世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)JF講座2年目のチャレンジ

カザフスタン日本人材開発センター
建木 千佳

冬の始まりの写真
冬の始まり

昨年の12月は例年にない厳しい寒さで,カザフスタンの南に位置するアルマティでさえ,-25度以下になる日が1週間も続きました。アスタナでは-40度以下になり,冷蔵庫の中より寒く,日本語授業を臨時休講せざるを得ない日もありました。一体いつになったら雪がなくなるのかと思っていたら,3月になるとあっという間に跡形もなく消えてしまいました。この分だったら,今年の桜は早く咲くかと思いきや,4月になると1週間ごとに気温が変わり,秋の装いになったり,夏服を取り出したりと,体調の維持が難しかったです。

やっと中央アジア特有の現象である綿毛の飛ぶ季節になりました。この綿毛は木に咲いた花が終わり,タンポポのように種を携え飛ぶんですが,何せ高い木の上から飛んできますから,あちらこちらに舞い込んできます。この現象が始まると,本格的な夏の到来となります。

カザフスタン日本センターでは,アルマティでは2012年の2月から,アスタナでは9月からJF講座が始まりました。耳からのインプットを重視し,声を出して練習するという日本語授業です。最初はCDのリピートもおぼつかなかった人でも,何度も何度も繰り返しているうちに,口が滑らかに動くようになってきます。そして,限られた話題ではありますが,自分のことを日本語で伝えられるようになります。このような学習者の進歩を実感できるのが,日本語教育に携わる者の喜びです。

しかし,いつも100%の成功が保証されているわけではありません。思ったように学習者の日本語が進歩しなかったり,講座受講生の数が減ったりすると,あれこれ考え,また新しいチャレンジをします。そして,今,JF講座も大方形が整ってきたところです。

カザフスタン日本人材開発センター(以下KJC)は,2002年にJICAとカザフスタン政府との協定により設立された機関です。10年計画で始まりましたが,2012年9月に,カザフスタン経済大学に譲渡され,本格的にKJCの自立が求められることとなりました。

日本語インスタント授業の様子の写真
日本語インスタント授業

日本語コースも例外ではありません。教育的効果を求めてクラスを細分化していたのではなかなか収支バランスが取れません。より効果的で,人々の興味を引くようなプログラムの提供が求められます。そこで,今学期からは,日本語能力試験を意識したコースを開講し,コースの選択権を学習者にゆだねました。自分のレベル,目的にあったコースが選べるようにしました。また,夏休みには通常の半分の期間で入門コースが終えられる集中講座も準備しています。そして,来学期からは複数コースが受講できるようにもしたいと考えています。このように,KJCは新しいことに果敢にチャレンジしています。

カザフスタンでも,韓国語の勢いが強く,日本語にとっては逆風が厳しく吹き付ける中,うれしい発見もありました。日本文化が好きで,歌やドラマ,映画などをインターネットを利用して見聞きしているうちに日本語を覚えたという人が,日本語弁論大会に出て優勝したことです。これは,カザフスタンにはまだまだ日本語を勉強したいと思っている人がいることをほのめかしているように思えます。現在カザフスタンではアルマティとアスタナでしか日本語教育が行われていません。地方都市のセメイでは,広島県との交流があるので,細々と日本語学習が続いています。今後は,地方都市にも目を向け,潜在的な日本語学習希望者の発掘にも力を入れたいところです。カザフスタンの国土に眠る天然資源同様,優秀な人材も埋もれている気がします。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Japan-Kazakhstan Center for Human Development
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
JICAとカザフスタン政府との協定により設立された機関で,日本語コース、ビジネスコース、相互理解の事業を行っている。2011年10月から,日本語はJF講座となり,2012年の2月から,JFスタンダード準拠の日本語教育が始まり,同年9月からは首都のアスタナでもJF講座が始まった。日本語専門家は,その新しい日本語教育のサポートを行う。
所在地 55 Jandosov str. Almaty Rep. of Kazakhstan
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
日本語コース
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