世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 日本語コースの新しい取り組み

カザフスタン日本人材開発センター
山口 敏幸

 カザフスタン日本人材開発センター(以下、日本センター)の3階の事務所から見えていた、雪に覆われた天山山脈(の支脈)も、一気に葉を茂らせた木々に隠れて見えなくなりました。アルマティの春は短く、もうすでに夏を迎えています。

日本語コースの状況

中高生クラスの写真
中高生クラス

 日本センターの日本語コースは、カザフスタンにおいて一般成人に日本語教育を行っている唯一の教育機関です。設置しているクラスは、初級のレベル1からレベル4までと、中級のレベル5からレベル8までです。そして、今学期は、アルマティではレベル1から6までの、中高生クラスを含む17クラスが開講され、現在、約283名の学習者が日本語を学んでいます。

 また、2006年に新首都アスタナに開講した日本語講座でも、レベル1から8までの8クラスが開講され、109名の学習者が学んでいます。さらに、夏休み期間中は、2週間の夏季集中講座が設けられ、多くの学生・一般人が通っています。これらの講座の授業を受け持つ講師はほとんど現地の教師です。そして、これら現地教師に対する研修を含む日本語コースの運営・管理全般についてマネージメントするのが日本語専門家(以下、専門家)の仕事です。

新しい取り組み

 日本語コースでは、最近2つの新しい試みを行っています。1つは受講生の漢字力アップのための漢字教材作りで、もう1つは、短期間でレベルを上げていくための飛び級講座の新設です。

1.漢字教材作り

 漢字の学習は、非漢字圏の学習者にとって日本語学習上の共通の困難点と言えますが、日本センターの日本語講座でも、受講生が漢字が読めず教えにくいという声が、特に中級担当教師からよく聞かれます。原因としては、(1)漢字の導入が遅いこと(現在は学期の後半過ぎになってようやく導入されている)、(2)漢字の提出順が難易度順になっていないこと、(3)漢字教材に工夫がなく、学習意欲が高まらないこと、などが考えられるのですが、使用教材の『みんなの日本語』がPartⅠもPartⅡもすべての漢字にルビが振ってあり、ルビに頼る癖がついてしまっていることも原因として挙げられるかもしれません。

  こうした状況を踏まえて、今学期、受講生の漢字力アップのため、対応策として、漢字の導入時期を早めるカリキュラムの改編、漢字の提出順の整備、漢字練習教材の改定に着手しました。ただ、漢字の提出順を変えたり、漢字練習教材の改定を行うと、試験問題まで検討し直さなければならなくなるなど、予想以上に大掛かりな取り組みとなりましたが、受講生の漢字力アップのため、講座の先生方の協力を得て作業を進めているところです。

2.飛び級講座

図書室の写真
図書室

 日本語コースが運営する講座は、一般講座、夏季集中講座、日本語能力試験対策講座、上級講座ですが、その中心になるのは、春と秋に行われる一般講座(大人クラス、中高生クラス)です。春講座は2月下旬から6月下旬まで、秋講座は9月下旬から1月下旬まで、4ヶ月間開講されています。毎週2回、1回2時間の授業を全部で32回、64時間行います。1学期修了するごとに、レベルが1つずつ上がっていき、順調にいけば、初級の4レベルを2年間で修了するようになっています。

 受講生の中には、もっと短期間でレベルを上げていきたいという意欲的な人がかなり多く、そのような人のために、今学期から、飛び級講座(正式名称は、「夏季特別講座」)を始めることにしました。これは、春学期から秋学期までの間の3ヶ月間の休みの期間を利用して、短期集中で通常の1学期分を学び、秋の学期にはもう1つ上のレベルに進むというものです。これでいくと、1年4ヶ月で初級を修了することができ、学習期間の大幅な短縮ができることになります。現在レベル1で学ぶ学習者を対象にアンケート調査を行った結果、60%以上の人が参加したいという意思を示しています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Japan-Kazakhstan Center for Human Development
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
国際協力機構(JICA)とカザフスタン政府との協定により設立された。カザフスタン市場経済の発展を担う人材を育成するために、日本語コース、ビジネスコースの事業を行っている。日本語上級専門家はセンター内で開講している各種日本語講座の企画・運営、および一部のクラスを担当する他に、日本語教師会への助言および支援、大学の日本語教師を対象とした講習会などの開催、日本語能力試験や日本語弁論大会開催への協力など日本語教育に関連する活動をセンター外でも行っている。
所在地 55 Zhandosov Str., Almaty, 050035, Republic of Kazakhstan
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2002年

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