世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) キルギスの日本語教育に見られる新たな芽

キルギス共和国日本人材開発センター
黒岩 幸子

キルギスにおける日本語教育

 首都ビシュケクは緑が多く、自然の美しい街です。雪を頂くアラトゥー山が多くの場所から見られ、どんぐりをかじるリスの姿も時折目にすることもできます。昨年は政権交代が起こり、日本でも報道されたようですが、キルギスの人々は普段は心優しく、キルギスにはゆったりとした穏やかな空気が流れています。

 人口550万の小国ながら日本語学習者は713名(2010年3月調べ)。日本語学習者数は決して少なくないといえるでしょう。ソビエト崩壊後の1991年には、首都ビシュケクの高等教育機関中心だった日本語教育は、現在では中等教育、地方へも広がりを見せています。キルギスの日本語教育は、ゆっくりと、しかし着実に発展を続けてきていますが、ここ最近、新たな変化が見られています。

上級日本語専門家の業務

 配属先では、アドバイザー業務中心のため、筆者が接するのは主に日本語の先生方になります。配属先機関の日本語講座運営、若干の日本語授業担当、講師育成、日本語関連イベント実施にとどまらず、日本語教師会への参加、勉強会の実施、日本語教師会と協力しながらの日本語関連イベントの企画・実施、先生方からの相談等、キルギス全体の日本語教育の発展を目的に、多岐にわたっています。かなり業務量が多いため、配属先機関の先生方とお茶を飲みながらなんでもない会話を交わす時間がなかなか取れないのが残念に思われます。一見するとただの雑談の時間の中に、問題点や先生方の苦労などが見え隠れしているのではないかと思いますので、今後意識的に時間を作っていこうと思います。

新たな芽

 日本とは異なるのんびりした時間が流れるキルギスでは、変化もゆっくりですが、最近、はっきりとした変化を目にするようになってきました。

①学生

KRJCカラオケコンテストの風景の写真
KRJCカラオケコンテストの風景

 当地では「大江戸太鼓」のサークル(キルギス日本人材開発センターにて活動)などもあり、従来から生け花、書道等の伝統文化への関心が見られましたが、最近では日本のアニメ、ドラマ、J-POP等、サブカルチャーへの興味が高まっているようです。今年2月に行った「KRJC日本語カラオケコンテスト」でも、学生たちの多くは日本のアニメソングを歌い、出場者と会場が一体となって盛り上がる光景は教師たちを唖然とさせてくれました。このイベントの様子はキルギスのTVでも取り上げられ、当地での新しい日本文化への関心の高さが窺えました。

  また、コスプレサークルも定期的な活動をしており、日本語学習者予備軍はまだまだいると思われます。

 キルギスも他国同様、サブカルチャーをきっかけに日本・日本語に興味を持つ学習者にどのような日本語教育が提供できるか、課題になってきそうです。

②教師

第15回中央アジア日本語教育セミナーの風景の写真
第15回中央アジア日本語教育セミナーの風景

 日本語の先生方の興味の対象もずいぶん変わってきています。以前は、「どうやったら上手く教えられるか」といった全体的な興味を挙げる先生が多かったようですが、現在では「中級学習者への読解授業」、「初級後半の学習者への漢字指導」、「学習者の発話を増やすにはどうしたらよいか」等、それぞれの先生方が日々の授業の中で、自ら感じ取った疑問をより具体化しています。筆者の赴任後、勉強会を再開し、新たに文献購読の会を始めました。勉強会では、基礎的な内容はもはや先生方の興味は引かず、新しいことを学びたい、専門的な内容を知りたいという先生方の知識欲が伝わってきます。これらの会が、先生方への助けとなればうれしく思います。

 キルギス人と日本人は妙に似ている箇所があり、感情をはっきりとは顔に出さず、穏やかな言い方をしたり、シャイな点は、周辺の中央アジア諸国の人々とは少し異なるようです。日本語の先生方もその例外ではありません。本当はやりたい気持ちがあっても、恥ずかしがっているだけかもしれません。そんな時「○○先生、一緒にやってみませんか」とそっと背中を押せるような存在でありたいと思っています。

 新たな芽が大きく成長しますように。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 キルギス共和国日本人材開発センター
Kyrgyz Republic-Japan Center for Human Development
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
1995年に支援委員会により設立され、2003年JICAに移管された国際協力機構(JICA)日本センタープロジェクトによる現地法人。市場経済化に資する人材育成を目的としたビジネスコース、日本語教育、相互理解促進事業を活動の主眼としている。上級専門家は一般成人対象の日本語講座の運営とともに、キルギス国内の日本語教育機関、日本語教育関係者、日本語学習者に対する支援・協力を行い、キルギス全体の日本語教育の発展に努めている。
所在地 KNU, 2nd Floor, Building7, Turusbekov St.109, Bishkek 720033, Kyrgyz Republic
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2003年

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