囲の地図

1:ソフィア(ブルガリア)2004年4月
スピーチコンテスト(スピーカーに対する質問)
2:リヨン(フランス)2004年8月
第9回ヨーロッパ日本語教育シンポジウム参加・発表
3:タリン(エストニア)2005年1月
バルト三国セミナー(講師)
4:ウィーン(オーストリア)2005年2月
オーストラリア日本語教師会セミナー(講師)
5:ブカレスト(ルーマニア)2005年3月
スピーチコンテスト(スピーカーに対する質問、審査員)セミナー(講師)
6:ザクレブ(クロアチア)2005年4月
スピーチコンテスト(スピーカーに対する質問、審査員)

 地図をご覧ください。中央の緑の部分がハンガリーです。現在、アドバイザーの広域活動は、担当エリアとしているハンガリーの周辺8カ国(茶部分)を中心に行われています。2000年にアドバイザー派遣が開始されて以来、担当エリア全ての国を訪れています。地図の右横の1から6(地図中の番号に対応)は、この1年、2004年4月以降に出張した場所と活動内容です。

 アドバイザーが出張していくのとは反対に、各国から日本語教育関係者を招いて開催している研修会と会議があります。

中東欧日本語教育研修会

 2004年7月28日~30日の3日間、前年に引き続き「第2回中東欧日本語教育研修会」を、JFBPで開催しました。研修会にはスロベニア、セルビア・モンテネグロ、チェコ、ハンガリー、ポーランド、ブルガリア、ルーマニアの7カ国から、高等教育機関で日本語教育に携わっていらっしゃる先生方9名(日本語母語話者2名、日本語非母語話者7名)が参加され、各機関の日本語教育の状況や直面する問題点等に関する情報交換が行われた他、今回初めて各参加者による研究・実践報告もありました。今後も各国の先生方が、研究・実践活動を通じてネットワークを有効に促進していくことが期待されます。また今回は、特別講師として日本よりお招きした甲斐睦朗先生(前国立国語研究所長)が『語彙の研究と指導』のテーマで講義を担当してくださった他、研修会全日程に御参加くださり、全面的に御協力くださいました。

中東欧地域日本語教育専門家ネットワーク会議

 2004年2月26・27日に、平成16年度中東欧地域日本語教育専門家ネットワーク会議を開催しました。現在、国際交流基金から中東欧5カ国(地図中丸で囲んだ国々)の中核的日本語教育機関に専門家(合計5名)が派遣されています。会議の主な目的は、各専門家が任国の状況やそれぞれに抱える問題点を客観的に捉え、問題解決の方向を見出していくことです。会議では、EU加盟に伴う日本語教育現場の変化への対応、教師会のあり方やスピーチコンテストについて等々、白熱した情報・意見交換が行われました。会議が終了した後も、直面する問題について専門家間で活発なメールのやりとりが継続し、会議で形成されたネットワークが有効に活用されています。

中東欧地域日本語教育専門家の写真
中東欧地域日本語教育専門家

 中東欧地域は現在、EU加盟等に伴う変化に直面しています。こうした中、日本語教育関係者は国を超えたネットワークを形成し、情報を共有し、変化に対応していくことが求められます。これらに対する支援はアドバイザーにとっても重要な課題となります。

変化に直面するハンガリーの日本語教育に対する支援

 ハンガリーの日本語教育は、二つの新システム導入により、変化に直面することになります。

2005年:新高校卒業試験導入

 まず今年(2005年)5月に新高校卒業試験制度が導入されます。これにより、これまで別個に行われてきた高校の卒業試験と大学の入学試験が一本化されます。また、これまでは日本語既習者しか大学の日本学科に入学することができませんでしたが、新試験では日本学科入学に日本語の受験が義務づけられていないため、新年度から(2005年9月~)は日本語未習者と既習者との混在クラスに日本語教育が対応していかなければならない状況が生まれる可能性があります。試験制度だけではなく、試験そのものの内容も大きく変わります。これは日本語に限ったことではなく、各言語に共通したもので、CEFCommon European Framework of Reference for Languages)のレベル設定に基づきます。日本語試験の基準作成には、ハンガリー日本語教師会(MJOT)が中心となって取り組んでいます。

2006年:MA(5年制)からBA(3年制)+MA(2年制)への移行

 もう一つの変化は、大学の制度改革です。2006年9月から、現行の5年間の修士課程から、3年間の学士課程と2年間の修士課程とに移行する予定です。これに伴い、大学教育に於ける日本学・日本語教育の位置づけや内容、カリキュラム等の変更が必要となってきます。こうした変化に各関係者は適切に対応していく必要があります。

 では、以上のような変化に直面する関係者に対し、どのような支援が可能でしょうか。2005年5月20日に一つの試みとしてイベントを実施しました。「日本語・日本研究を志すひとのための道案内」です。目的は、日本語教育、日本学教育関係者が広く情報を共有すると同時に、将来日本語・日本研究を志す人たちに、必要な情報を提供することです。第1回目の内容は、ハンガリーの日本語教育・日本研究の概要(JFBPアドバイザー)、新高校卒業試験の概要(MJOT代表)、日本学科の概要(カーロリ・ガーシュパール大学、エォトヴェシ・ロラーンド大学両学科長)に続き、国費留学制度(在ハンガリー日本大使館担当書記官)、国際交流基金の取り組み(JFBP所長)の発表でした。予想を上回る70名程の参加があり、発表後の自由質問時間には、各発表者のブースで熱心に遅くまで質問する姿が見られました。

道案内:発表の様子と参加者の写真
道案内:発表の様子と参加者

 今後もハンガリー全体の日本語教育を視野に入れ、状況に応じたイベントの開催等を通じ、関係者への情報と意見交換の機会の提供に務めていきたいと考えています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ブダペスト日本文化センターは、ハンガリーだけではなく周辺の中東欧地域も活動範囲とする広域事務所として位置づけられている。アドバイザーのハンガリー国内での主な業務には、日本語教育事情の把握(機関調査や訪問による)、現場支援(面談や授業見学による)、教師会支援、各種勉強会での指導、講演会等イベントの企画・実施がある。国外においては、国内同様現場支援の他、スピーチコンテストへの参加支援、講義・講演等を行い、情報提供と各国の事情把握に努めている。また、「中東欧日本語教育研修会」を企画・実施し、当地域における日本語教育の質的向上と地域間のネットワーク形成を目指している。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation, Budapest
ハ.所在地 Horvát u. 14-24, 1027 Budapest II, Hungary
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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