世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) シンポジウム「フロンティアの日本語教育」

カザフスタン日本人材開発センター
荒川友幸

日本語教育国際シンポジウム開催

カザフスタンでの日本語教育の現場写真

 日本センターは、カザフスタン日本語教師会との共催で、国際交流基金の助成を受けて、2006年4月29日(土)・4月30日(日)・5月1日(月)の3日間、日本語教育国際シンポジウム「フロンティアの日本語教育」を開催した。
カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、ロシア、ウクライナ、アゼルバイジャン、グルジア、モルドバから約60名の日本語教師が参加した。

 このシンポジウムの目的は2つある。ひとつは、中央アジア・コーカサス・シベリアの日本語教師たちのネットワーク形成の促進を図ること、2つ目は、海外の日本語教師が抱える切実な問題について、参加者が客観的に把握し、より効果的に対処できるようにする機会を提供することである。

日本国内の日本語教育

 これまで日本語教育の理論は、日本国内の日本語教育の状況を前提として組み立てられてきた。それは、以下のようなものである。
(1)週20時間程度の集中的な日本語学習が保証されている。
(2)学習者は日本語を使えるようになることに強い欲求を持つ。
(3)学習者が教室外で自然な日本語に没入できる。
(4)学習者の周囲には日本文化が遍在する。

海外の日本語教育

 ところが、海外における日本語教育においては、これらの条件が満たされていないことが多い。特に(3)、(4)の状況は存在しない。このため、海外で日本語を教える教師たちは予期せぬ状況に直面して大いに困惑するようになる。海外における日本語教育には次のような特徴がある。
(1)日本文化、社会の外で学習する。
(2)学習者の動機付けがそれほど高くないので、その維持に教員が深く関わる必要がある。
(3)一般的に学習時間が短く、拡散的である。
(4)ノンネイティブ教師のみが教える場合がある。また、ネイティブ、ノンネイティブ教師が一緒に教える場合も多い。
(5)学習者間に日本語以外の共通の言語がある。また、ノンネイティブ教師、学習者間も同様。
(6)日本語教師が、通訳・観光など日本語教育の近接分野に関わる必要性が出てくる。

シンポジウムのプログラム

 これらのうち、今回のシンポジウムでは、ノンネイティブの役割について考えることを中心的なテーマとした。
シンポジウムでは、東京外国語大学大学院の宇佐美まゆみ教授、ウズベキスタン日本センターの福島青史専門家、カザフスタン日本センターの和栗夏海日本語教育助手が講演、報告を行った。また、私も、「JFL環境におけるノンネイティブ教師の役割」と題した講演を行った。その他、各国日本語教育事情の報告、海外の日本語教育の目的について考察するためのパネルディスカション、参加者全員が参加しての討論会(「自分たちの教育現場でノンネイティブは日本語教育にどのように貢献できるか?」)などが催された。

 海外でこのような国際シンポジウムを開催する場合、シンポジウムのテーマそのものが大切であることは言うまでもないが、それと同時に、参加者が、お互いに、自分たちの問題について話し合えるよう、相互交流の場を設けることもとても大切である。その地域でたった一人の日本語教師であるとか、海外で教える日本語教師はいろいろ困難な問題を抱えている。私は、日本語教師たちが、このシンポジウムを通して自分たちの問題を共有し解決に向けた方策を探ってほしいと考え、このシンポジウムを開催した。そうすることで、参加した教師たちが少し元気になってまたそれぞれの任地に帰ってくれたとしたら、私は、それが本シンポジウムの最大の成果だと信じる。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
JICAにより、市場経済化支援のため2002年9月設置された。日本語コース、ビジネスコース、文化交流が3本柱である。日本語コースは初級から上級まで一般成人を対象として9つのレベルがある。週2回各2時間、全16週間(4ヶ月)を1期として年2回開講、各期約200名の受講者がいる。また、通訳訓練、教員訓練も行う。本年2月よりカザフスタンの首都アスタナでも日本語コースを開講した。こちらは4レベル約80名の受講者がいる。
ロ.派遣先機関名称 カザフスタン日本人材開発センター
Japan-Kazakhstan Center for Human Development
ハ.所在地 Kazakhstan Erconomic University
55 Jandosov St., Almaty, Republic of Kazakhstan
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家1名 日本語教育指導助手1名

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