世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 日本語でワイワイ楽しもう! キルギスのもう一つの熱い日本語バトル

キルギス共和国日本人材開発センター
尾崎裕子

 キルギスは日本語学習の盛んな国です。人口540万人のこの中央アジアの小さな国で1000人余りの人が日本語を学んでいます。

 中央アジアでは弁論大会が盛んで、キルギスからも毎年精鋭が出場し、優れた成績を残しています。またキルギス国内の日本語弁論大会にはいつも大勢の聴衆がつめかけ、熱気あふれる大会が繰り広げられます。

自己PRチーム紹介をする日本センターチームの写真
自己PRチーム紹介をする
日本センターチーム

 そんな熱いキルギスの日本語学習者が集い、わいわい楽しく戦うもうひとつの日本語のイベントがあります。「日本語わいわい大会」です。この大会はキルギス共和国日本人材開発センター(以下、日本センター)日本語講座が企画・実施しているもので、2007年以来、恒例行事になっています。

 2009年5月30日、第3回日本語わいわい大会(以下、わいわい大会)が開催されました。

 わいわい大会はビシケクの主要な4つの日本語教育機関—キルギス民族大学、キルギス国立大学、ビシケク人文大学、日本センターが、各々約10名の学生でチームを作り、チーム対抗で日本語の知識と運用力、そしてユーモアと表現力を競います。内容は2部立てで、第1部は日本語の早口言葉や、チームの代表者が問題の言葉の意味を日本語でチームの仲間に説明して、仲間がその言葉をあてる問題、日本独特の物を見せて何に使うかあてる問題、各チームが「下駄」「腹巻」など、ある物のユニークな使い方をいろいろ考えて、いかにうまく日本語でセールスのプレゼンテーションができるかを競う問題、1枚の写真を見て、短い会話を作って演じる問題、そして第2部は、わいわい大会の当日朝発表された題で各チームが5分のショートコントを作成し、ステージで演じるというものです。このショートコントの一番のポイントは、各チームが大会開始の2時間前に題を渡され、別々の部屋で辞書だけを使い、日本人やチーム外の人の助けを一切借りずに、コントを作らなければならないというところで、限られた時間でチームのメンバーが持っている日本語力とユーモアのセンスを最大限に使って、どれだけおもしろいコントが作れるかが試される、かなり難易度の高い課題です。

下駄のユニークな使い方をプレゼンする国立大学チームの写真
下駄のユニークな使い方をプレゼンする
国立大学チーム

 今回の大会のショートコントの題は「歴史タイムトラベルーキルギス人と日本人は本当は兄弟だった!」。これは「キルギス人と日本人がよく似ているが、それは元々キルギス人と日本人は同じ民族で、肉の好きな者が西に行ってキルギス人になり、魚の好きな者が東に行って日本人になったからだ」という話を題材にとったもので、「本当はどうだったのかタイムトラベルして検証しよう」という設定で各チームがコントを作りました。

 わずか2時間足らずの短い準備時間にもかかわらず、各チームともそれぞれユニークなストーリーを考え、熱演で観客を楽しませてくれました。「実はキルギス、カザフ、モンゴル、ニホンは4人兄弟だったが、ご飯のときにいつも他の3人に肉を全部食べられてしまい、ニホンは魚を食べた」というギャグや「もともと双子だったキルギス人と日本人が離れ離れになり、時を越えて再会し、蒙古斑が手がかりとなり、兄弟だったことを発見する」というギャグなど、定番の話をうまく取り入れて話を作っていました。特に優勝したビシケク人文大学のチームは、5分の短いコントの中に、太古の類人猿から人間への進化、チンギス・ハンや徳川家康のこと、さらにキルギスと日本の食事習慣など文化の話まで織り交ぜ、抜群のチームワークと演技力で、会場を沸かせました。

 アトラクションにはNHK教育テレビの「アルゴリズムたいそう・こうしん」や「なんかいっすー」を日本センターの初級クラスの受講生が披露し、アルゴリズムこうしんは審査員も会場の観衆もいっしょに行進し、楽しいひと時を過ごしました。

 わいわい大会は、学習者が自分の日本語の実力をフルに出して、遊び感覚でクイズやコントに挑戦し、出場者も見ている人もいっしょに楽しもうというのが趣旨ですが、今回も十分その趣旨が果たされたと思います。キルギス人学習者の熱演に、多くの日本人が「短い時間にとっさによくあれだけいろいろなアイデアが出せて、しかもそれを外国語である日本語で表現できるものだ」と、彼らの発想力と口頭表現能力の高さに感心していましたが、これは日本語教師の目から見ると、日本人とキルギス人のコミュニケーション・スタイルや外国語学習のスタイルやストラテジーの違いを反映していると思われ、改めて、キルギス人日本語学習者の「パフォーマンス力」を実感しました。

 キルギスには日本の企業がなく、日本語学習が実利に結びつかないのが現実ですが、それでも「日本語が好き」「日本文化が好き」と、日本語に取り組む人が大勢います。そのような人達が日本語を楽しく学び、日本語を通して学ぶ喜びを発見できるような学びの場を教室の内外に作り出せるように、これからもキルギスの日本語教師といっしょに力をあわせていきたいと思っています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
1995年に支援委員会により設立され、2003年JICAに移管された国際協力機構(JICA)日本センタープロジェクトによる現地法人。市場経済化に資する人材育成を目的としたビジネスコース、日本語教育、相互理解促進事業を活動の主眼としている。日本語教育については一般人対象の日本語講座の運営とともに、キルギス国内の日本語教育機関、日本語教育関係者、日本語学習者に対する支援・協力を行い、キルギス全体の日本語教育の発展に努めている。
ロ.派遣先機関名称 キルギス共和国日本人材開発センター
Kyrgyz Republic-Japan Center for Human Development
ハ.所在地 KNU, 2nd Floor, Building7, Turusbekov St.109, Bishkek
720033, Kyrgyz Republic
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語専門家1名
ホ.アドバイザー派遣開始年 2003年

ページトップへ戻る