世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)カザフスタンに広がる日本文化の波

カザフスタン日本人材開発センター
瀬川綾子

中央アジアのカザフスタン共和国は、まだまだ日本人にはなじみの少ない国かもしれません。実際在留邦人は子どもを含め約120名で、道を歩いていて日本人に出会うことはまずありません。それでも、バスに乗ると「こんにちは」とか「ありがとう」などと突然日本語で話しかけられ、驚かされることもあります。また町には地元の方が経営しているおすし屋さんも何軒かあり、いつもにぎわっています。こんな様子からも日本文化がジワジワ浸透しているのを感じます。

今年は首都アスタナで万国博覧会が行われますので、日本でもカザフスタンについて聞く機会も増えるかもしれません。 

カザフスタン日本人材開発センター(KJC)で学ぶ受講生たち

現在KJCで日本語を学んでいる受講生は、アルマティで約100名、アスタナ分室で約48名(出前授業含む)です。受講生たちは『まるごと 日本のことばと文化』(以下『まるごと』)を使いながら、日本語と日本文化を楽しく学んでいます。学生の多くはアニメや日本のサブカルチャーから日本に興味を持ち、日本語を学びにKJCにやってきます。学生や社会人が中心なので、殆どの授業は夜6時半から8時半までです。仕事や勉強で疲れている様子で教室に入ってきても、友だちと日本語を使って話し、新しい日本語を覚えるうちに、元気な顔になって帰って行きます。

アスタナ国立アカデミー図書館出前講座

図書館出前講座 熱心に日本語に取り組む受講生の画像
図書館出前講座 熱心に日本語に取り組む受講生

アスタナ分室では、毎週土曜日に一般向けの出前講座を行っています。場所はアスタナのシンボルタワーバイテレックの横にある国立アカデミー図書館の一室です。ここでも『まるごと』を使い、1回3時間の授業を行っています。20数名の受講生は殆どが社会人ですが、その中で唯一小学生(10歳)の男の子は将来日本留学を夢見て頑張っています。

桜まつり

桜まつりでのお茶会 初めてのお抹茶にドキドキの画像
桜まつりでのお茶会 
初めてのお抹茶にドキドキ

毎年4月中旬から下旬の桜の開花に合わせ、桜まつりが行われています。これらのセンターの桜は、2011年の東北の震災後、当時の所長が日本の復興を願い植えた桜です。私たちはこの桜の開花を日本の復興の象徴と喜び、祝っています。そしてこの桜まつりは少しずつ地域にも根付いてきていて、開花の遅かった今年は「いつ桜まつりがあるの?」と問い合わせの電話が何度もかかってきたほどです。

桜まつりでは、書道や剣玉、折り紙、浴衣、栞作りなどの日本文化紹介や、日本語ミニレッスンのコーナーで日本語を紹介したりしています。今年初の試みで、「桜の下でお茶を飲んでもらおう!」と外に畳を敷いて、お抹茶の点て出しをしました。お客様は初めてのお抹茶に「おいしい!」「にが~い!!」と様々な感想を聞かせてくれました。途中からは生憎の雨でしたが、2時間ほどの間に100名以上の方がお越しくださり、大盛況でした。

カラオケコンテスト

日本人会の方に審査のご協力をいただき、2月に3回目のカラオケコンテストが開かれました。条件は「日本語の歌を歌詞を見ないで歌う。」だけ。ほとんどの出場者は日本語学習者ではありませんでしたが、日本語をしっかり覚えて歌ってくれました。今年は小学生くらいの女の子からミセスまで、幅広い年齢層の方々に参加していただけました。また。今年は開催日がちょうど節分に当たったので、審査の合間に「豆まき」の文化紹介も行いました。(豆をまけないという事情もあり、飴で代用しました。)また、このカラオケコンテストの上位入賞者は、カザフスタン弁論大会のアトラクションでも歌って頂きました。

ジャパンクラブ

ジャパンクラブは今年で2周年を迎えました。ジャパンクラブは金曜日の夜、受講生や元受講生が集まって、日本に関するイベントを行っています。3月17日にカザフスタンのお正月であるナウルーズのお祝いとジャパンクラブの2歳の誕生会を行いました。

ナウルーズはカザフ人にとってとても大切なお祭りです。カザフの各家庭で作られる「ナウルーズゴジェ」と言う7種類の穀物が入ったミルク粥や、中央アジアの伝統的な揚げパン「バルサック」などを作って、みんなでお祝いしました。バルサックは日本人のための料理教室を開き、日本人ゲストの皆さんと一緒に作りました。お誕生会では、チェブラーシカの誕生日の歌を日本語でみんなで歌って、お祝いしました。 

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Japan-Kazakhstan Center for Human Development
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
JICAとカザフスタン政府との協定により設立された機関で、日本語コース、ビジネスコース、相互理解の事業を行っている。2011年10月から、日本語はJF講座となり、2012年の2月から、アルマティでJFスタンダード準拠の日本語教育が始まる。同年9月からは首都のアスタナ分室でもJF講座が始まる。日本語専門家は、JF講座をはじめカザフスタンの日本語教育支援を行う。
所在地 55 Jandosov str. Almaty Rep. of Kazakhstan
国際交流基金からの派遣者数 1名
国際交流基金からの派遣開始年 2002年
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