世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)教室外での学びを支援する

アル・ファラビ名称カザフ国立大学
大西由美

カザフスタンには、日本語が専攻できる高等教育機関は2018年現在、3機関しかありません。1校は首都アスタナのユーラシア国立大学、2校は旧首都のアルマティにある国際関係外国語大学と、報告者の派遣先であるカザフ国立大学(以下、国立大)です。最盛期の2000年代後半には7機関で日本語が専門的に教えられていましたが、日本語人材の活躍の場が限られていることから、規模が縮小してしまいました。日本語を勉強しても就職に結びつかない、教室以外で日本語を使う機会が非常に少ないという「孤立環境」にあります。訪日のためのビザの要件は緩和されましたが、まだ多くの人にその機会が開かれているとは言えません。ここでは、教室外での学びを支援する取り組みをご紹介します。

日本人留学生、研修生との交流

国立大では、現在日本との学術協定を強化しており、この2年間で新規の協定校が5校増え、合計11校になりました。日本への留学機会が増えることだけではなく、日本からの留学生、研修生との交流が大きな学びとなっています。

国立大には日本の大学が春休みになる2月から3月にかけて、語学やフィールド調査のための研修生が訪れます。今回は新たに協定校となった文京学院大学から21名の研修団を迎え、交流会や市内ツアー、郊外の世界遺産訪問、プレゼン発表会などが3日間に亘って行われました。2年生の学生が、放課後に集まり、市内ツアーの行き先を考え、観光名所の情報を入れた日本語版ガイドマップを作成しました。ガイドマップには簡単な現地語会話集もあり、日本人研修生に好評でした。自分たちで企画し、研修生に喜んでもらえたことが嬉しかったという感想から、自信がついたことがうかがえました。

他にも授業以外の活動として、日本人留学生との交流や調理実習などを行っています。カザフスタンには日本食食材の専門店がないのですが、できるだけ現地で手に入るものを使って活動しています。

文京学院大学研修生の写真 詳細は以下
文京学院大学研修生との交流
※写真は文京学院大学提供

学生たちと調理実習で作った白玉の写真
調理実習での白玉づくり

ジャパンボウル

今年3月に初めてクイズ大会「ジャパンボウル®」が開催されました。当大会は、ワシントンDC日米協会の主催で1992年からアメリカで行われています。フランスやフィンランドでも初の「ジャパンボウル®」が開催され、現在は世界11ヶ国で開催されています。カザフスタンでの第一回大会は、告知期間も短く、参加者がどれだけ集まるか心配されましたが、結果として2都市の予選に合計24人(8チーム)が参加しました。出題はジャンルを事前に設けず、幅広い知識と発想力が試されました。本選に出場した3チームの中から、カザフスタン日本人材開発センターで日本語を学ぶ高校生と大学生のチームが見事な回答の連続で優勝しました。観覧者から、ぜひ次の大会に参加したいとの声が多く聞かれました。2020年に予定されている東京ジャパンボウル大会でも、カザフスタン代表チームが活躍することを期待しています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Al-Farabi Kazakh National University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
カザフ国立大学東洋学部極東学科日本語講座は、カザフスタン国内で最も歴史ある日本語・日本学専門課程である。設置目的は、日本語・日本学研究者及び教師、企業において日本語で業務が行える人材、日本語通訳・翻訳者の育成であり、言語のみならず、歴史や文化などの専門科目にも重点を置いた教育が行われている。日本語専門家は、学習者の日本語能力向上及び現地講師への日本語教育の質の向上に対する支援を行う。また、学習者を増やすため、学校訪問、日本文化紹介などの広報活動も行う。
所在地 95a Karasai-batyr str., Almaty, 050012, Republic of Kazakhstan
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
東洋学部極東学科日本講座
日本語講座の概要
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