世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)日本語学習者・日本語教師とのつながり-国内・中央アジアでの活動-

カザフスタン日本人材開発センター
森まどか

カザフスタンにおける日本語教育は旧首都であるアルマティと、1997年から新首都となったアスタナを中心に行われています。カザフスタン日本人材開発センター(以下、KJC)では、アルマティとアスタナ分室で運営を行っており、『まるごと-日本のことばと文化』(以下、『まるごと』)を使った一般向け日本語講座に加え、日本文化に関する各種イベントや文化体験講座などを行っています。日本語専門家(以下、専門家)の業務は主にKJCの日本語講座運営ですが、それ以外にカザフスタンおよび中央アジアにおける日本語教育機関や教師に対する支援もしており、それらの取り組みを紹介します。

KJCの日本語講座運営

KJCでは、2012年2月から『まるごと』コースを開講しており、2016年春コースはアルマティで入門から中級まで7レベル9クラスを開講しています。全クラス『まるごと』を使用しており、『まるごと』第1期生は他国に先駆け、中級後半である『まるごと中級2 B1』(試用版)を使用しています。数年前までは大学生・一般の割合が多かったのですが、中高生の割合が増えているのが最近の傾向です。アルマティでもアスタナ分室でも、受講生の4割を中高生が占め、最大層となっていますが、これは主にアニメや漫画の影響であると考えられます。『まるごと』コース以外では、日本語能力試験体験講座や、夏休み子どもコースに参加している10歳前後の子どもたちに簡単な日本語を教えています。

JAPAN CLUB

授業外でも日本語を使ったり、日本への造詣を深めることを通して、日本語学習へのモチベーションを高めることを目的とし、2015年3月に開始したJAPAN CLUBが1周年を迎えました。1周年を記念し、第24回JAPAN CLUBでは、これまでの活動を写真で振り返った後、受講生が手作りしたカザフスタンの伝統料理ベシュパルマクを食べながらお祝いしました。JAPAN CLUBは、現受講生のみならず、元受講生や大学で日本語を勉強している人たち、囲碁クラブに通っている人たちも参加しており、日本語学習者や日本文化に興味を持っている人たちとのつながりを深め、また日本人留学生をはじめとした在留邦人との貴重な交流の場になっています。

第20回中央アジア日本語弁論大会

中央アジア日本語弁論大会の様子の画像
中央アジア日本語弁論大会の様子

2016年4月30日に、「第20回中央アジア日本語弁論大会」がアルマティで開催され、中央アジア5カ国(カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン)から17名の学生が出場し、弁論を競いました。民族衣装など、各自思い思いの服装で5カ国の日本語学習者が立ち並ぶ姿は圧巻でした。弁論大会終了後は、各国の学習者が互いに友好を深める様子も見られました。弁論大会翌日には、「中上級向けの読解指導」と題し、ウズベキスタンおよびキルギスの専門家による日本語教育セミナーが行われた他、各国の日本語教育の現状報告が行われました。隣国とはいえ、各国を取り巻く日本語教育の状況は様々で、大変興味深い時間となりました。

日本語教師研修

グループで『まるごと』の教案を作成している様子の画像
グループで『まるごと』の教案作成

JF講座として、『まるごと』を他の教育機関にも積極的に発信していくため、2015年10月に『まるごと初中級A2/B1』を、2016年1月に『まるごと中級1 B1』を取り上げ、日本語教師および教師希望者を対象とした研修を行いました。大学の授業に『まるごと』を一部取り入れる教師も出始めており、『まるごと』研修はいつも好評です。また、今回からアスタナの教師にも参加してもらうことにしました。アルマティとアスタナの教師は距離の問題から交流する機会があまりなく、今回の研修を通して、教師間の交流や情報交換、またつながりの強化を図ることができたのではないかと考えています。さらに、アルマティ在住の専門家がアスタナの日本語教育を支援していく上でできることとして、専門家がアスタナに赴いて教師研修を行うことを提案し、2016年1月に、アスタナにあるユーラシア国立大学において、教授法に関する日本語教師研修を行いました。これまで研修を受ける機会がなかったことから、研修の継続を強く希望するとの意見が寄せられ、アスタナにおける教師研修は今後も継続していく予定です。

トルクメニスタン日本語教師研修

 専門家が派遣されていないトルクメニスタンおよびタジキスタンに対し、昨年度から中央アジアに派遣されている専門家が支援を行っています。昨年と今年はカザフスタンの専門家がトルクメニスタンを担当することとなり、2016年6月に報告者がアシガバートを訪問し、「第2回トルクメニスタン日本語教師研修」を行いました。トルクメニスタンでは、2016年9月から初中等および高等教育において日本語教育が拡大されることとなり、教科書作成などの準備が急ピッチで進められています。その準備の一つとして、報告者は大学で教鞭を取っている教師、また今後大学で教鞭を取る予定の教師候補を対象に、教授法に関する研修を行いました。授業を楽しくするためのヒントを多く学ぶことができ、今後の授業にぜひ取り入れていきたいという声が聞かれました。また、9月から5年生(日本の中学1年生に相当)に日本語を教える予定の教師に対する研修も同時期に行われていたため、教具作成や模擬授業に対して、コメントやアドバイスを行いました。模擬授業を重ねていく中で、アドバイスを柔軟かつ的確に取り入れ、授業が飛躍的に改善されていく様子を目の当たりにしました。突然の日本語教育拡大に伴い、教師不足など様々な課題を抱えていますが、熱心に取り組む教師たちが、今後のトルクメニスタンの日本語教育を支えていくものと期待しています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Japan-Kazakhstan Center for Human Development
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
JICAとカザフスタン政府との協定により設立された機関で、日本語コース、ビジネスコース、相互理解の事業を行っている。2011年10月から、日本語はJF講座となり、2012年の2月から、アルマティでJFスタンダード準拠の日本語教育が始まる。同年9月からは首都のアスタナ分室でもJF講座が始まる。日本語専門家は、JF講座をはじめカザフスタンの日本語教育支援を行う。
所在地 55 Jandosov str. Almaty Rep. of Kazakhstan
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
日本語コース
日本語講座の概要
沿革
  講座(業務)開始年 2002年
  国際交流基金からの派遣開始年 2002年
 
コース種別
  入門、初級、初中級、中級
 
現地教授スタッフ
  常勤3名(うち邦人0名)、非常勤4名(うち邦人0名)
学生の履修状況
  履修者の内訳 アルマティとアスタナ併せて約150名
  学習の主な動機 日本、日本文化への興味と日本への留学希望
  卒業後の主な進路 受講生は中高生から社会人の一般講座のため、進路は様々
  卒業時の平均的な
日本語能力レベル
N3相当レベル
  日本への留学人数 数名程度

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