世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 学生の学習意欲を引き出す活動を

アル・ファラビ名称カザフ民族大学
鈴木 恵理

 中学生の時に習った"元素の周期表"を覚えていますか。世界にはあの周期表の資源をすべて持っている国があります。そしてその国は、世界第9位の国土をも誇り、人口密度は実に6人/km2です。比べて日本の人口密度は337人/km2。圧倒的な違いです。国の中央に位置するバイコヌール宇宙基地はロシアが租借していて、2009年12月にはここから日本人宇宙飛行士が宇宙へ飛び立ちました。豊富な資源といい、広い国土といい、日本にないものを持っている魅力的で不思議な国、それがここカザフスタンです。

 そんなカザフスタンの日本語学習者数は、約1,000名。近年は、大学生だけでなく、中高生日本語学習者の増加が目につくようになりました。

日本語サロン

初めての書道体験の写真
初めての書道体験!

 毎週金曜日午後の2時間、カザフ民族大学東洋学部日本学科では、1年生と2年生が自由に参加できる「日本語サロン」を開いています。授業ではないので卒業単位にはなりませんが、多くの学生が自由に参加しています。折り紙や書道や巻き寿司作りを体験したり、日本や漢字に関係するゲームをしたり、日本のドラマや映画やアニメを見たりしています。時には日本人のゲストを招いて交流会を行ったり、少し真面目に、見たドラマのテーマについてディスカッションをすることもあります。

 「食文化」についてのディスカッションはとても盛り上がりました。ドラマだけでなく、日本のレストランメニューやスーパーのちらしも、日本の食文化の分析材料になりました。「日本人はよく魚を食べますが、カザフスタン人はよく肉を食べます。」「カザフスタン人はスプーンとフォークをよく使いますが、日本人はお箸をよく使います。」「日本は島国で、海があるから魚を食べる習慣があるのかもしれません。」「どのスーパーのちらしにも必ず刺身・寿司コーナーがあります。」「カザフ人は遊牧民だったから、肉を食べるのだと思います。」 1、2年生なので難しい語彙や文型は使えませんが、グループごとに意見をまとめ、一生懸命日本語で話してくれました。「日本語サロン」開講の背景にあるのは、ネイティブ教師の不足です。カザフ民族大学には日本人教師が一人しかいないのです。そのため、全学年全クラスを担当しきれないという現状があり、1、2年生の授業担当ができない代わりに、クラスや学年を取り払った自由参加の「日本語サロン」を始めました。自由参加なので、週によっては参加者が少ないこともありますが、学生の好奇心を刺激できるような魅力的な「日本語サロン」を目指していきます。

ミニ・スピーチ会「私のおすすめの観光地」!

「おすすめの観光地」をスピーチする学生の写真
「おすすめの観光地」をスピーチする学生

 前期、3年生の5クラスでは、「私のおすすめの観光地」をテーマに、プロジェクト・ワークを行いました。最終的に日本人の前でスピーチすることを目標に、自分のおすすめの観光地を決め、その観光地の詳細を調べ、スピーチの原稿を書き、添削を重ねて、発音練習、暗唱、発表資料(写真、地図、実物)の用意を進めていきました。

 そして迎えた2月5日。カザフスタンの在留邦人の方々を大学にお招きして、「ミニ・スピーチ会」を行いました。学生と日本人ゲストを2つのグループに分け、発表者を囲むように椅子を並べました。在留邦人の方々なので、近郊の観光地はご存知です。はじめからそれを考慮して、できるだけガイドブックには載っていないところ、外国人が知り得ない情報を盛り込んだスピーチになるよう工夫しました。スピーチが無事に終わったら、質問タイムになります。教室を見渡していると、ゲストから質問を受け、それに答えたいのにも関わらず、適当な日本語が出てこなくて困惑している学生、そんな友人をフォローする学生、逆に文法はめちゃくちゃなものの、答えたい一心で一生懸命日本語を紡ぐ学生の姿が目に止まりました。学生たちが「日本語は教科書で勉強するだけではなくて、使うものなのだ」と実感した瞬間でした。グループ全員のスピーチが終わったあとは、日本人ゲストに「日本のおすすめの観光地」について質問しました。東京や京都だけでなく、初めて聞く地名も多々あったようで、学生たちの日本留学への希望が一層膨らみました。最後は、「明日があるさ」を全員で歌って終了となりました。ゲストが帰ったあとも、「楽しかったです!」「またやりたいです!」の声が多かったのは言うまでもありません。学生たちを温かく見守ってくださった在留邦人の方々に心から感謝の気持ちでいっぱいです。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 アル・ファラビ名称カザフ民族大学
Kazakh National University named after al-Farabi
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
カザフ民族大学東洋学部日本学科は、カザフスタン国内で最も歴史ある日本語・日本学専門課程である。設置目的は、日本語・日本学研究者及び教師、企業において日本語で業務が行える人材、日本語通訳・翻訳者の育成であり、言語のみならず、歴史や文化などの専門科目にも重点を置いた教育が行われている。卒業生は、日本語教師、日本史教師、日本企業・機関の現地スタッフ等、カザフスタン国内の幅広い分野で活躍している。専門家は、日本学科での日本語教授、シラバス作成に対する助言、現地教師への助言・サポートを行う。
所在地 61a Amangeldy Steet., Almaty, 050012, Republic of Kazakhstan
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
東洋学部日本学科、国際関係学部
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   1992年
国際交流基金からの派遣開始年 1995年
コース種別
東洋学部:主専攻、国際関係学部:第二外国語
現地教授スタッフ
東洋学部:常勤17名(うち邦人0名)、国際関係学部:常勤1名(うち邦人0名)
学生の履修状況
履修者の内訳   主専攻:80名、第二外国語:75名
学習の主な動機 日系企業への就職希望、日本文化への憧れ
卒業後の主な進路 日本国大使館・韓国系企業への就職、大学院進学
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級合格程度
日本への留学人数 8名

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