世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ポーランドの日本語教育現場から 2009

ヤギェロン大学
瓜生佳代

ヤギェロン大学本部棟の写真
ヤギェロン大学本部棟

 ポーランドの日本語教育の歴史は長く1919年ワルシャワ大学の日本語講座開設に始まります。19世紀にヨーロッパで日本文化が流行していたこと、加えて1904年の日露戦争に日本が勝利したことで、当時ポーランドでは日本熱が高まっていました。日本語学習は、日本研究のために文献を読み日本に関する知識を得ることを目的に始まりました。その後、ポズナニのアダムミツキェヴィッチ大学、クラクフのヤギェロン大学でも日本語講座が開かれ、この三大学の日本学科がポーランドの日本研究および日本語教育の中心的役割を果たしています。日本語教育専門家は、1987年よりクラクフのヤギェロン大学に派遣されており、①派遣先機関の日本語教育向上のための支援、②ポーランド全体の日本語教育向上のための支援を業務としています。今回は、②ポーランド全体の日本語教育向上のための業務を中心にご紹介したいと思います。

三カ国日本学科合同キャンプ

 派遣先機関のヤギェロン大学日本学科(正式名称:日本・中国学科)は、「JFにほんごネットワーク」の中核メンバーになっています。従って、自機関内の日本語教育だけでなく、ポーランド全体の日本語教育の発展に貢献することが期待されています。学科長とも、どんな活動が可能であるか、機会あるごとに相談しています。

2年生のワークショップの写真
2年生のワークショップ

 最近の一番大きなイベントは、ポーランド、スロヴァキア、チェコ三カ国の日本学科の学生合同キャンプだといえるでしょう。三カ国5つの大学の日本学科の学生約140名が4泊5日で合宿を行い、日本学の講義を聞いたり、日本語のクラスに参加したりしました。講師は25名、その中で日本語セッション担当の講師は5カ国8機関から参加しました。

 最初にこのキャンプのアイディアが出たのは、ヤギェロン大学の講師が2008年に国際会議(Enhancing Mutual Exchange Between Japan and Central European Countries【PDF:外部サイト】)に参加したときのことでした。スロヴァキア、チェコの先生方と話をしていて、同じ日本学科同士、合同キャンプで交流を深めてはどうかということになったそうです。その後ヤギェロン大学の講師が中心となって準備をすすめ、参加者も当初の予定50~60名から最終的には140名近くにまで増えました。学生たちは、講義に参加するほか、寸劇で各大学の紹介をしたり、いっしょにハイキングに出かけたり、キャンプファイヤーを囲んだりして交流し、お互いにいい刺激を受けたようです。キャンプの最終日にはまた来年も開いてほしいという声が多く聞かれました。

 報告者は日本語セッションのコーディネートを担当しました。また、資金調達のために国際交流基金ブダペスト日本文化センターのローカルプロジェクトサポートプログラムを紹介するなど、側面からの協力を行いました。

 異なる国、大学間の学生交流は日本語学習にいい刺激を与えるだけでなく、将来の日本語教育関係者のネットワーク作りのきっかけになるでしょう。こういったプロジェクトについては今後も積極的に企画したり支援したりしていきたいと思っています。また、日本語セッションは日本語教師にとってもいい学びの場となりますので、これを教師研修の場として効果的に活用するプランも考えていかなければと思っています。

教師会を通じた活動

 教師会の定期的な活動として、12月の日本語能力試験実施協力、3月の日本語弁論大会実施があります。これは教師会メンバーの多くがワルシャワに集まる貴重な機会ですので、あわせて勉強会も開催されます。ここ数年、教師会のメンバー2名がアルザスでの欧州日本語教師研修会(国際交流基金パリ日本文化会館とアルザス欧州日本学研究所の共催)に毎年参加していますので、12月の勉強会ではその報告をしてもらっています。また、3月の弁論大会に他国派遣の日本語教育専門家に審査員として来てもらった場合は、翌日にセミナーを開いてもらっています。この2回の勉強会のアレンジを行っていますが、残念ながら多くの教師会メンバーがいつも参加できるわけではありません。そこで、教師会メンバーの所属している主な日本語教育機関をまわって、勉強会やセミナーを開くことにしました。新しい教材や日本語教育界についての最新情報を伝えたり、授業の活動のヒントを紹介したり、参加者同士の活動紹介や意見交換をしたりします。2009年2月にポズナンでセミナーを開催した他、2009年6月にはクラクフでセミナーを開催する予定です。

 このほか、現在課題と考えていることに、新しい日本語教師への支援があります。日本語講座を新規に開く場合、日本語のできる日本学科卒業生を講師として迎えたいという希望が多くよせられます。しかしポーランドの日本学科のカリキュラムには日本語教授法の科目がないため、卒業生達は、日本語教師になった時点で一からやり方を模索していかなければならないことも多いようです。どのようにして新人日本語教師を支援するか。教師会で初心者研修などを企画する、あるいは日本学科で日本語教育に興味のある学生を対象に教授法基礎セミナーを開くなど、現在、実施可能な支援策を検討中です。

 赴任してからまもなく2年になります。学期期間中は毎日の授業準備や試験作成に追われて、あっという間に時間が過ぎていきます。学生たちはみな熱心で能力も高く個性的。日々の授業も、ポーランドの日本語教育への支援も、大変やりがいのある仕事です。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
派遣先機関の位置付け:
ポーランドにおける日本語主専攻大学のうちのひとつ。
業務内容:
(1)通常授業および試験対策勉強会など。週7~9コマ。 (2)ポーランド人日本語教師との連携 (3)国際交流基金の各種プログラムへの申請、応募などの連絡窓口 (4)ポーランド国内の日本語教育事情調査 (5)ポーランド日本語教師会活動の支援
ロ.派遣先機関名称 ヤギェロン大学
Jagiellonian University
ハ.所在地 ul.Pilsudskiego 13, 31-110 Krakow, Poland
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家1名
ホ.日本語講座の所属学部、
学科名称
文献学部東洋学研究所日本中国学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   選択:1978年から
専攻:1987年から
(2)専門家・ジュニア専門家
派遣開始年
1987年
(ロ)コース種別
主専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤13名(うち邦人3名)
 
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   1年18名、2年19名、3年12名、修1年11名、2年17名
(2) 学習の主な動機 文学、伝統芸能、アニメなどへの興味から
(3) 卒業後の主な進路 博士課程進学、留学、日系企業での通訳、翻訳など
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
2級、留学経験者は1級
(5) 日本への留学人数 3名程度
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