世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ポーランドの日本語教育現場から

ポーランド ヤギェロン大学
瓜生佳代

 私が派遣されているヤギェロン大学は、ポーランドの美しい古都クラクフにあります。14世紀に創立され、コペルニクスも学んだという、中・東欧では2番目に古い大学です。この古い歴史を誇る大学に初めて日本語講座が設けられたのは1978年、そして1987年に日本語専攻課程として独立し、その年から国際交流基金の日本語教育専門家が派遣されています。現在、専門家は、このヤギェロン大学での日本語教育を支援するとともに、ポーランド全体の日本語教育向上のための支援を行うことを業務としています。

ヤギェロン大学日本学科

日本学科長 (教員室で)の写真
日本学科長 (教員室で)

4年生のプレゼンテーションの写真
4年生のプレゼンテーション

 現在ヤギェロン大学の日本学科(正式名称:日本・中国学科)には、82名の学生が在籍し、14名の講師陣のもとで、日本語をはじめ、日本文化、現代文学、古典文学、日本の宗教・哲学、東アジア文明、翻訳などの科目を学んでいます。競争率十数倍の難関を突破してきた学生たちです。学生たちが日本語を専攻する理由を尋ねてみると、日本の文化、歴史、言語などに興味があるからという答えが圧倒的に多いです。アニメ、映画、J-ロックなどの現代文化から、武士道、俳句、相撲など伝統的なものまで興味の対象は幅広いようです。

 私が担当しているのは、1年生(22名)、3年生(11名)、4年生(12名)の「会話演習」クラスです。従来任校では、日本研究のため、文献を読む力を養成することに重点が置かれてきたようですが、近年、日本企業の通訳などの仕事も増えてきたため、会話力の養成も重要となってきました。1年生はおもに基本表現を習得するための会話練習をやっていますが、3年生、4年生の授業では、日本語で自分の考えを表現、説明するための会話が多くなります。今年度の4年生はタスクとして、ポーランドの文化を紹介するスピーチとポーランドの社会変化を説明するプレゼンテーションを行いました。ポーランドの行事、しきたり、祝日のいわれや、食べ物にまつわる話など興味深い内容で、日本人留学生、日本企業の方にも何名か聞きに来ていただきました。学生にとっては、発表はけっこう緊張するものらしいのですが、徐々に慣れて、楽しめるようになってほしいと思っています。日本から遠く離れたポーランドで日本の文化や言語を熱心に学ぶ学生たち。日本のよき理解者になるとともに、自国の文化についても日本語で発信できるようになってほしいと願っています。

 さて、このように直接学生の日本語指導をすることのほかに、現地の先生方との連携、日本語教育についてのアドバイス、カリキュラム作成・見直しのお手伝い、国際交流基金やその他の日本の団体からの情報の取次ぎなども任校での重要な業務です。特に、カリキュラムの見直しが今後のさしせまった課題となりそうです。若手スタッフが比較的多く、学科内は自由な雰囲気で活力があります。みなさん忙しくなかなか時間が持てないのですが、何か共同で研究発表などができたらと考えています。

ポーランド日本語教師会

 ポーランドの日本語教育機関は全国に散らばって存在しています。それぞれの地域で日々尽力なさっている先生方をつないでいるのが、ポーランド日本語教師会です。教師会はメーリングリストから始まり、2006年12月に正式に発足しました。2008年5月現在の会員数は67名で、そのうちの約50名が日本人です。現在、組織としての体制も整ってきて、会長、副会長、事務局の三役を中心に運営がなされています。日本語能力試験の際に教師会メンバーが試験監督補助員として協力したり、弁論大会を大使館と共催で行うなどの活動をしています。しかし、メンバーが一同に会せる機会はあまり多くありません。そんな中で、私の主な役割は、メーリングリストや教師会のウェブサイトを通して日本語教育に関するさまざまな情報を提供すること、会の運営のための相談役となることだと思っています。

 ポーランドは日本研究の歴史が長く、日本の文化、言語、宗教、哲学などに造詣の深いポーランド人の先生方、そして、長年にわたり熱心にポーランドの日本語教育を支えてこられた日本人の先生方が多くいらっしゃいます。現地の先生方との交流は、私にとって大変勉強となり、ポーランドの日本語教育に私なりの貢献をしたいという気持ちの原動力となっています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
派遣先機関の位置付け:
ポーランドにおける日本語主専攻大学のうちのひとつ。
業務内容:
(1) 通常授業および試験対策勉強会など。週7~9コマ程度。 (2) ポーランド人日本語教師との連携 (3) 国際交流基金の各種プログラムへの申請、応募などの連絡窓口 (4) ポーランド国内の日本語教育事情調査 (5) ポーランド日本語教師会活動の支援
ロ.派遣先機関名称 ヤギェロン大学
Jagiellonian University
ハ.所在地 ul.Pilsudskiego 13, 31-110 Krakow  POLAND
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
学科名称
文献学部東洋学研究所日本中国学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   選択:1978年から
専攻:1987年から
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1987年
(ロ)コース種別
主専攻
(ハ)現地教授スタッフ 常勤13名(うち邦人3名)
 
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   1年生22名、2年生14名、3年生14名、4年生11名、5年生21名
(2) 学習の主な動機 アニメ、文学、伝統芸能などへの興味から
(3) 卒業後の主な進路 博士課程進学、留学、日系企業での通訳、翻訳など
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
2級、留学経験者は1級
(5) 日本への留学人数 6名程度

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