世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 3人います

国際交流基金ブダペスト日本文化センター
福島青史 柳坪幸佳 角田依子

 国際交流基金ブダペスト日本文化センター(以下、JFBP)には日本語教育専門家(以下、専門家)、ジュニア専門家、日本語教育指導助手の三人が派遣され、この三人が事務所の一室で、毎日それぞれの仕事をカタカタとやっています。壁にはプロジェクトの進行表が貼られ、机の上には締切を待つ書類が雑然と重なり、全く華やかさはありませんが、ある意味リアルな現場でこのレポートを書いています。

外の仕事

 先ずは、福島が専門家の仕事について書きます。

 ブダペストの専門家は主に「外の仕事」をしています。JFBPは広域事務所で担当地域はポーランドチェコ、スロバキア、オーストリア、ルーマニア、スロベニア、クロアチア、セルビア、モンテネグロ、コソボ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マケドニア、ブルガリアの13カ国とハンガリーです。このうち下線の四カ国には専門家が派遣されていますので、できるだけ専門家のいない国に出向くようにしています。今までオーストリア、スロバキア、スロベニア、クロアチア、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ポーランドに赴き、研修会の実施や共同イベントの相談をしました。

「中東欧日本語教育ネットワーク会議」の様子
「中東欧日本語教育ネットワーク会議」
全体写真

 もう一つ、「外の仕事」として国際会議やシンポジウム、研修会の実施があります。現在、日本ハンガリー協力フォーラム(以下、フォーラム)の研修事業を担当しており、ハンガリー内外から講師を招聘したり、参加者を募ったりしています。2008年度は「ハンガリー日本語教育シンポジウム」「中東欧日本語教育ネットワーク会議」を実施しました。内容詳細についてはJFBPHPをご参照ください。

 JFBPの担当地域は14カ国と書きましたが、ハンガリーからはどの国に行くにも飛行機なら2時間もかかりませんし、鉄道でも夜行で一晩ほどの距離です。2007年から2008年にかけて東欧地域の一部でもシェンゲン協定の実施が始まり、国境を越えた移動も格段に自由になりました。こんな時代に国境にとらわれない連携の方法を模索するには、人と人との個人的な関係から、各国教師会、また教師会間の連携まで、大小のネットワークが有機的に結合する必要があると思います。「外の仕事」の専門家はそんなネットワークの仕掛けを作っています。

中の仕事

 次に、ジュニア専門家の柳坪が事務所における「中の仕事」についてお話します。いろいろな業務がありますが、今回は日本語を学習している学習者のことを中心にご紹介したいと思います。

 JFBPでは、「日本語を勉強したい」というハンガリーの人々のために一般講座を開講しています。入門レベルから日本語能力試験2級取得者、日本滞在経験者まで、多様な受講生が在籍しています。「アニメがすき」「ドラマがすき」「日本の武道をやっている」、10代、20代を中心とした彼らは、純粋に日本が好き、日本語が好き、夢中で勉強してはいるけれど別に進学や就職に関係するわけではないし、日本人と会う機会もないという学習者が大多数です。

講座の様子
自分たちで漢字プリントをつくってみました

 講座ではそれぞれの担当講師を中心に限られた環境を最大限に活用して、日本語をどのように生き生きしたものにするか日々授業の中で試みています。学習者が日本文化について自分の好きなテーマ(「日本の妖怪」など!)でプレゼンテーションをするクラスがありました。習い始めたばかりの日本語で基金の施設を紹介するクラスがありました。敬語の練習として、正座して三つ指ついて自己紹介をするクラスもありました。それから、日本人にインタビューをして新聞をつくるクラスあり、ハンガリーに来たばかりの報告者に「ハンガリーのカードゲームを紹介したい」というクラスあり。ついには、「自分たちで使う漢字教材を自分たちでつくってみよう」と、分担を決めて漢字シートをつくりはじめたクラスまで出たのには驚かされました。最近は、「日本語の教え方を勉強したい」という方が講座にゲスト参加してくださることも増えてきましたが、学習を進めていくにつれ、ゲストに対しても物怖じすることなくどんどん話しかけるようになる学習者たちと、彼らと熱心に関わっていく講師陣。その声に応えていくために、今講座では「何ができるようになるか」を重視したCan do statementsを日々の授業に取り入れはじめています。

 私にとって、初めて住む国ハンガリー。そこで知り合った、初めての学生たちと先生方。勉強会の主催や現場訪問などを通じて、外の先生にお会いする機会もいろいろあります。そんな中で、最近よく考えるのが、「異文化を知ることは、自分を知ること、気づくこと」。ふりかえってみれば、たしかに新しい環境での日々の仕事や先生方とのやりとりの中で、気づかされること、考えさせられることがたくさんあります。そしてまた、それがハンガリーにおいて自分はどんな仕事ができるのかを試行錯誤する日々にもつながっているのです。

3人がかりの仕事

 最後に、指導助手の角田が専門家、ジュニア専門家の3人がかりの大仕事「教材作成」についてご紹介いたします。

 フォーラム事業の1つである「ハンガリー人のための教材作成」は、現在、基金メンバー4名(専門家、ジュニア専門家、指導助手に加え、日本語教育現地担当スタッフ)とハンガリー日本語教師会(MJOT)のメンバー12名、総勢16名が関わっている大きなプロジェクトです。この教科書が、ハンガリーと日本をつなぐ重要な「かけはし」となるよう、全員で心をこめて作っています。来年、このコーナーでも教科書のご紹介ができるよう、がんばりたいと思います。出来上がりをお楽しみに!

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ブダペスト日本文化センターはハンガリーを含む周辺中東欧地域を活動範囲とした広域事務所として位置付けられている。
日本語教育アドバイザーの業務内容は日本語教師をはじめとする日本語教育関係者からの相談に対する支援、日本語教育関係者とのネットワーク作り、スピーチコンテスト等日本語関連行事への支援、日本語教育関連情報の収集と提供、勉強会、研修会などの企画および実施、機関を訪問し授業見学および問題点に対する支援などである。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation, Budapest
ハ.所在地 1062 Budapest, Aradi u. 8-10. Hungary
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語専門家1名、ジュニア専門家1名 日本語教育指導助手1名 計3名
アドバイザー派遣開始年 2000年

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