世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 日本語コース始動

カザフスタン日本人材開発センター
国際交流基金派遣日本語教育専門家 杉浦千里

日本語授業風景の写真
日本語授業風景

 「カザフスタン→シルクロード→砂漠と駱駝」とイメージされる方もいらっしゃるかもしれませんが、任地アルマティ(旧首都、現在の首都はアスタナ)は碁盤の目のような整然とした町並み、公園都市といわれるほどの見事な街路樹が続く美しい街です。1991年にソ連邦からの独立を宣言した新しい国でもあります。

 その翌年には高等教育機関での日本語教育も始まり、現在では日本語専攻、非専攻その他の機関を合わせると、1,200名以上の日本語学習者がいます。

 2002年9月にJICA事業の一つとして、このアルマティに「カザフスタン日本人材開発センター」が開かれました。このセンターは「相手国における市場経済化の支援の拠点として機能すると同時に、日本の顔の見える協力を実現する」ことを目標として、ベトナム、ウズベキスタン、モンゴル、ラオス、そしてカザフスタンで事業を展開しています。ビジネスコースの実施、日本語コースの実施、文化交流事業の3点が主な活動です。

 日本語コースは2002年9月から始まりました。これまで一般の人々が日本語を学ぶ機会がなかったので、これは大きいニュースでした。案の定、応募者は定員を大きく越え、特に初級クラスでは8~9倍にも上りました。抽選に漏れた人に泣きつかれたり、どこかのお偉いさんに話を持っていかれたり、孫娘を入れてくれと、おじいちゃんに粘られたりと大騒ぎでしたが、それだけ、日本語を学びたいと切望してくれるのですから、ありがたいことです。

 初級クラス。ひらがな、フム、変な形だが覚えらえれる。カタカナ?なぜもう1セット文字があるの?漢字、一体いくつ覚えればいいんだ?!とこの辺で挫折したり怒ったりする人もいますが、漢字ってなんて美しいんだとマニアックに勉強を始める人も現れます。口から日本語の挨拶、疑問文が出始めたあたりで、アルマティ在住の日本人ゲストを招いてセッションも行いました。「いつ、アルマティに来ましたか」「去年です」「そうですか・・・・」。この後、沈黙の業に入ったチームもありましたが、たいていは習いたての言葉を駆使して日本語会話を楽しみました。

 初中級、中級クラスはほとんどが日本語専攻、または第2外国語として大学で学んでいる学生さんです。女子学生が圧倒的に多い。普段、大学で詰め込んだ知識をセンターの授業で存分に吐き出し、日本人ゲストにカザフの料理や人気歌手を説明するプレゼンテーションを行ったり、春の文化祭では日本語ディベートに挑戦したりもしました。教科書の中の言葉や表現が、彼女たちの脳の中で忙しく駆け巡っているのが見えるような奮闘ぶりでした。

 上級クラスは日本語専攻の卒業生や、日本企業で働く人たちが参加しています。ビジネスで使える表現、固い文書の中の漢字語彙に頭を悩ませ、コンピューターに取り組み、あれやこれやについて語り、1級の試験問題に挑戦。ここまで使えるようになった日本語を、活用できる場を開拓すること。これが最大の問題です。

 教師クラスには、現地の若手日本語教師が集まってきます。前期では音声と文法、後期では文法の発表と表記について学びました。通年で漢字学習も続けています。特にカザフ語・ロシア語との比較を重視していますが、「弟を学校に行かせた、はい、これはカザフ語でどう言うの?」と聞くと、人によって答えがまちまち。カザフ語はできませんという若い教師も。ソビエトに長い間組み込まれていた歴史がこんな形で現れます。

 2003年2月からは新たに初級の2クラスが始まりました。これで年に2回、センターで日本語学習を始める機会が生まれました。

日本人ゲストとのセッション<おにぎり作成>の写真
日本人ゲストとのセッション<おにぎり作成>

 授業の他に、日本人ボランティアにも参加いただいて、「書道」「合唱」「日本語の新聞作成」といったクラブ活動も行っています。書道はまるで音楽のようだと楽しむ女性、カザフ語の歌を覚えたいという日本人の奥様、新聞の記事を書くためコンピューターに向かう両国の学生さん。こんな活動を通して、カザフの人と日本の人のつながりが生まれればと願っています。

 03年9月からは2年目に入ります。次のコースでもみんなが楽しめる授業や催しを、現地のスタッフと一緒に作り出して行きます。

日本語クラス概要

2002年9月コース【週2回、1回2時間、32週、年間学習時間128時間】
(03年6月20日修了。修了率74,3%)
クラス名 時間 定員 主教材 レベル
初級  昼 15:30~17:30 16名 みんなの日本語Ⅰ,関連教材 日本語学習未経験者
初級  夜 18:30~20:30 16 みんなの日本語Ⅰ、関連教材 日本語学習未経験者
初中級 昼 15:30~17:30 16 みんなの日本語Ⅱ、関連教材 能力試験3級取得目標
初中級 夜 18:30~20:30 16 みんなの日本語Ⅱ、関連教材 能力試験3級取得目標
中級  昼 15:30~17:30 16 日本語中級J501、KANJI BOOK 能力試験2級取得目標
中級  夜 18:30~20:30 16 日本語中級J501,KANJI BOOK 能力試験2級取得目標
上級 18:45~20:45 16 商談のための日本語、日本への招待他 能力試験1級取得目標
教師 18:30~20:30 16 初めての日本語教育、KANJI BOOK 現地の現役日本語教師
2003年2月コース【週2回、1回2時間、32週、年間学習時間128時間】
(04年1月修了予定)
クラス名 時間 定員 主教材 レベル
初級  昼 15:30~17:30 16名 みんなの日本語Ⅰ,関連教材 日本語学習未経験者
初級  夜 18:30~20:30 16 みんなの日本語Ⅰ、関連教材 日本語学習未経験者
派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
 1991年独立以来、カザフスタンの日本語教育は着実に広がり、現在では2,000名以上の学習者を数えるほどになった。しかしそのほとんどが大学生で、一般社会人が日本語を学ぶ機会は皆無に近かった。2002年のカザフスタン日本センター開所と同時に始まった日本語コースは、初めて社会人向けに開かれた講座として人気を博している。
 また、現地の日本語教師で作る日本語教師会とも協力関係を持ち、教師クラスでの再研修、相談活動を行ったりして、現地教師の支援にあたっている。
 また、日本語以外にも書道や合唱クラブなどの活動を通じて、日本文化に触れる拠点ともなっている。
ロ.派遣先機関名称 カザフスタン日本人材開発センター
Kazakhstan-Japan Center for Human Development
ハ.所在地 55,Jandsov str., Almaty, Republic of Kazakhstan,
Kazakhstan Economic University

電話:7-3272-210611/216561/280481
FAX:7-3272-28030
E-mailm.mukasheva@kjc.kz
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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