世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 『遠い国』カザフスタン、『近い国』日本

カザフ民族大学
大島智美

 白地図上に「カザフスタン」という国を指し示すことができますか。カザフスタンの人々がどのような顔つきをしていて、どんな言語で話しているかご存知ですか。私たちにとって「遠い国」であるカザフスタン。そのカザフスタンの経済・商業の中心都市アルマティにあるカザフ民族大学では、専攻・選択合わせて230名もの学生が日本語を学んでいます。「徳川幕府」について卒業論文を書く学生、「宇多田ヒカルが大好き」という学生、「日本人の宗教観」について語る学生。その興味は多岐に渡っており、彼らにとって日本は私たちが考える以上に「近い国」なのかもしれません。

 派遣専門家は、各クラス週1コマの会話授業、弁論指導、年間授業計画づくり、企業実習の手配などの業務を担当するほかに、日本・日本人との交流の窓口としての役割を期待されています。アルマティには60人前後の日本人が住んでいますが、残念ながら日本人との交流の機会はほとんどありません。観光客もほとんどなく、実践の場がないことが、やる気の低下を招いているようです。

「日本料理教室」で巻き寿司を作る学生の写真
「日本料理教室」で巻き寿司を作る学生

カザフスタンでの日本語教育の現場写真
「日本語学科祭り」でゆずの「贈り物」を熱唱する学生

 そこで、少しでも学生に日本人との交流の機会を与えられないかと考え、次のことを試みました。まず、日本料理教室の開催です。毎年行なわれている「日本語学科祭り」で日本料理を作って出したい、という学生のため、在アルマティの日本人の女性にご協力いただきました。もちろん調理実習室があるわけではなく、できる料理に限りがありましたが、おいしい「巻き寿司」を教えていただき、みんなで試食しました。楽しい思い出になったようです。それから、授業に日本人留学生を呼び、日本の学生の就職活動について話してもらったり、学生からの質問に答えてもらったりしました。そして、現在進行中なのが、カザフ民族大学東洋学部日本語学科ホームページ作成プロジェクト実施です。より多くの日本人にカザフスタンのことを知ってもらおう、そしてアルマティで日本語を使うチャンスが少ないのなら、ここ以外に交流の場を見つけよう、という趣旨で始めました。4年生の学生が中心となり、ホームページの内容、役割分担について話し合い、原稿を書いています。原稿の締め切りはとうに過ぎているのですが、そこは大らかなカザフスタンの人。完成がいつになるかは分かりませんが、学生一人一人が楽しみながらこのプロジェクトを進めていくことが大切だと考えています。

 大学の設備は整っているとは言えず、書いてもよく見えない黒板、コピー機もテープレコーダーも現地教師の私物、コピー用紙もコピー機のトナーも買ってもらえない・・・と不満は尽きません。しかし、ここには日本語そして日本について学ぶ学生がいます。決して恵まれているとは言えない環境の中、情熱を持って日本語教育に携わる優秀な現地の日本語教師がいます。数ある国の中から「日本」そして「日本語」に興味を持ってくれた彼らに感謝の気持ちを忘れず、今後も日本語学科の自立化を念頭においた上で、彼らのために何ができるかを常に考え活動を続けて行きたいと思います


派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
民族大学東洋学部日本語学科はカザフスタン国内で最も歴史ある日本語専門課程である。2003年9月より極東学科から日本語学科として独立を果たした。設置目的は、日本語・日本学研究者及び教師、企業において日本語で業務が行える人材、日本語通訳・翻訳者の育成であり、言語のみならず、歴史、文化などの専門科目にも重点を置いた教育が行われている。現在では当大学の卒業生が中心となって日本語教育者、または日本企業の現地スタッフ等国内の幅広い分野で活躍している。専門家は日本語科での日本語教授、カリキュラム作成に対する助言、現地教師の育成を行う。
ロ.派遣先機関名称 アル・ファラビ名称カザフ民族大学
Al-Farabi Kazakh National University
ハ.所在地 Amangeldy St. 61a, Almaty 480121 Republic of Kazakhstan
ニ.国際交流基金派遣者数 NIS専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
東洋学部日本語学科、 国際関係学部
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1992年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1995年
(ロ)コース種別
「専攻」「第一外国語」「選択必修」
(ハ)現地教授スタッフ
東洋学部 常勤8名(うち邦人2名)  国際関係学部 常勤3名
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   「専攻」「第一外国語」106 「選択必修」127
(2) 学習の主な動機 「留学」「通訳志望」「日本企業への就職希望」「日本文化への興味」
(3) 卒業後の主な進路 日本語教師、日系企業・団体に就職、地元企業・機関に就職
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力検定2級合格程度(専攻)
(5) 日本への留学人数 毎年2名程度

ページトップへ戻る