世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 十年目を迎えたカザフスタンの日本語教育

アル・ファラビ名称カザフ民族大学
大庭佐知子

カザフ大学2年生の写真
カザフ大学2年生

 カザフ民族大学東洋学部日本語学科は、カザフスタンで初めて本格的な日本語教育が開始された草分け的存在である。今年、創設十年という節目の年を迎えたが、日本政府から教材、LL教室、ビデオルーム等が寄贈され、教師陣も充実してきており、約100名の学生たちは、比較的恵まれた環境で日本語を勉強している。

 教師のほとんどが卒業生で、第1期生の教師でもまだ20代半ばである。そのような若いスタッフのまとめ役、司令塔としての役割を、派遣専門家は担ってきた。教材の選定、コースデザインの整備、若手教師の育成、情報・図書管理のシステム化導入、在アルマティ日本人との連絡窓口となること等が、主な業務である。また、大学幹部との話し合いの場にも立ち会い、日本語学科のレベル向上のため、様々な提言を行っている。

 現在、卒業生の平均的な日本語のレベルは、日本語能力試験2級程度である。昨年度からアルマティで日本語能力試験が行われるようになり、能力試験合格が一つの大きな目標になっていることから、このレベルを引き上げる必要があると思われた。それでまず、中級教材に検討を加え、より多様な文型を早い段階から体系的に学習できるよう工夫してみた。また、これまでウィークポイントとなっていた聴解により力を入れるようにした。現在の2年生がパイロットケースであるが、この中から今年度の試験で2級に合格する学生が出るのではないかと期待している。

 日本語弁論大会も、この地において大きなイベントの一つとなっている。モスクワで行われる「CIS日本語弁論大会」、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギスが持ち回りで開催している「中央アジア日本語弁論大会」、そして「カザフスタン日本語弁論大会(中央アジア大会の予選も兼ねており、今年、第4回を迎えた)」と一年に大きな大会が三回もある。一年に二回は学内予選を行うわけであるが、上級生になるほど、「翻訳調ではない、日本語で考えながら書いた弁論原稿」を準備できるようになり、毎年、その成長に驚かされる。民族大生の弁論大会への意欲は大きく、これからも、弁論大会を視野に入れた作文・音声・会話指導を行っていきたいと考えている。

カザフ大学日本語学科教室での授業風景の写真
カザフ大学日本語学科教室での授業風景

 弁論指導時にいつも問題に感じるのが、カザフ語話者特有の強いアクセントである。体系的な音声指導を行うためにも、聴解をも含めた音声指導教材が必要であると思われる。その他にも、カザフ語・ロシア語話者向け教材が不足しているので(特にカザフ語)、現地スタッフをリードしながら、教材開発を進めていくことが、今後の課題の一つである。

 弁論大会といえば、その主催団体の一つとなっているのが、「カザフスタン日本語教師会」である。教師会は、1998年、前任の派遣専門家が中心となって立ち上げられた。毎月、会合を開き、日本語教育機関の情報交換の場となっている。運営は日本人教師中心に行われているが、年々、現地人教師の発言が増えてきている。しかし、新しい活動となると、まだ日本人専門家のリーダーシップが必要である。現在のところ、弁論大会の運営で手一杯の感のある教師会であるが、仕事やアルバイトに追われている現地人教師も、無理なく積極的に参加できるような魅力のある活動を、何か一つでも始めたいと考えている。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
 民族大日本語学科は、カザフスタン初の日本語専門課程である。98年度から他大学においても日本語専門課程が設置され始めたが、まだ卒業生を輩出しておらず、現在民族大卒業生が中心に、日本・日本語専門家として各分野で活躍している。日本語学科の設置目的は、日本語・日本学研究者および教師、企業において日本語で業務が行える人材、日本語通訳・翻訳者の育成である。従って、言語のみならず、歴史、文化などの専門科目にも重点を置いた教育を行っている。
専門家は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。
ロ.派遣先機関名称 アル・ファラビ名称カザフ民族大学
Al-Farabi Kazakh National University
ハ.所在地 Amangeldy St. 61a, Almaty 480121 Republic of Kazakhstan
ニ.国際交流基金派遣者数 NIS専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
東洋学部極東学科
国際関係学部
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1992年
(2)専門家・青年教師派遣開始年 1995年
(ロ)コース種別
専攻/第二、第三外国語
(ハ)現地教授スタッフ
東洋学部 常勤12名(うち邦人3名)
国際関係学部 常勤6名(うち邦人1名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   専攻103(6、28、22、29、18)
第二146、第三34
(2) 学習の主な動機 日本留学、就職、日本文化への興味
(3) 卒業後の主な進路 日本語教師、日系企業等への就職、通訳
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力検定2級程度
(5) 日本への留学人数 毎年1~2名

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