世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 新しい日本語学習に向けてのハンガリーでの取り組み

新しい日本語学習に向けてのハンガリーでの取り組み

国際交流基金ブダペスト日本文化センター
境田徹 柳坪幸佳

 ブダペスト日本文化センター(以下JFBP)には、2名の日本語教育専門家(以下、専門家)が派遣されています。JFBPは、ハンガリーのほか中東欧13ヵ国(オーストリア、チェコ、スロバキア、スロヴェニア、ポーランド、ルーマニア、ブルガリア、クロアチア、セルビア、モンテネグロ、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、マケドニア、コソボ)をカバーする広域事務所として位置づけられていますが、専門家の業務は、これら中東欧地域の日本語教育支援・ネットワーク作りのほか、日本ーハンガリー協力フォーラム(以下、フォーラム)事業のプロジェクトとして行われているハンガリー国内向けの研修会およびハンガリーの日本語学習者のための教科書制作、JFBPで行われている一般を対象とした日本語講座の運営などが主なものです。それでは、具体的に幾つかの業務をご紹介しましょう。

中東欧日本語教育研修会2011

中東欧日本語教育研修会2011の写真
中東欧日本語教育研修会2011

 専門家は各国に赴いてセミナーで講演したり、日本語能力試験について説明会を開いたり、スピーチコンテストの審査に協力したりする活動によって、地域内・地域間のネットワーク作り、日本語教育支援にかかわっていますが、国内外から日本語教育関係者を招いて行う研修会の企画・開催も行っています。

 2011年2月19・20日には、ブダペストのGoethe Instituteを会場に、日本語の文字教育をテーマに「中東欧日本語教育研修会2011」を開催しました。中東欧11ヵ国20機関から参加した代表32名のほか、ハンガリーからの参加者を合わせると計60名が参加し、スペインに派遣されている熊野専門家、大阪大学の西口光一先生を招き、各機関からの発表、パネルディスカッション等を行いました。西口先生には、「漢字教育と書記日本語教育―大阪大学国際教育研究センターでのカリキュラム―」というテーマで講演していただき、移行期にある日本語教育の中で文字教育をどのように位置づけていったらよいのか、方向性を確認する機会となりました。ほとんどの機関が発表に参加したことで、各機関の具体的な実践から相互ネットワークを築くきっかけが得られたことは、今後につながるものだと思います。

新しい教材とその実践

日本-ハンガリー協力フォーラム作成 教科書『できる』色見本の写真
日本-ハンガリー協力フォーラム作成
教科書『できる』色見本

 JFBPでは2007年より現地の先生方のご協力をいただきつつ、課題遂行を取り入れた教科書「できる」の作成に取り組んでいます。角田・宮崎の二代にわたる指導助手と、編集や執筆に携わってくださったハンガリー日本語教師会の先生方を中心に、世界に散らばる複数のイラストレーター、写真家、校正者、声優さん、そして作業を支えてくださった事務担当の皆さんなど、多くの方の協力をもとに作成された教科書です。内容はCEFRCan-doを軸とし、異文化理解・相互理解やハンガリー語での解説にも力を入れたものとなっています。

 全2冊のうち1冊目は、2011年に出版を予定していますが、2010年9月からは、地元ブダペストのヴァーロシュマヨリ高校、ブダペスト商科大学、そしてJFBP日本語講座で本格的な試用を開始しました。その過程で開発されたさまざまな副教材や実践の共有を、フォーラム事業の一環として実施している日本語教育研修会や、JFBP日本語講座講師勉強会などの場を借りて行ってきました。新しい教科書とその実践を、課題遂行能力を考えるきっかけとして手にとっていただければと思っています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Budapest
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ブダペスト日本文化センターはハンガリーを含む周辺中東欧地域を活動範囲とした広域事務所として位置付けられている。日本から日本語上級専門家、日本語専門家2名が派遣されており、分担して業務に当たっている。業務内容は一般を対象とした日本語講座の運営をはじめ、勉強会・研修会などの企画および実施、日本語教育機関・教師への助言・支援、日本語教育関係者のネットワーキング、スピーチコンテスト等日本語関連行事への協力、日本語教育関連情報の収集と提供、機関訪問などのほか、日本ーハンガリー協力フォーラムのプロジェクトで行っているハンガリーの日本語学習者向けの教科書作成に、現地の先生方とともに取り組んでいる。
所在地 1062 Budapest Aradi u.8-10, Hungary
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名、専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2000年

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